第36話 大きい事は良いことだ

 二人が帰り、掘り炬燵をセットしてくれた女性が来て元に戻す。そして布団を敷く。畳に布団…。一瞬、変な方向に思考がぶれた。


 布団を敷いていた女性が爆弾発言をする。


「一階奥にがございますので、どうぞご利用くださいませ。」


 があるだと!!! 残念ながら混浴では無かった。しかしせっかくだ、久しぶりの風呂を堪能しよう。


「なんということでしょう! 匠が造り上げた。。。のかは知らんけど、岩風呂風になっている。広い。の名に偽りなし。だね」


 子供ちびたち連れてきたら大はしゃぎだろうなぁ。湯船の脇に看板? 何々・・・


「先に体を洗ってから、お入りください(御入浴をお願いいたします。)」


 こちらの言葉の横にも偽装された日本語でも書いてある。芸が細かい。思わず笑ってしまった。

 そういえば、 "たわし” で体洗ったことが無いな。試してみるか。


 "たわし召喚!”


 ゴシ!ゴシ! おぉ、すごく気持ちいぃ。たわしなのに痛くないぃ。・・・うぐっ。背中に届かない。。。ちくせう。。


 でも、”ティン!” と来んだよねぇ。たわしを送還して・・・


 "柄付きたわし召喚!!”


 おぉぉ!これなら届く!


 なんと言う柄付きたわしの有用性。このために追加してくれたと言っても過言ではないな。清浄たわしの女神様ありがとう。


 湯船につかる。思わず声が出てしまう。


「ア゛ア゛ア゛ア゛・・・・」


 湯に浸かりながら考える。


「色々なところにネタのように漢字かな混じりの文字が隠れているなぁ。

 さっきのお酒のメニューも、エールの脇に模様に偽装してってあったし。こっちの人は絶対わからないよ。」


 風呂を出て部屋に戻る。たわしの効果でお肌だよ。

 この効果については絶対ににバレてはいけない。でも、開拓団あそこに風呂があったらいいのになぁ。


 なんて考えながら布団に入ると、2日間の野営の疲れもあってすぐ寝てしまった。



 --------------


 2日目の朝、朝風呂に入ったついでに、着てた服を風呂の脇の洗濯場で洗う。身支度を整えてから食堂へ行き朝食を頂いた。

 白メコー・味噌汁・だし巻き卵・焼きジャッケ・・・漬物や海苔、納豆まである。これぞ「THE 朝飯」って感じだね。


「いただきます。」


 食べながら、一泊、銀貨何枚だ?

 深く考えないようにしよう。騎士団持ちだし。ふぅ。満腹。


 食後のお茶を頂いていると。昨日受付にいた初老の紳士から話しかけられた。


「お客様、少々お時間を頂きお話しさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 そう言うと、食堂の脇にある日本庭園の様な庭を見れるスペースに案内された。受付や食堂からは死角になってたし。昨日到着した時はすでに暗かったので気が付かなかったな。



「単刀直入にお伺いいたします。

 ソーヤ様は、わたくしの曽祖父 ”サーブロ・ドージョー” とから来られた使でしょか?」


 おぅ。ばれてーら。でも、使徒じゃないよ。使命無いから。

 驚きながら初老の紳士の顔をまじまじと見る。


「申し訳ありません。まだわたくしの名前を申しあげておりませんでした。

 わたくし、ゴーロウ・ドージョーと申します。この宿のをさせていただいております。」


 この人サーブロ・ドージョーさんのひ孫だったのか。


「実は、昨日受付におりましたところ、樫の部屋の〔草床〕の事をとおっしゃっておられたのが聞こえまして…

 その後に御夕食のをご所望でしたので、もしやと思い勝手ながら、曾祖父から伝わる判別法を試させていただきました。

 などと言ったのもその一つです。」


 おれ、やらかしてた。うっかり口に出していたよ。

 話を聞くともそうだけど、こちらの文化ではそもそもを聞くなんて事はしないんだって。


「さらにお風呂をご案内した際にも、こちら世界で使わない言い方でと言いご案内しましたが何も質問もされなかったと聞き、ほぼ確信をしておりました。

 最後に本日の朝食で、我が家代々の秘密として伝わる ”納豆” をお出ししました。それを躊躇なく召し上がられておりましたので、こうしてお声を掛けさせていただいた次第でございます。」


 そうだよね、元の世界でも納豆を躊躇なく食えるとかイカの塩辛とか平気で喰えるっていうのはね。(個人的見解です。) 


「お願いですから、秘密にしてください。いろいろとトラブルになるのは嫌ですから。」


「もちろんでございます。曾祖父と同郷方の… いいえ、たとえどんなお客様であってもその方の情報を漏らすなど、商売人としてあり得ません。

 ですが、折り入ってご相談に乗っていただきたいことがございますので、後ほどソーヤ様のお部屋にお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「わかりました。お待ちしてます。」



 部屋に戻って考える。あっさりばれたけど、駄目だとか、いやだとか言えないよ。


 逆に考えればローク・ドージョー食品商会への伝手を作る絶好の機会じゃないか。見逃せるわけがない。

 なんて思っていたら、早速。


「ソーヤ様、お時間よろしいでしょうか。」


「どうぞぉ~」


そう答えると、ゴーロウさんとお茶と茶菓子を載せたを持った受付にいた女性が一緒に入ってきた。

 ゴーロウさんは両手で20cm角ほどの大きさの何かを包んだ物をもっている。

 二人とも畳に上がると、受付にいた女性がお盆を脇に置き


「ゴーロウの娘、ナツコと申します。よろしくお願い申し上げます。」


 と手をついて挨拶をした。なんとも和風な挨拶だな。

 娘って事は五代目? ”五代目のナツコ” ですか…

 それはさておき話を聞きましょう。


おれの前に、お茶(緑茶だよ!)と茶菓子を・・・置いて退室しようとした時に


「ナツコ、お前も聞いておきなさい。

 お願いしたいのは ”これ” についてです。ソーヤ様にはこの謎を解いていただきたいのです。」


 ゴーロウさんはそう言うと、座卓の上に置いた包みをひらいた。

 中身は表面に筆の様なもので書かれた文字がある木板だった。

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