第31話 それを失うのは一瞬

 三人一組にしたのは訳がある。

 先ほどの取引で鬼兎オーガラビットの毛皮だけで銀貨が3桁になっているからだ。

 桁ごとに一人。しかも一桁目と二桁目に年かさの子たちを配し、三桁目にハンザ君、カーラちゃん、マリサちゃんの三人が担当。

 何しろこの三人つい最近まで、6から上の数を数えられなかったからね。今は大丈夫だけどさ。


「みんな~! はっじめーるよー!」


「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」


「売ったものから行くよ~!」

鬼兎オーガラビットの毛皮 銀貨194枚~」

鬼兎オーガラビットの角 銀貨24枚と銀貨36枚~」

鬼兎オーガラビットの牙 銀貨22枚と小銀貨4枚…」


 しまった、小数点になっちゃうじゃん。整数しか教えてない。とりあえず小銀貨は除いて後で別計算しよう。


「ごめーん! 鬼兎オーガラビットの牙 銀貨22枚と銀貨24枚と銀貨15枚~」


「バラーピカの歯ブラシ 銀貨7枚~」 


「乾燥薬草 銀貨4枚~~。ここまで計算できたかな~?

 マルコ君 何枚になった?」


「326枚です!」


「ルシアナちゃん 何枚になった?」


「326枚よ。」


「エリザちゃん 何枚になった?」


「326枚!」


 みるみるウーゴ氏の顔が青くなっていく。無毒になりましたか?


「じゃあ小銀貨の分だけ計算するよ~。代表ガルゴ君。いくよ~。」


鬼兎オーガラビット牙 小銀貨4枚~」


「バラーピカの歯ブラシ 小銀貨5枚~」


「乾燥薬草 小銀貨5枚~~。何枚になった~?」


「14枚 小銀貨14枚だから・・・銀貨1枚と小銀貨4枚!!」


 ウーゴ氏・・・プルプルし始めているよ。トイレなら終わったあとに行ってね。



「次は買った物だよ~準備はいい~~? はじめるよ~~!」


「塩ジャッケ 銀貨5枚~」

「お塩  銀貨72枚~」

「岩塩  銀貨32枚~」

「砂糖  銀貨30枚~」

「マトーマチョプ  銀貨24枚~」

「ウスッタ  銀貨30枚~」

「マーゴ油  銀貨36枚~」

「ミード   銀貨70枚~」

「ビラ爺のお薬 銀貨2枚~」

「他のお薬  銀貨5枚~~。ここまで計算できたかな~?」


「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」


「マルコ君 何枚になった?」


「306枚です!」


「ルシアナちゃん 何枚になった?」


「306枚よ。」


「エリザちゃん 何枚になった?」


「306枚!」


 ウーゴ氏・・・ もう過呼吸でヒューヒューしているよ。紙袋あげようか?


「じゃあ、売ったお金と買ったお金を計算するよ~。

 代表はジェス君とアマル君。いくよ~。」


「まず、売ったお金を足し算だよ~ 銀貨326枚 銀貨1枚 できたかな~? 今度は引き算だよ 銀貨306枚~~。何枚になった?」


「「 21枚!! 」」


 もうウーゴ氏、完全に白目むいちゃっています。タバスコの目薬さします?


「おい!ウーゴ!!! どういうことだ!!これは!!

 今までもやってたのか!!!」


 団長怒る。でもね、なぁなぁでちゃんと明細書確認していなかった団長も悪いんだよ。


「い・・いえ・・決して・・・計算間違えただけです。

 だけです。」


 あ~あ・・・誤魔化しちゃったね。もう逃げられないよ。正直に言ってれば、まだましだったかもしれないのにね。


「本当に、と言い切れるのか!!! ビルロ会頭に来てもらって説明してもらわないで納得できるかぁ!」


 ほらね、すでにウーゴ氏。あなた個人の信用度は ”0” なんだから。

 言い訳追加で、商会の信頼度まで落としちゃってどうするつもりよ。


「ウーゴさん、とりあえず今回の差額はとりあえずお話はそこからですね。」


 ・・・にこやかな笑顔で威圧スキル、ビンビンに使ってますよね。



 --------------

 ウーゴ氏は、とりあえず団の話し合いが終わるまでここに留まってもらうことになった。もちろん滞在中の食事とかは自前だよ。


「さて、どうしたもんか、みんなの意見が聞きたい。

 さっきは俺も頭に血が上って会頭に来てもらうなんて言ったが…

 …それには誰かが3日かけて領都ラドの商会まで出向かなきゃならん。

 ウーゴだけ返したら、途中でどこかに逃げるかもしれん。」


「そうじゃの、やはり誰かが一緒に行かんとな。

 問題はそれを… だれかするのかという事じゃが。

 往復で6日、いや7日ぐらいになるじゃろ。」


 と、ビラ爺が言う。


「そもそも、開拓団ここにいる奴で、そんな暇がある奴なんていないです。

 みんなそれぞれ何かの仕事してますから…」


 と、バルコさんが言う。


「そう言えば…… 

 。」


「「「「「 !!!!! 」」」」」


「だめよ! また冷たい水で洗いものするなんて。

 私はいやよ!! 絶対いや!!!!」


「ベルナぁ……」


「・・・・・」



 --------------

「という訳で、ソーヤ! お前しか空いている奴がいない。

 領都ラドまでウーゴのやつと一緒に行って、にこの手紙を届けてもらえないか?

 それさえしてもらえれば、あとははずだ。」


「僕はかまいませんが、洗いものとか… また皆さんが苦労しちゃいますよね。いいんでしょうか?」


「この際、そこは俺が… 頭を下げる(ベルナに)。頼まれちゃくれないか?」


「わかりました。

 一度、領都ラドに行ってみたかったし、ローク・ドージョー食品商会も見てみたいと思ってましたから。」


 こうしておれは、たなぼた的に領都ラドに行くことになった。

 ローク・ドージョー食品商会を見てこよう。開拓団ここで作れそうな新しい作物も探してこよう。きっとみんなの役に立つはずだ。


 何があっても必ずここに帰ってくる。ここがおれの居場所だと思えるから。



 第二章 完


 --------------


 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 区切りを次話とどちらにするか迷った結果、第二章はここまでです。

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