第51話 受注した仕事
8日目 3人とも朝からまた試作をしている、ゴーロウさんも、アマートさんも、ナツコさんも…みなさん、なんか目がうつろですよ。まさか昨日から一睡もしないで試作続けてたんじゃ?
途中、一度生地のタネが無くなった時点で終わりになりそうだったんだけど、アマートさんが生地の配合変えてみると言い出してから、ゴーロウさんとナツコさんが、それに合わせた中身を…ということでエンドレスになったらしい。
ちゃんと寝ないと、体に良くないですよ。
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先日買った服を着て、朝ごはんを頂いてから、依頼の詳細説明を受けるために
ピンクブロンドの髪の女の人がいる【受注・完了】のカウンターで、先日受けた清掃場所の略図を確認して、今日の作業説明を受けて受付を済ませる。最低限の作業を受けておけばほぼ間違いなく一日で終わるそうだ。
欲張って広い範囲の受注を申請する人もいるが、その日のうちに作業範囲が終わらないと、ペナルティとして最終的に職員が確認するまで他の依頼が受けられない。
ちなみに、申請範囲を超えて作業しても問題ない。ただし報告は必須。この場合も職員が確認して支払金額の査定を行うそうだ。その場合超過の支払いは後日になってしまう。
迂闊だった。依頼をちゃんと確認していなかった。広場の清掃かと思ったら、噴水の中の清掃かよ。
「作業可能な時間は、2時間だけなんですね。」
「間に合えばいいんだしー。水を抜き始めてー、時間が来れば管理局が復旧に来るしー。」
ピンクブロンドの髪の受付女性がそう答える。
「でもー、ふつー終わらないことないとおもうしー。管理局も融通してくれるはずだしー。」
あなた…現場見てますか? この前買い物の時休憩したところですよね。深さ60cm以上、直径5mはありますよあそこ。水が抜けるまでにどれだけかかると思ってるの?
なんだか、いきなり変な依頼受けちゃったな。ともあれ受けた仕事はきっちり完遂しなくては。
指定されえた噴水広場に来た。どう見てもこの水を抜くのには1時間以上はかかりそうだ。底には落ち葉や露店で使うあの葉っぱもある。水を抜く途中で排水口に詰まってしまったら確実に時間が足りない。
「考えても仕方ないな、とにかく行動だ。」
そう独り言を言って、上着だけ脱いだら水の中に入りゴミを拾う。イマーバンの露店のおっちゃんが不思議そうな目でこっちを見てくる。
「冷たぁ!! でも泣き言を口に出したら、心が折れる。出来る。やれる。やるんだ。」
そう肯定的な言葉で自らを鼓舞、ひたすら水の中のゴミを拾う。麻袋に詰める。運び出す…。
「寒い。さすがにちょっと休憩しないと…」
水から上がり、とにかく濡れたズボンとシャツの水を絞る。建物に囲まれているおかげで風が無くて助かった。風が吹いたら一気に体温奪われて、低体温症で一発アウトだ。まさか危険が少ないと思っていた街中の依頼でこんなことになるとは。
休憩をしていたらどうやら管理局の人が到着したようだ。
「今日の依頼を受けた冒険者の方ですか? 作業開始時間前から何してたんですか? そんな恰好で…。」
いやいや、日々の清掃が行き届いてないおかげで、余計な苦労しているんですけど!
「2時間しかないと聞いてましたし、ちょっとゴミが多すぎて、排水するときに詰まると困るなと思ったので先にゴミだけ回収してました。」
そういって、先ほど回収したゴミの入った麻袋を指し示す。
「えっ? もう回収してる? 仕事の説明ちゃんと…… まさか、受付で説明したのはピンクブロンドの髪の…娘でしたか?」
「はい、名前は確認してませんけど、ピンクブロンドの髪の女性でした。」
「くそっ…あいつ…またやらかしやがったな…。」
話を聞くと、どうやら排水して水量がひざ下ぐらいまで少なくなった時点でゴミを回収する、というお仕事だったらしい。あの受付嬢は、毎回内容を確認せずに右から左。こういったトラブルが結構発生しているようだ。
他の冒険者もそれを知っていて、あの受付嬢の日は受注を控えているんだと。それであんなに人が少なかったのかい!!
「すまない。これだけ回収してくれれば、今回の依頼は完遂ということでかまわない。普段の回収量の3倍はある。査定の職員には私からも連絡しておく、若しくは私が報告してもいいが?」
「いえ、受けた仕事なので、自分で報告します。」
「あぁ、わかったご苦労様、こちらからも一報はしておく。しかし、毎回この量だから困ったもんだ。」
「あの、露店の脇に専用の箱とか設置したらどうですか? 露店とかで使う包みとかが無ければだいぶ減るんじゃないですか?」
「それだ!! 各露店が専用の箱を設置することを開業の条件に追加すれば……さっそく報告書にまとめなければ! 今日は本当にお疲れ様。あと、あいつの窓口では仕事を受けないようにな。」
そう言って、管理局の人は足早に去っていった。…終了なら
広場から立ち去ろうとしたら、イマーバン屋台のおっちゃんが手招きをしている。
「なんでしょうか?」
「とりあえず、これ喰っとけ。掃除ありがとな。」
そう言うと、焼きたてのイマーバンを手渡してきた。なんかうれしいね、感謝されるってのはさ。
イマーバンをかじりながら、おれは
【受注・完了】のカウンターに行くと、あのピンクブロンドの女の人ではなくデリダさんが居た。
「受けた作業依頼の終了報告です。さっきの人は?」
「あの
ちょっと文句の一つも言いたかったけど、まぁいいか、完了報告すればお金が入るし。
「噴水のゴミ回収終了です。説明で時間が限られた掃除って聞いたので水抜き前にゴミだけでもと思って水に入って拾ってました。管理局の人が来て、実際の依頼は掃除じゃなくてゴミ回収と言う事だったんで、作業終了の指示を頂いたんです。」
にこやかにしていたデリダさんの顔が…
「あ・い・つ・・・ またやらかしたのね。もう限界だわ、何回も同じこと繰り返して、毎回、毎回、言訳ばかり。冒険者や他の職員にどれだけ迷惑かけて…」
すみません。デリダさん。その怒り、おれの報告が完了してからにしませんか?
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