第41話 代理で伝言

 アマートさんが謎解きに反対の姿勢を貫いていたのは、ひとり占めを恐れたのではなく。それによって曾祖父の目指した理想から遠ざかってしまうことを危惧したんだと思う。その結果、すべてが共倒れになってしまうことを。


 「ゴーロウさん、先ほどとおっしゃいましたが、サーブロさんの残した言葉は『調の壁』だったんです。何か気が付きませんか?」


「そう言えば、ソーヤ様は最初から『調』と・・・・では意味が違うのですか?」


「いいえ意味は、ほぼ同じですよ。ただ、この世界に来て何年も過ごしたサーブロさんが、あえて『調』という、そこには訳…が…」


 …あれ? もしかして、ただ歌手名とか思い出すのががめんどくさかっただけ? だったりして?? そうなると偉そうに言ってたのが根底から崩れちゃうよ…


「…あったと思いませんか? 今までに、本宅の家屋やここの旅館の改築とかしましたか?」


「ここは、〔7年前の魔獣討伐作戦〕後に……別邸を売却した資金で…改修工事を行いました…厨房の位置もその時に変えて…」


「…元の厨房の位置は…受付の場所…です。その時には何も見つからなかったと…」


 割烹旅館ここの線は消えたか…あとは本宅で何か手掛かりがあればいいのだけど。


「お爺様、裏の本宅のあそこ、今の食糧庫は? 改修工事で食糧庫にしたけど、お話してくださったことありましたよね」


 食糧庫?


「あそこか……確かに曾祖父が〔割烹旅館〕にする前の〔料亭〕の時にで使っていたと言われてたな。しかし改装した時には何も出てこなかったと思うが…」


 サクラさん!ナイスです! サーブロさん本人が仕切ってた頃なら、じゃなくて『調』と言っていた可能性があります!


「ゴーロウさん。そこに案内していただけませんか?」


 4畳半ほどの薄暗い倉庫、冷却の魔道具と氷と入れて箱詰めされた肉や魚が置かれひんやりしている。大型冷蔵庫みたいな感じかな? 壁面沿って棚が置かれ、野菜などの食材が積み上げられている。

 部屋の中を隅々まで見るが、特に変わったことは無いような……

 ん…? 一番奥のここだけ壁のへこみ?

 へこみから縦横に線が入って碁盤の目のように見えるけど。


「ゴーロウさん、この壁の反対側って何ですか?」


「その裏は、本宅の庭です。何もありませんが。」


「なんで食糧庫にしちゃったんですか?」


「旅館の改築の時に、ここに出入りしてた親方が…

 このて温度変化が少ない。

 というので手狭だった食糧庫を移設したんですよ。」


 壁が厚い!だって!! ” ティン!!! ” と、きましたぁ!


 一度食糧庫を出て壁沿いに歩く。歩数は・・・ ここで本宅の庭かこちらから見た壁は特におかしなところは無いな。

 次は食糧庫に戻り奥の壁までの・・・ 他の部分の壁も厚いけど、明らかにこの壁だけ別格に厚さが違う!

 なんでみんな今まで気が付かなかったの? あからさまに怪しいじゃん。

 間違いなく何かがある、仕掛けられている。ただ、ぶち壊して入るとかやったら取り返しのつかないことになる予感もする。


 よし一度、部屋に戻って話をしよう。


「ゴーロウさん、先ほどの食糧庫おかしいです。」


「おかしいとは?」


「奥の壁だけがやたらと厚いんです。

 それこそ何か仕掛けがしてあると思えるほどに。」


「「「 !!! 」」」


「そうなんですか!ソーヤ様!」


「で、御相談です。庭側から壊すという手段もありますが、理由は勘としか言えませんけど… なんとなくですが、壊したらすべてが台無しになる気がするんです。

 ですから、一度食糧庫全部からにしませんか? その上でもう一度調べて、だめなら庭側から…」


「わかりました。やってみましょう。

 ですが、あの食料を移して保管する場所の事もありますので、早くても明日の夕方… 申し訳ありませんが、お待ちいただけますか?」


 ということで、本日の話は終わった。



 --------------

 4日目、朝早くにローイジ二等騎士の使いの方来た。「明日、聞きたい事があるので、騎士団まで来てほしい」だって。食糧庫の方もすぐにやれることも無く、時間がかかるみたいだし。まるっと時間が空いてしまった。


「ローク・ドージョー食品商会にいきなり行ってもなぁ……」



『…でん…ご…んだ…よ…』


 おぅ! か、びっくりしたなぁ。


『…料…理…の神……か…らの…でん…ご…んだ…よ…』


え? 料理の神? 伝言?


『…つ…た…える…ね…ひん…とは…』


『…げ…いの…うじん…の…な…まえ…だ…って…』


 清浄たわしの女神様・・・ それもう知ってます。

 今はやることが無くて暇なんだから。

 あ…そうだ ”柄付きたわし” は素晴らしいです。ありがとうございました。


『…りょ…う…りの…か…みぶ…っと…ば…す…!んだ…か…ら…』


『…こ…んど…もっ…と…い…いも…の…にす…る…ね…』


『…ひ…まな…ら…ぎ…るど…に…いっ…てみ…た…ら…』


『…つか…れ…たか…ら…ま…たね…』


 冒険者協会ギルドか。清浄たわしの女神様ありがとうございます。


 …てか、神が神をぶっ飛ばしちゃだめぇ!!!


 そういえば団長も時間があったら冒険者協会ギルドに行き、ある人物に手紙渡してきてくれって言ってたな。

 今日は暇だから行ってみるかな、登録だけするならそんなに時間もかからないだろうし。何も仕事してないから… お財布も軽いし、領都ラドの中での仕事なら問題ないよな。

 ならばさっそく出かけますか…


「ゴーロウさん、ちょっと出かけてきます。」


「行ってらっしゃいませ、ちなみにどちらまで?」


冒険者協会ギルドに預かってきた手紙を届けに行って来ます。」


冒険者協会ギルドでございますか、失礼ながら場所はご存知でしょうか? もしよろしければ、サクラに御案内させていただきますが。」


「助かります。」


「サクラ! ソーヤ様を冒険者協会ギルドまでご案内して差し上げなさい。」



 案内してもらえるのは助かるけれどねぇ……

 女性と二人でって…… 間違いなくテンプレ発生する予感がする。

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