第47話 もう一人
目の前に現れたのは、一辺20cmほどの正方形のパネル。昔見た事があるスライドパズルそっくり。ただし、デカいのと数字が全部漢数字というだけでものすごい違和感。
こんなのが壁にあったら、確かに気味が悪くて隠しちゃうのもうなずける。塗装で隠してあったけど、削り取られたり、別の壁で隠されたりしてなくてよかった。
「ゴーロウさん。これが遺産に至るかもしれない【カギ】です。 …ゴーロウさん? 大丈夫ですか?」
「すみません、その ”たわし” が凄くて、言葉を失っておりました。」
壁の文字じゃなくて、 ”たわし” かい!! まぁいいや。
「ゴーロウさん、この正面の壁はやはり仕掛けがあります。ここに書いてあるのは元の世界の ”漢数字” という数字の一種です。」
「左右の壁にもあった言葉と合わせて考えると、これをある条件で並べることで何かが起こるはずです。」
「これが数字、並べると言っても壁から…外れないようになっていませんか?」
ゴーロウさんは漢数字の書かれたパネルを外そうとしていた。
「違います。こうするのです。」
そう言いながら、おれは中央のへこみの右側のパネルを左側に動かす。
「おぉぉ、ずらしていくのですか。」
「そうです。そして他の壁に条件が書いてありました。正面の右上にも。」
【始】【最後に押せ】【自壊する】【左回り】
【注意】【数字を並べろ】【協力しろ】【正面の壁】
組み合わせを考える。
【正面の壁】【左回り】【数字を並べろ】【最後に押せ】
【注意】【協力しろ】【自壊する】
「右上から、左回りに数字を並べ替え最後に押す。という内容になります。もう一つは警告ですね。協力しないと壊れてしまうようです。」
「最後に押すのが何かはわかりませんけど、とりあえずやってみます。」
ゴーロウさんたちは漢数字が読めない。つまりおれしかできないと言う事。頑張るしかないな。
パズルに向き合う事、1時間・・・・さすがに疲れた。
ナツコさんが、お茶とお茶菓子を持ってきた
「休憩にしませんか?」
ありがたい。考えるのと全身を使うことで、結構へばってた。緑茶にイマーバンが合う。脳に糖分が染み渡る感じだ。体力的にも作業はあと2時間ぐらいが限界かな?
「ゴーロウさん。今日の作業はあと2時間ぐらいで終わりにします。さすがに疲れました。明日も作業を行いますので、その間、誰もここに立ち入りできない様にできませんか?」
「…それと、夕食後にお話がしたいのですが。」
「わかりました。入り口は鍵がかかりますので大丈夫だと思います。信用できるものたちで警備も致しましょう。」
それからしばらく大型スライドパズルと格闘し、外周部が終わったとところで、本日の作業は終了となった。
食糧庫を出る時、入り口の上を何気なく見上げた、そこには旅館の位置口にあったのと同じ作りの看板が・・・
[ 調 理 場 ]
そう文字が浮かんでた。……ここにあったんだ。
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風呂で湯船につかりながら考える。
明日はたぶん謎が解けてレシピ集の存在の有無がはっきりするだろう。
問題なのは、その瞬間に立ち会うのがゴーロウさんたちだけでいいのか?という事。
無かった場合、他の一族の方々は信じるだろうか? たぶん信じないだろう。
その結果、サーブロさんに縁のある場所を次々に壊して探し始めるかもしれない。それは非常にまずい。
レシピ集があった場合でも、一族に公開したものがすべてだったとは思わないかもしれない。他にも
最低でもゴーロウさんと反対の立場をとる……
…いた! いるじゃないか!
夕食はニオラグラタン。たいへん、おいしゅうございました。
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部屋でゴーロウさんを待っている。
あの人を立会人として追加することに賛成してくれるだろうか?
そして、その人は立ち合いに参加してくれるだろうか?
やがて、ゴーロウさんたちがやってきた。
「ソーヤ様、お話とはどのようなご用件でございますか?」
「明日の作業についてなんですけど。
サーブロさんの残したものが何かということ判明すると思います。
そこで、明日の作業に立会人を追加していただきたいのです。」
「立会人でございますか?」
「そうです、この話を受ける際にゴーロウさんがおっしゃっていた
”一族の中での争い” ……非常に気になっているのです。
あの時ゴーロウさんは、こうもおっしゃっていましたよね。
『本当にあるのか、無いのか。それだけでも調べていただけないでしょうか』 と。」
「はい確かに。」
「そこで僕はこう思うのです。
『無い事を証明する…というのは無理だ』
と。そして、
『有ったとしても、それがすべてだと信じさせることも不可能』
とね。そこでお願いです。
最低でも一人、この調査に否定的な方を立会者として追加してもらえませんか?」
「しかし、誰を・・・・」
「いるじゃないですか、うってつけの人物。
『アマート』さんが。」
「……確かに、私と正反対の立場ですから。
しかし、謎を解くこと自体も反対しておりましたので…
…立会を受け入れるかどうか…」
「すみません。そこは丸投げです。僕は関与が出来ません。」
しばし沈黙の時間が訪れる。
「…あの調理場の状況で『ここで止めますと言ったら』今度は探したい方々が大騒ぎしませんか? 例えば、サーブロさんゆかりの場所をことごとく壊して調べる、なんて暴挙に出る人が居てもおかしくないと思いますけど。」
「確かに… あり得ます…」
「明日の作業ですが。アマートさんが立会に参加次第、開始とします。よろしいですね。」
「……わかりました。なんとしてもアマートを説得して立会わせます。」
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7日目の朝、食堂で今日の立会者がそろうのを待っていた。
ナツコさんとサクラさんはすでに待っている。あとはゴーロウさんがアマートさんを連れてくるかどうか。それによっては、今日の作業は中止になる。
ゴーロウさんが二人の男性を連れてきた。一人はすぐわかった、そっくりだからね。
もう一人は、誰だ? 全く見たことがない初めて会う人だ。
「ソーヤ様、お待たせいたしました。弟のアマート・ドージョーと、その隣がミツーキー・ローク、現ローク・ドージョー食品商会の会長です。」
予想外の大物が立会者で追加… でも
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