第39話 きたきりスーパル。

 なんかさぁ領都ラドに来てから毎朝 ”スーパル” っていう、チュンチュン鳴く鳥の声で起きるんだよね…… たまに、ヂュン!ヂュン!って変な鳴き声をしているのが混じってるけど…。

 同じ鳥だよね?


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 さて次はおれの個人的用事。とにかくまず手に入れたいのは服。というか下着パンツです。

 こちらに来てもうじき半月。毎日 "たわし召喚!” のおかげで清潔だけれど、さすがに・・・パンツ洗っている時スースーするのはちょっと。

 かなり切迫しています!


 ということで、サクラさんに衣類を売っている商店を案内してもらう。予算は銀貨2枚。

 市場通りから出る時に、サクラさんが言い出した。


「迷うといけませんから、手をつなぎませんか?」


 おれの返事も待たずに手を絡めて・・・ これ、【恋人つなぎ】ってやつじゃねぇ?

 しかも二の腕があなたの胸部武装に当たってますよ。困るんですけど。

 ちょ…ちょっと待っておれの制御棒が・・・。


 いきなりの事で思わずドキッ!としちゃったよ。サクラさんを見ると、うつむいて耳まで真っ赤になってる。おれも結構ドキドキしてしまってお互い無口になってしまった。

 (中学生の初デートか!)なんて心の中で突っ込んだ。

 しょうがないよね、あっちでの高校生の時以来だし。恋人つなぎじゃなかったけどさ。けどサクラさん、無理してない?


 連れてこられた店に入って、並べられている商品を見る…

 ちょっと待って、ここ女性の下着ばかり売ってない?

 かぼちゃパンツだけじゃない、かなり扇情的エロティックなのもあるよ。

 そうか…だから、赤くなってたんだね。


 男性用下着が見当たらない。店員に聞くしかないな。


「すみません、男物の下着はありませんか?」


「男性用の下着はあちらの角にございます。」


 面積比が1:12だと! …デパートとか百貨店とかもそんな感じだったかもしれない。


 男性用下着の所に行って、手に取って確かめる。太めの綿糸で編んである。いま履いているのに比べたらゴワゴワだなあ。でも、こっちは神様謹製だからそもそも比較にならないか。


 綿のパンツ3枚で小銀貨4枚と大銅貨8枚、七分袖のシャツ3枚で小銀貨6枚大銅貨6枚。大銅貨4枚分値引きしてもらって銀貨1枚と小銀貨1枚。


 受け取って、マジックバックに入れたら次のお店へ。


 サクラさん… 次は古着屋さんだから、恥ずかしくはないと思います。だから手をつながなくてもいいんですよ。

 だ・か・ら…腕を抱え込まないで、お願い…。

 あなたの胸部武装が当たってるからぁ。


 1ブロック離れた古着屋に到着。真冬に向けて厚めの生地の上着とズボン。程度は良いが汚れが落ち切れていない安い物を物色する。だって ”たわしで洗って” しまえばいいだけですから。お得ですし。

 結局ここでは、上着2着・小銀貨3枚、ズボン2本・小銀貨2枚と大銅貨8枚。

 あとはオーバーコートを1着・小銀貨2枚。値切り交渉で大銅貨3枚値引き。

 大銅貨8枚まるまる値切ろうとしたのに。ちくせう。


 使ったお金、銀貨1枚 小銀貨8枚、大銅貨5枚。予算内だよ。

 この買い物上手め!! と自分で自分を褒めておく。

 だって褒めてくれる人なんか居ないからさ。


 宿に帰る途中。小道を抜けてきた噴水のある広場で、露店から甘い匂いがしてきた。見てみると。行列のできた屋台が…


「今川焼? 大判焼き? これもサーブロさんが伝えたのかな?」


大叔父おじいさんが生み出したお菓子です。イマーバンと言います。

 ……あの頃はみんな仲が良かったのに…」


 イマーバン? …混じってるじゃん。

 あれ? サクラさん? なんかしょんぼりしてませんか。

 小腹も減ったし。ここはお礼に・・・ 列に並んでしばらく・・・


「おじさん。イマーバン2つください。」


「あいよ! 一つ大銅貨6枚で大銅貨12枚だよ。」


 。大銅貨3枚ぐらいかと思ってた。おっちゃんがイマーバンを二つ大きな葉っぱに包んで渡してくれる。おれが支払おうすると、屋台のおっちゃんが、おれとサクラさんを見る。


「おっ! あんちゃん。デートか?

 ならだ!大銅貨10枚・・・小銀貨1枚でいいぜ。」


 と言って、バチコーン!と音がするような、ものすごーく不器用なウインクをしてきた。


「ありがとう。おじさん。」


 そう言いながら小銀貨を支払い。


「今日の案内のお礼です。そこの噴水脇の椅子に座って一緒に食べましょう。」


 噴水の椅子に座って、イマーバンを一つサクラさんに・・・・お互いに一口食べると自然に笑みがこぼれてくる。

 餡子がもっといいけど、この甘さ控えめが美味いな。これ小豆使っているな、小豆も探さないと。

 なんて考えて横を見たら、ニコニコ顔で頬張るサクラさん、思わず目があってしまった。


 あれ? 傍から見たら完全にデートしているカップルだよな。


 宿に帰って部屋に戻ると、さっそく買ってきた古着をマジックバックから取り出して風呂の脇の洗濯場に向かう。


 洗濯場で買ってきた古着を広げてみる。

 シャツのこれ襟の所から胸のあたりまでついているのは、血だよな。

 こっちは袖に・・・ ズボンは…これもだな。

 オーバーコートは…うわぁ…裏側でがっつり固まっちゃってるじゃん。

 もしかして、死体から剥ぎ取ってきたんじゃねぇ? まぁ洗えばいいんだし。


 たらいを汲んで。周囲確認。。誰も見てないな。


 "たわし召喚!”


 ゴシゴシ!ゴシゴシ!ゴシゴシ!


 相変わらず凄いね。あっという間にきれいになったよ。うん。どこにも汚れは残ってないな。では、


 ”乾燥!!”


 いけね、オーバーコート裏返したまんまだ・・・・?

 裏返し・・・ひっくり返す・・・・


 ”ティン!!!” と、きたぁぁぁ!!


 洗い終わったものを一まとめにして抱え、急いで部屋に戻る。


 あのメモをみる。


「べ か の ば り う ょ ち」


「ち ょ う り ば の か べ … 調理場の壁!!!」


『逆から読め』が2重のヒントになってたんだ!!


 急いで、受付のゴーロウさんのの所へ。


「ゴーロウさん。あの木版の謎。解けたかもしれません。夕食後に、木版をもって部屋まで来ていただけませんか?」


「なんですと!! 本当でございますか? ソーヤ様!!!」


と伝え食堂で夕食。キパンプのシチュー。あぁ美味い、温まるなぁ。

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