第30話 賢い子供たち

 挨拶もそこそこに、取引が始まる。

 倉庫から運び出されてきた鬼兎オーガラビットの毛皮を並べると、ウーゴ氏はさっそくメモ帳を片手に目利きを始める。紙と鉛筆あるんだ。手に入れたいな。


「ほぅ。これは凄い。最高品質じゃないですか。これを揃えるのにどれだけ狩ったのですか?」


「いつもと変わらん。三か月で25匹。処理が間に合わなかったのが2匹分あるがな。」


「これも素晴らしい! こっちもだ! 惜しむらくは、この良質の毛が刈り取られていなければ、銀貨10枚、いや11枚でも惜しくない。」


 その毛は、開拓団ここの越冬の必需品だから。


 早速、ウーゴ氏と団長とで、オーガラビットの毛皮から売却交渉が始まる。


 鬼兎オーガラビット毛皮 23枚

 1枚当たり、銀貨8~9   銀貨194枚


 鬼兎オーガラビット角 20本 (オス8 メス12)

 オスの角 6本のみ 銀貨4 銀貨24枚 2本は買い取り不可

 メスの角 12本  銀貨3 銀貨36枚 

 で計 銀貨60枚


 鬼兎オーガラビット牙 大16 中30 小 6袋

 牙 大 16本 小銀貨14 銀貨22枚 小銀貨4枚

 牙 中 30本 小銀貨8  銀貨24枚

 牙 小 5袋  銀貨3   銀貨15枚 

 で計 銀貨61枚と小銀貨4枚     


 バラーピカの歯ブラシ 1500本

 10本=1束 大銅貨5 大銅貨750枚=小銀貨75枚

 で計 銀貨7枚 小銀貨5枚


 乾燥薬草 各種       銀貨4枚 小銀貨5枚

    

 ということで決着。

 〆て、銀貨327枚と小銀貨4枚


 商品相場を知るために、みんなの後ろで座り込んで地面にちょこちょこ書いて計算していた。

 次に購入。みんなの隙間から見ていると…見たことあるような食材が


 あれは塩じゃけ? 新巻鮭? があった。

 ウーゴ氏によると先日行商にいったラドニで仕入れた「塩ジャッケ」だって。


 1本 小銀貨5枚 10本購入 銀貨5枚


 やった!お魚だ! この皮をパリパリに焼いたやつは、おつまみ争奪戦になること必至だな。


 調味料があった。塩・岩塩・砂糖、トマトケチャップ発見(マトーマチョプ)、ウスターソース発見(ウスッタ)、ごま油発見(マーゴ油)。


 塩(海の塩)1袋=1㎏ 銀貨6枚   12㎏  銀貨72枚

 岩塩 1kg 銀貨4枚         8㎏  銀貨32枚

 砂糖 1kg 大銀貨1枚 3㎏   大銀貨3枚=銀貨30枚

 マトーマチョプ 1壺(5ℓ) 銀貨4枚 6壺  銀貨24枚

 ウスッタ 1壺(5ℓ) 銀貨5枚    6壺  銀貨30枚

 マーゴ油 1樽(20ℓ) 銀貨3枚  12樽  銀貨36枚

 ミード(原酒) 1壺(5ℓ) 銀貨7枚 10壺 銀貨70枚


 今回仕入れたマトーマチョプやウスッタ、マーゴ油は全部ローク・ドージョー食品商会から仕入れたんだって。

 いつかは行ってみたいな。転生の神様も『その痕跡があるだろうから探してみるのも良かろう』なんて言ってたしね。


 でもミード! っか! 1壺が銀貨7枚!

 しかも10壺とかどんだけ酒呑みが多いんだよ!

 後、バルゴさん秘蔵のビックビーのミードなんて一体いくらになるんだ? と思ってたら、普通は4~5倍に薄めるんだって。

 ということは…もっと呑んでんじゃん。この酒呑みども!!!


 次はお薬、ビラ爺の腰の痛みに効く薬は是非とも入手したいね。


「腰の痛みに効く薬はあるか?」


 ナイス団長。


「えぇ。確か・・・ あったあった。この塗り薬。

 ちょっとお高いですよ。銀貨2枚です。」


 おぅ、手のひらサイズの小瓶。それ一つで銀貨2枚。でもビラ爺の健康のためには惜しんでいられない。


「それも貰おう。」


 あとお薬関係はなんだかんだ銀貨5枚。購入した合計が・・・銀貨306枚

 なんだよ、たいして残らないじゃん。酒呑みすぎだよ。でも少しだけでも利益残るから良しとしようか。


鬼兎オーガラビットなどの売却代金が、、購入していただいた食品他の代金がで、差額がが当方からのお支払いですね。(差額は見つかる前に台帳直して、いつのようにあの店で豪遊だな)」


 あれ? 計算が合わないんだけど。計算間違えたか。

 地面に書いていた計算結果を見る、いや違う。


 おいおいおいおい! ぼったくりじゃん! 詐欺じゃん!


 そう思いながら、団長の顔をちらちら見る。


「ん? なんだ? ソーヤ、どうした?」


 いやいやいや、明細貰おうよ。ウーゴ氏が紙に書いて計算してたじゃん。団長、確認ぐらいしようよ。


 団長が動かないので、おれが声をかける。


「あの、ウーゴさん、計算した紙見せてもらえませんか?」


「いいですよ。これです。

 (田舎のガキが見ても、どうせ計算なんかできもしないだろし)」


 紙を受け取ると、子供たちに声をかける。


「はーい! みんな~! 石入れ持って集合!!」


 おれがそう掛け声をかけると、みんな一斉に自分の石入れを取って戻ってくる。


「これから皆さんに、検算けんざんしてもらいま~す!」


「「「「「「「「「 けんざん?? 」」」」」」」」」


 子供たちの首が、また見事にシンクロして右側にかしぐ。


「検算というのは、足し算や引き算の数があっているか確かめることで~す。

 三人一組になってくださーい!

 リーダーはマルコ君、ルシアナちゃん、エリザちゃんにお願いしまーす。」


「えっ? この子たち計算できるんですか?」


 ウーゴ氏が狼狽うろたえ始める。


「そうなんですよ。数日前から一生懸命に算術の勉強してるんですよ。」


 ベルナさんが答える。


「あ~そうなんですね、開拓村には珍しく教育に熱心なんですねぇ。

 (まったく驚かせやがって、そんなにすぐ身に付くもんじゃねえよ)」


なんか団長が物凄い形相してる。


「おい!ウーゴ! ここは開拓じゃねぇ!開拓…」


   ☆彡 ス パ コ ー ン ! ★ ! ☆ !


 うぉう! 相変わらず容赦ないね。ベルナさん。

 それと団長はいいかげん学習しましょうよ。


 こうして、おれと子供たちによって。ウーゴの悪だくみを暴く作戦が始まった。


 お前がしでかした詐欺を、子供たちの力で暴いてやる。学がないなんて小馬鹿にしてたことを後悔させてやる。思い知らせてやるからな! 覚悟しとけ!

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