第85話 鑑定

 22日目、食堂に降りると、かなり混んでいた。新しいレシピを無償公開したことで領都ラドを訪れる人が急激に増えたそうだ。

 そうなると必然的に宿が繁盛し、中でも新レシピの総本山ともいえる「割烹旅館 道場」は満室状態。せめて料理だけでもと訪れる客が後から後から…。

 サクラさんも給仕にあちこちのテーブルに忙しく動いている。今日の翻訳作業は中止かな? そんなことを考えながら、食事が終わると早々に部屋に戻る。


 一通りベルナさんを始め、購入を頼まれたものは準備できた。あとは個別のお土産だけど、一緒に買い物に行ってくれるはずのゼシトさんの予定を確認していなかったことに気が付いた。


「急に、することが何も無くなっちゃったなぁ… そういえば、転生…創造神様から授かったスキルの確認していなかった。」


 ステータス!


 LV:  05  EXP: 80

 体力HP : 30/30

 魔力MP : 22/22


 スキル 【たわし】    洗浄(L7)  脱水(L6)  乾燥(L5)  分離(L4)  付与(L3)  浄化(L3)

     【柄付きたわし】 洗浄(L5)  消毒(L4)  滅菌(L4)  浄化(L3)  分離(L1)

     【デッキブラシ】 洗浄(L4)  浄化(L3)  分離(L1)

     【鑑定】 【魔力MP消費軽減1/2】

 加護  【清浄たわしの女神の加護】 【創造神の気まぐれ】


 レベルが上がってるよ、スキルも全体的に上がっているな。あった。【鑑定】と【魔力MP消費軽減1/2】? これが創造神様が言ってた条件かな?

 あ…加護が書き換わってる。今まで ”転生の神” だったのに ”創造神” になっているよ。 創造神様が書き換えた? おれの認識が変わったからか?

 とりあえず【鑑定】を試してみるか。手ごろなものと言えば…スライムくんの入っている壺なんだけど、すでにだとわかっているけど、どうなるのかな?


 "鑑定!”


[スライムの入った壺]▽ 


 なんだ? この三角マークは? …と▽に意識を向けると


 △ 名称 陶器の壺:容量1.5Ⅼ:材質 陶器:品質 中:内容物 スライム▽


 内容物スライム… 中身までわかるのか? そもそもわかっているからなのか? スライムの隣の▽に意識を向ける


 △ スライム :個体名 無:分解消化:瘴気耐性:浄化補助:【清浄たわしの女神の眷属】


 中身も一緒に鑑定できるのか? それとも、個別に鑑定が発動したのか? そうだ魔力MPはどれだけ使ったんだろう。


 魔力MP : 17/22


 魔力MP5も使っているよ…ってことは、元々の消費は魔力MP10… こりゃ連発してたら即昏倒だな。使いどころに注意しないと。あとは鑑定できる条件の確認をしないといけないな。全く知らない物も判別できるのか? 人物の鑑定は出来るのか? 試しに食堂で人物鑑定してみるかな?


 食堂に降りていくと、やはり混雑している。料理で一杯になったテーブルに座る数人の男たち、手前の商人っぽい人でいいか。ごめんなさい、勝手にのぞき見するような真似だけど。


 "鑑定!”


[ハーチベ・ウカーリ]▽


 △ 種族 人族:所属 帝国:性別 男:28歳:職業 理究院研究助手:▽


 △ スキル 【鋼鉄の胃袋】:称号〈あわて者〉


 スキルが【鋼鉄の胃袋】って… どんなスキルか気になるけど。詳細まではわからないのか。称号〈あわて者〉って… 重ね重ねすみません、のぞき見して。


 魔力MP : 12/22


 鑑定で使ったのは魔力MP5、スキルを含めた人物鑑定も出来る。そういえば団長が言ってたな。ガルゴ君を連れてきて鑑定してもらうとか… おれが出来るかもしれない。でも領都ラドを見に来るのも目的の一つなんだろうな。帰ってから団長に相談だな。それまでに、鑑定で何が出来て何が出来ないかを確認しておこう。


 部屋に戻ってきたが、本当にやることが無くなった気がする。朝ごはんも食べたばかりだし…そういえばスライムくんは何食べているんだ? 分解消化ってあったから何か食べさせておかないと…


 [スライムくん、何か食べなくて大丈夫? 食べたいものがあれば用意するけど]


 […シトサマ…タベナクテモ…ヘイキ…ナカマ…フヤストキ…タベル…]


 [仲間を増やすときだけ食べればいいの?]


 […シトサマ…ソウダヨ……カワカナケレバ…ダイジョウブ…]


 ふむ、乾かなければいいのか。ということは、蓋がないこの壺じゃなくて蓋のある壺がいいのか。あと開拓団ラドサに帰る時に運びやすいほうがいいな。マジックバックに入れるわけにはいかないし。

 

 [スライムくん、出かけてくるね。またお留守番お願い]


 […ワカリマシタ…シトサマ…]


 部屋を出て、受付にいたナツコさんに出かけてくると告げ、商会の立ち並ぶ区画を目指す。


 あった、ここだ。昨日ベンリルさんと買い物をしている時に見かけた ”行商人の御用達の商会” アペルン商会、荷車から野営道具、簡易調理器具が一式この商会だけで揃えられる。ここなら目的のものがありそうだ。


 大きな入り口をくぐると、いきなり2階まで吹き抜けになった空間、真ん中に二頭曳き、一頭曳き、大小様々な荷馬車が展示されている。荷馬車の脇に置かれたテーブルで商談をしているな、新車のショールームみたいだな。

 2階かな? 壁際の階段を上がると正面は簡易調理器具や食器、右側に野営道具が展示してある。どこにあるんだろう… 素直に聞いてみるのが一番早そうだ。奥のカウンターに向かう。


「すみません、水筒はどこにありますか?」


「水筒ですか? 水入れですね。こちらです。」


 店員の後についていくと野営道具の隅っこに何種類か置いてあった。残念…これじゃだめだな。

 置いてあったのは革製の袋、密閉は出来そうだが口が小さすぎる。スライムくんなら出入り可能だろうけど、革製というのが気になる。分解消化しちゃうかもしれない。

 悩んでいると店員が話しかけてくる。


「中身は何になりますか? お酒でしょうか? 水でしょうか?」


「中身は、ス… 水生生物です。容量は2Lぐらいあればいいのですけど、しっかり密閉できるものが欲しくて…」


「液体ではなく、生物いきものを運ぶのですか… では、こちらはどうでしょううか? 容量的には大きめで、運ぶのであれば背負子に積むようになりますが。」


 そう言うと簡易調理器具の方に。背負子に積むのか、考えつかなかった。そのほうがに邪魔にならないしいいかも。あとは値段。


「これです、保存箱の容量は5L内部は陶器、軽量木箱と編み込んだ蔦の外装になります。蓋は陶器製で、付属のベルトで固定し密閉できます。在庫の処分ですので小銀貨6枚です。背負子はこちらです。」


「先ほどの保存箱だけでしたら、こちらがお勧めです。背当たり面厚手の布が張ってありますので、フレームが直に背中に当たって痛くなることが少ないです。こちらは小銀貨5枚 合わせて銀貨1枚です。どうでしょう?」

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