第43話 ソーヤ 怒る!
無事? 登録が終わり応接室から出てくると、椅子に腰かけて、足をぶらんぶらんと揺らしているサクラさんが目に入った。
ちょっとかわいいかも。
「すみませんお待たせしました。もう少し待って頂けますか?
僕が出来そうな依頼を受注してきちゃいますので。」
あれ? 掲示板的なものがない。
どこで依頼確認するんだ?
「受注・完了」のカウンターに向かおうとしたら、「その他ご相談」のカウンターにいたあの女性が話しかけてきた。
「ソーヤさん? でしたよね。あなたラドサから来たんですか?」
「はい、そうですが、何か?」
「すみません、ちょっとだけお話よろしいですか?」
「かまいませんけど、待たせている方もおりますので。」
とサクラさんの方を見る。
「あらぁ、ごめんなさい。デート中でした? お邪魔しちゃいました?」
「ぃ…いいえ! 違います。 違います!」
なんか否定したからか、サクラさんの方から何かが飛んできて突き刺さる気がするんだけど。怖くて見れない。
「すみませんね。じゃぁ、手短に。サリダは元気ですか?」
ああそうか・・・ どこかで見たと思ったら。
三角眼鏡なければサリダさんそっくりだよ。
しかし、どうして行く先々で…
「あぁ・・・だからどこかで見た気がしてたんだ!」
「双子ですからね、私はデリダと言います。一応私が姉なんですけどね。」
「元気ですよ。僕なんかいつもからかわれてますよ。」
その後いくつか言葉を交わし…
「ラドサはなかなか開発が進まなくて、苦労しているんじゃないかと。
無理していくことなんて、ここに居ればよかったのに。」
カッチーン! ム・カ・ツ・イ・タ!!!
「みんな… 毎日… 毎日、一生懸命なんです。」
「…責任をもって、できる仕事をして…
…困ったときは話し合って… 助け合って… 子供たちでさえ…
デリダさん! あそこの暮らしを見たことも無いのに。
そんなこと言うのは
今の言葉を取り消してください!」
静かな
前の世界にいた時のおれなら、ここまで言わなかった…。
たぶん愛想笑いでスルーして終わり。本当にショックだった…。
姉妹なのに、姉妹でさえあそこの暮らしを理解していない。理解しようともしていない…。
それなのに知りもしないで、あの厳しさを知りもしないで論評する…。
見過ごすことが出来なかった。
おれにとってはすでに故郷、
瞬間。すべての音が消えたような錯覚…
デリダさんが深々と頭を下げていた。
「
今度は時が止まる…… ふと我に返る、どうすんのこれ?
「すみません、僕も大人げなかったです。謝罪は受け取りましたから。」
話題そらさないと…… そうだ! 小さな声でこっそりと・・・
「あの、デリダさん…? ちょっと困ってるんですよ。
実は…依頼の選び方がわからなくて…」
「依頼の受け方ですね! ではこちらにどうぞ!」
いや、棒読みすぎるでしょ。みんな引いているよ。
「ここの受付で依頼をまとめたファイルを確認して、番号をお伝えいただければ依頼の受付が完了いたしますです。」
いや… デリダさんが丁寧すぎて、余計に注目集めちゃっているんですけど。
しかもテンパッて、「ますです」口調とか……
逃げたい。でも周りの目がどんな依頼を受けるかという好奇心で一杯なんですけどぉ!!!!
結局、ファイルをぺらぺらめくり物色するおれが居た。
--------------
「それで、デリダ。彼はどんな依頼を選んだのだ?」
「彼は、噴水広場のごみ掃除を受注しました。あと、彼の機嫌を損ねてしまったかもしれんせん。」
「そうか… 意外に手堅い受注だな。
…彼との多少の行き違いは仕方ないな、彼の事を知るの為に泥をかぶらせてすまなかった。
ありがとう。デリダ。」
まさかと思ったが… ザックが手紙に書いていた。
『もしかしたら、本人に自覚はないが、使徒かもしれない。』
やはりそうかもしれない。
伝承では神から送り出された時に受け取ると言われる数々の特殊なアイテム。
あの服や
『文字が読めないスキル欄』
100年近く前の
【サーブロ・ローク・ドージョー】の登録時にそっくりな状況だ。
今後の彼の動向には細心の注意を払うべきだろう。
騎士団も動いているとは思うが、ローベルト様にも一報を入れておいた方が良さそうだ。
--------------
サクラさんを待たせてしまった、外を見ると日も暮れかけている。
「長々とすみません、お待たせしてしまいました。帰りましょうか。」
「はい! では、ご案内いたします!」
という元気な返事と共に宿に… だぁかぁらぁ! 腕を抱え込まないで!!
あなたの胸部武装に密着しちゃってますから!!
宿の部屋に戻ってきた…… しばらくボーと考える。
疲れた… 身体よりも心が…。やるせなかった…。
でも多分、おれが気にするほど
気にする余裕もないだろうな…。
あの万年床の中に横たわっていた頃のように、頭の中でいろいろな考えがぐるぐる回る。
「みんな… 毎日頑張っているのに…」
そんな鬱々とした気持ちを抱えながら食堂へ、テーブルに着くとサクラさんが配膳してくれた。
「ソーヤ様、なんだか帰って来てから元気ないみたいですけど。どこか御加減でも悪くなされましたか?」
「うん。大丈夫です。ちょっとだけ疲れただけだから。あ・・・いい匂い」
「今日は、この宿自慢の小シュプリとラカリマの入った特製 ”コノーミヤーキー” です!
おかわりもありますからいっぱい食べてくださいね!
あっ、エール忘れちゃった、すぐも持ってきますね。」
煮詰めたウスッタとマーヨウ(マヨネーズ)が掛けられ、その上の青のりと踊る鰹節?
「エールお待たせしました。ごゆっくりどうぞ!」
にっこり笑ってサクラさんは奥に戻っていった。
「いただきます。」
美味い! 絶妙の火加減。
硬くなりがちなラカリマが口の中でプツっと切れる。
エールにあう!
美味しい夕食は、おれの心を元気にしてくれる。もうエールが無い。
「すいませ~ん! おかわりお願いしま~す!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます