第45話 商業組合

 商業組合トレードギルドの到着し、カウンターも窓口に向かう。

 冒険者協会ギルドと違って、こちらは活気に溢れてにぎやかだ。


「すみません。新たな商品の登録をしたいのですが、どうしたらよろしいでしょうか?」


「順番が参りましたら、お呼びいたしますので。

 こちらにお名前をお書きください。」


 名前を書いてから、並べれれている長椅子に座る。まるで、病院なんかの待ち合わせ所みたいだな。


「ソーヤ様、お待たせいたしました。こちらへどうぞ。」


 そう言われて案内された。また小部屋だよ。でも、情報漏れたら困るからね。


「私、ギルド職員のベンリルと申します。

 本日、商材登録のお手伝いをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 では早速、ソーヤ様は今回どのような商材のご登録でしょうか?

 書類若しくはサンプルなどをお持ちでしょうか?」


「これです。算術の基礎を勉強をするためのです。」


 そう言って、マジックバックから石入れ計算機を取り出す。


「算術勉強…の? ですか?

 これはどのように使うのでしょうか?」


 とは言わないみたいだ。やらかしたかも。


「この溝に石を入れて……」


 説明していると、ベンリル氏の目がどんどん大きく見開かれる。

 一通り説明し終わってから、


「どうでしょうか? これは登録出来そうですか?」


「………す…すばらしい!!! これは画期的な商材です。

 石で数字を視覚化してわかりやすくしているのですね。

 今まで、こんなに心躍る商材を見たことがありません。

 これがあれば、商人の、いや商人だけでなく算術のスキルな無くても…」


 物凄く興奮しているけど、大したもんじゃないよこれ。


「あの…すみません。これ、登録できますか?」


「もちろん、もちろんですとも。

 是非登録いたしましょう。すぐに登録いたしましょう。

 必要書類はこちらでご用意させていただきます。

 このサンプルは預からせていただいてもよろしいでしょうか?」


 それなんだよね、サンプルで渡しちゃうと手元になくなっちゃうんだよねぇ。


「これはお渡しできないのですが、見ての通り作りが簡単なので。

 どなたかサンプルを作っていただける方… 紹介していただけませんか?」


 ベンリル氏は少し考えてから


「家具職人の方であれば、ご紹介できますが。費用が発生してしまいますね。

 大きな金額にはならないと思いますが…」


「そうですか、手持ちが心細いので…」


 しばらくベンリル氏が考えて質問をしてきた。


「一つご確認させてください。この商材はソーヤ様が直接お売りになりますか?」


「いいえ。僕が直接販売することは考えていませんけど。」


「わかりました。こう致しましょう。

 今回は商材の詳細情報をライセンス登録をして頂きましょう。

 サンプル作成費は今後の使用ライセンス料からの相殺という形で御承認して頂ければ、商業組合トレードギルドで立替させていただきます。」


「それでお願いします。」


 うん。自分で商売する気ないもの。あ……でも開拓団ラドサの産業として…まぁいいか。


 ついでに、そろばんの事を聞いたが、ないそうだ。逆に


「そんな便利なものが!! そのサンプルはいつ用意していただけますか!!」


 なんて思いっきり喰いつかれてしまった。


 --------------


「ここが、お話した家具工房です。

 ファニル親方~! おられますか~?」


「なんじゃ~。」


 出てきたのは、ドワーフの様なひげを蓄えたおじさん。人族ですけどね。


「突然すみません、ソーヤと言います。

 作っていただきたい木工製品があってお願いに上がりました。

 これなんですけど。」


 先ほど商業組合トレードギルドで描いてきたスケッチを差し出す。

 ちょっと改良したんだよね。もちろんベンリルさんにもおなじスケッチを渡してある。

 石ではなく、木駒に変更、2cm角、厚さ5mmほど。

 角を落として面取りした八角形の木片にして40個。

 木駒を置いて計算する場所は4段にして寝かせた階段状にして、4段目だけは木駒を立てて収納できるように少し深め。


「で、いくつほしいんだ?」


 おれの分で1個、商業組合トレードギルドのサンプルに2個、騎士団に1個、ゼシトさんの勉強用に1個…


「とりあえず、5組お願いしたいのですが…」


「ん、ちょっと待ってろ。」


 そう言って、奥の作業場に行ってしまう。

 その様子にベンリルさんと顔を見合わせ苦笑。

 ファニル親方は30分するかしないかで、木箱を抱えて戻ってきた。


「これでいいか?」


 中身を確認すると。


 スゲー!!!もう出来てる。

 駒も全部面取りして磨かれてるし、台の方も全部が艶々。

 釘を一切使ってない木組みだけで出来上がってる。


「凄いです。こんなに早く、しかもきれいです。

 全然問題ないです。……でおいくらになりますか?」


「こんなもん、端材使ってるから大して掛ってねぇ。

 そうだなぁ、で銀貨1枚でどうだ、それでも貰いすぎだかな」


「え? 銀貨1枚? だめです!絶対だめです!!

 そんなに安くありません。銀貨1枚でもおかしくないです。」


 ファニルさんとベンリルさんが不思議そうにおれを見る。そして口を開く。


「端材使ったやっつけ仕事だ、手間的にも充分な金額だ。」


 それ、職人が言っちゃうの?


「いいえ、だめです。僕は作ることができません。

 その僕がお願いして、ファニルさんので作っていただいたんです。

 そのに見合う金額をください!」


「そうは、言ってもなぁ……」


 何回かの押問答の末、銀貨2枚で話が付いた。

 銀貨2枚なら手持ちで支払える、靴に隠した銀貨も使っちゃうけど。

 ちょっと安すぎて納得できない部分もあったが、なんとか受け取ってもらえた。


 そして、ベンリルさんと商業組合トレードギルドへ戻る。


 --------------


「ソーヤと言ったか? あのヒヨッコ。だと…うれしいこと言ってくれるな。

 次になんか頼まれたら、からな。」


 彼はそう呟くと、ニコニコしながら銀貨2枚を大切そうに棚の奥にしまった。


 --------------


 商業組合トレードギルドの個室に戻り、サンプルを2組ベンリルさんに渡す。

 登録名は ”石入れ計算機” から ”算術台” に変更、商業組合トレードギルドの登録料は不要。使用ライセンス料は3カ月ごとにおれの冒険者協会ギルドの口座に入ってくることになった。


「ベンリルさん、よろしくお願いします。」


 そう挨拶をして、商業組合トレードギルドを後にした。


 しかし、3カ月後か・・・ お金……ほとんど手持ちが…。



 --------------

 近況ノートに 算術台 のイメージ画像をアップしてあります。

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