第86話 届いているよ
値引き交渉しようとしたら先に値引きしてくれた。そうだ、鑑定を使ってみるか。
"鑑定!”
[背負子]▽
△ 形式 フレーム型:耐荷重 25kg:材質 布・カーシー材:品質 高:疲労軽減 微小
出てきた、品質もいいみたい。疲労の軽減効果もついている。お買い得みたいだ。
保存箱はどうだろう?
"鑑定!”
[保存箱]▽
△ 形式 複合素材型:容量 5L:重量 4kg:材質▽ :品質 中:保温 微小
△ 内装材 陶器:品質 中:中間材 キーリ:品質 高:外装材 アーケビ蔦:品質 中
こっちも大丈夫だ。店員さんは正直な人みたいだ。
「ご相談に乗ってもらった上に値引きまでして頂いたら、これはもう買うしかありませんね。」
と言ってニコッとする。
カウンターに戻りお金を払う。最後に保存箱を背負子に固定する方法を教えてもらってそのまま背負って宿に戻る。ナツコさんに戻ってきたことを告げ部屋に戻る。
部屋に戻ってくると、早速スライムくんのお引越し。背負子から降ろした保存箱の蓋を開け壺を傾けると、ちゅるんとスライムくんが出てきてお引越し完了。
[これなら、蓋が閉まるから乾きにくいと思うけど、どうかな?]
[…シトサマ…アリガトウ…]
思い出した! 購入した古着も洗濯しないと! そうと決まればさっそく行動開始だよ。風呂場の隣の洗濯場に
あちゃぁ… これだけ繁盛していればそうなるよね。
少し前まではガラガラだった洗濯場も… 宿泊客なのか? 御付きの従者なのか? 数人洗濯をしている人がいる。さすがにこの状態で "たわし召喚!” したらまずいなぁ… スライムくんにお願いするか…
すごすごとその場を後にして、受付に向かう。受付でナツコさんに
「すみません、タライお借りしていいですか?」
「タライですか? 構いませんけど? もしかして、お部屋で洗濯するのでしょうか? それはちょっと…」
「そうなんです、洗濯したいんですけど他の宿泊客の方々が… アレ出したら大騒ぎになると思うんです。水を使うのは最小限にしますからお願いできませんか?」
「確かに、あれを見せてしまったら…困りますね… そうだわ。本宅のお風呂場でよろしければお使い頂いても構いませんけど? いかがいたしますか?」
「助かります。」
ナツコさんに本宅のお風呂場に案内してもらう。普通に広いよ。4畳半ぐらいありそうだ。木組みの浴槽、良質のノーキ材をふんだんに使っているそうだ。洗い場も充分に広いしこれなら。
タライに水を入れ
"たわし召喚!”
軽く水につけて… ゴシゴシ!ゴシゴシ!ゴシゴシ!
安定のたわし。瞬く間に洗濯された古着が積みあがっていく。10着ほど洗濯を終えたらたわしの水を切って… 乾燥!
次々に古着を乾燥させて、籠に入れていく。
振り返ると、ナツコさんが目を丸くしている。 …まだ居たのね… もう隠すつもりも無いので、残りの古着を次々に洗濯… そして乾燥… と繰り返す。
「ソーヤ様、私は受付におりますので、終わりましたら声をおかけください。」
ナツコさんは、受付に戻っていった。
一通り古着の洗濯が終わった。畳むのは部屋に戻ってからでいいか…
タライを片付けて…ちょっと気になってしまった… お風呂場の汚れが。
「使わせていただいた感謝の気持ちを込めて、最後に掃除しておこう。」
洗濯で召喚したままのたわしで浴槽の掃除と石張りの壁を掃除をする。ひと擦りで汚れがどんどん落ちるから捗る捗る。たわしを送還して…
"デッキブラシ召喚!”
石張りの床を掃除をする。10分もしないうちに掃除終了。うん、完璧! きれいになったよ。
デッキブラシを送還して、受付にいるナツコさんに声をかける。
「ありがとうございました、助かりました。」
部屋に戻ると洗濯物を畳みながら
夕方になったので、混雑する前に風呂に入ることにした。そういえばあの手ぬぐいも汚れを落とせると言ってたな。使ってみるかな? 手ぬぐいなら、見られても不審がられることはなさそうだし。
案の定、風呂に行くと数人の先客がいた。仕方ないよね。
手ぬぐいで体を洗う。たわしみたいに洗っている感はしないが、きれいに汚れが落ちているのがわかる。手ぬぐいを絞って頭の上に乗せ湯船に入る。
やっぱり出てしまう ア゛ア゛ア゛ア゛・・・・という声。
「キッシー先生、うちの商会がドージョーを予約しておいてよかったですね。新レシピの効果でこんなに繫盛しているなんて思わなかったですけど。」
「確かに、ここに来て改めて思い知らされた。様々な分野で帝国の方が進んでいると思っていたが、やはりここは別格だ。情報とサーシミーは鮮度が重要だな。今後は調査の方針も見直さなくては。(お前に使わせる金を減らさないとな)」
「新レシピもそうでしたが、私ども商人としては
「
「ハーチベ君の言う事も一理あるな。食文化という物は人の心を豊かにします。この度はウカーリ商会の方々のおかげで本当に助かりました。研究費が心もとなくなって困っていたのですが、素晴らしい実地調査ができます。」
「先生、今夜の食事も楽しみですが、明日は噴水広場の屋台を調査しませんか? なんでもタイヤーキという魚の形をした面白い料理を出す屋台があるそうですよ。」
ハーチベさん? ・・・ 【鋼鉄の胃袋】の人か。いいことを言うね。
「美味しい食事で人の心を豊かにする」か…
サーブロさんの想いは確実に…この世界の人たちに届いているんだな。
『さまざまな人々に料理を、食事を心から楽しんでもらうことだと』
サーブロさんの日記の一節を思い出しながら、ブクブクするおれだった。
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