第34話 領都「ラド」

 もうウーゴも気が付いているだろうけど。

 荷台にあった鬼兎オーガラビットの毛皮とかと一緒に、売れ残ってた食品なんかを全部マジックバックに入れちゃったんだよね。


 このことを団長に話した時。


「おぇ、見た目と違って次々と本当にえげつないこと考えつくなぁ。」


 と言って、腹抱えて笑ってたよ。

 それで、団長とおれとで決めた食料を渡す条件が、【謝罪の言葉】


 だって、発覚してから言い訳はしても、一切謝罪の言葉が出てこなかったんだもの。

 心がこもっていなくても、一言だけでも、何らかの謝罪の言葉があったらおれもここまではしなかったんだけどね。


 やっと食事ができたウーゴ…… 本当によく口が回る、舌が回る…

 たった二日の絶食でこれだから…… ぺらい…薄っぺらすぎる。

 こんなんだから、何らかの処罰が下って復帰してきてもと思ってる。

 だから、今も必要以上の言葉は一切発していない。



 夕方になりバソナ川に架かる石橋を渡ると、領都ラドが見えてきた。

 日暮れ前に何とか到着できた。あとは3通預かっているうちの最も重要な手紙を、騎士団にいる団長の長男のギダイさんに渡すだけ。

 ギダイさんが急な任務とかで不在の時は、練兵所にいる次男のゼシトさんに渡す予定。


 領都ラドの入場門。ウーゴは商会の鑑札を出し、おれは団長が書いてくれた身元証明の書類を門番の衛兵に見せるとあっさり通過。治安がいい証拠だね。


 ウーゴの荷馬車に乗ったまま騎士団の駐屯地に向かう。駐屯地が近づいてくると、またウーゴの顔色が悪くなっていく。


 駐屯地に着くと、入り口に金属鎧プレートアーマーを纏った二人の騎士が居た。

 バルゴさんぐらい年齢で顔も体つきも ”THE四角” といった風貌のベテラン騎士と色男系の顔立ちをした若い騎士。

 その門番をしている若い方の騎士さんに、団長からの紹介状と身元証明の書類を手渡し見せる。するとおれの顔をじろじろ見ながら


「お前、ラドサから来たのか? 見かけない顔だな。俺がむこうに居た頃はいなかったよな?」


「数日前からラドサでお世話になっています。ソーヤと言います。

 団長…ザッカールさんの息子さんでしょうか?

 ギダイさん宛の手紙を預かっています。」


 と挨拶すると、ビンゴ! いきなりギダイさんと遭遇、ラッキーだ。さっそく手紙を渡す。

 よく見たらベルナさんによく似ていて、団長のあの強面の感じが全然ない。ベルナさんの遺伝子の方が強かったようだ。


親父おやじからの手紙? だって?」


 いきなり封を開けて読みだした。読み終わると…


「ロイージ二等騎士殿。これをお読みください。」


 と隣のベテランさんに手紙を見せる。ベテランさんは読んですぐに


「ギダイ三等騎士。に報告。指示を仰げ。」


「はっ!ギダイ三等騎士。に報告。指示を仰ぎます。」


 バルゴさんがしていた様なとした敬礼をして、金属鎧プレートアーマーの擦れる音をガシャガシャ立てながら駐屯地奥の建物に走っていった。


「ソーヤ君と言ったかな? 君と、そちらのウーゴ氏、こっちに来てもらおう。」


 うながされるままに向かった門の横のレンガ作りの建物の前で、若い騎士さんと何か一言二言。

 若い騎士さんは交代するように門に向かい、おれたちは建物の中に。ウーゴ氏はまた白目になってたよ。


 廊下を進んだ先の突き当り。2m×2mの小さい部屋に、小さい小窓。中央に四角いテーブル。

 なんだか思いっきり取調室・・・ですよね。ここ。3人はきついよ。


 おれも、ウーゴ氏も椅子に座る。ロイージ二等騎士は入り口脇でびしっと直立不動。

 しばらくしたら、廊下からガシャガシャという音を立てながら、ギダイさんが戻ってきた。と、もう一人は誰?


 そのもう一人とロイージ二等騎士は、こちらに聞こえないくらいの小声で何か言葉を交わしてた。


「ソーヤ君、一緒に来てくれ。ギダイも来い。あとは任せた。マールオ。」


 ロイージ二等騎士の後ろをついていく。後ろからギダイさん。


 金属鎧プレートアーマーに前後を挟まれて・・・・。


『おらは犯人じゃな~い! 無実だ~~!』


 なんて叫びたい気分になるよ。



 建物を出て、駐屯地奥の建物の一室に。余計なものがない質実剛健な内装と無骨な家具が置いてある部屋だった。

 最初からこっちにしてよ。と思っていたら。


「すまんな。こちらの部屋を用意させてた。」


 と言って、ひと呼吸してから話し始めた。


「では、話をさせてもらう。

 ラドサ開拓団団長から、正式な告発状を受け取り先ほど受理した。

 この件に関して正式に調査することになった。

 今後ソーヤ君にも話を聞くことがあるだろう。

 領都ラドでの宿は決まっているか?」


「いいえ、領都ラドについて直接こちらに伺いましたので…」


「では、宿はこちらで用意しよう。一流ではないが、それなりの宿だ。」


「え? いいんでしょうか?」


「先ほども言ったが、があるかもしれない、連絡が取れないとこちらも困る。そう言う事だ。」


 なかば監視状態という事か。領都ラドを自由に見て回りたかったけど無理そうだな。


「調査は2週間。

 ウーゴ氏の取り調べと、ビルロ商会への任意調査といあわせが予定されている。その間にこちらから確認する件があった場合は、宿に日時を連絡する。

 領都ラドから出ない限りは問題まない。」


「ということは、領都ラドを見物していてもいいのですか?

 一度、ローク・ドージョー食品商会に行ってみたかったんです。」


「あぁ、問題ない。

 宿するから、その時だけ予定を開けておいてくれ。私からの話は以上だ。ギダイ三等騎士、宿に案内して差し上げろ。」


「はっ! 了解いたしました。を宿に案内いたします。こちらへどうぞ。」


 とした敬礼をしたギダイさんについて出ていこうとしたら、ロイージ二等騎士が


「ギダイ三等騎士!を宿に案内した時点で、貴殿の本日の任務は終了とする。

 聞きたい話もあるだろうからな。」


 と言いうと、ニコッとした後すぐに表情を戻して。一言


「以上!解散!」

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