第28話 先生をやってみる。

「バラーピカの小屋の建築とか、明日以降忙しくなるなぁ。」


 なんて独り言を言いながら家の前まで来たらバルゴ君、カーラちゃん、ジェス君、マリサちゃんが何かごそごそやっている。


「そっち押さえて」「わかったー」「はやくぅ!つけてぇ!」「できたぁ!」


 そっと近づいていくと、バラーピカの首に名札を付けている。


「何してんの?」


「「「カーラだけしか名前わからないから、名札付けてた~」」」


 そうか、やっぱり区別つかないよね。おれだけじゃなくてよかった。


「どれどれ?」


 名札を見る。


「ピカちゃんと、ラーちゃんと、クーちゃん・・・か。」


「クーちゃんじゃないもん! クー君だもん!」


 ものすごい勢いで説明するカーラちゃん。他の子も首を立てに振っている。

 クー ”君” … 性別調べたんだ。きみたち凄いね。


 とりあえず、オス1匹とメス2匹だから繁殖はなんとかなりそう。全部オスとか、メスとかだったらまた捕獲に行かなきゃと思ってたんだよね。


「団長が、明日からコッケルの小屋の隣にバラーピカの小屋造るって言ってたよ。」


「「「「 やったー! 」」」」



 夕食後、団長が訪ねてくる。


「ビラル爺! ソーヤ! ちょっといいか~?

 無理すんな、ビラル爺そっち行くから。」


 ビラ爺がベットから降りてこようとするのを制して、ベット脇に向かう。おれもダイニングの椅子を持ちながら、団長の後について行き、団長の隣に椅子を置いて座る。


「この前狩ってきた鬼兎オーガラビットの解体の相談なんだがな、四日後に行商人が来る。それまでにできそうか?」


「腰の具合次第じゃから、何とも言えんの。

 痛みさえ退けばなんとかなると思うんじゃが。最悪、ソーヤに教えながらになるかの?」


「ソーヤ、お前はどうだ? 出来るか?」


「解体の基本いろはさえ解っていないので、正直に言えば自信が無いです。

 でも、やってみたいとは思います。」


「よし、明後日までビラル爺の様子見て、だめなら来月だな。

 保管するのはソーヤのマジックバックだから劣化の心配はしなくていいだろう。」


「あ・・・あの、団長…マジックバックってそうなんですか?

 劣化しないか? とか初めて聞いたんですけど。」


「「なにー!」んじゃとー!」


 何故か二人から常識が無いと責められる。・・・・理不尽だ。


 とりあえず調べ方は簡単だった。今夜お湯の入ったカップを入れておいて、明日朝取り出した時に冷えてなければいいらしい。



 翌朝。結果から言うと時間劣化してませんでした。


 朝の食器洗等ルーティーンを済まして、団長に報告。


「なら、慌てるこたーねぇな。」


 の一言で終わった。昨日あんなに怒っていたのに。理不尽だ。

 解体を急ぐ必要が無くなったので、バラーピカの小屋の建築の手伝いをする。



 ガースさんを筆頭に、ベルデさんとガースさんの息子のダルべさん、そしておれ。の4人。使用する木材は、ギーズさんが以前から伐採・加工してあったものを使う。


 柱が立って、今度は梁を組む。思ってた以上にしっかりした造りになるみたいだ。


「梁、揚げるぞ引っ張れー! せーの! せーの! せーの!

 ソーヤ! お前の側はもう少し! 引け!

 よーし! くさび入れるまで我慢しろぉ! …よし、もういいぞ力抜いて。」


 細めの丸太を三脚のように組んだ支柱を作り、木製滑車を付け。滑車を通した縄を木材の左右2か所に結ぶ。で、息を合わせながら引っ張り上げていく。結構重労働。

 最初は仮組の作業でおれが仮止め係だったけど、全然うまくできなかったのですぐに交代。


 自分・・・・不器用低DEXですから・・・。


 大まかな骨組みが出来上がり、ここでおれはお役御免。あとは建築と工作のスキルがある3人でやるって。もしかしておれ…邪魔だった?



 肩を落としてとぼとぼと・・・


 紡ぎ小屋の前までくるとベルナさんに声をかけられた。


「ソーヤ、今まで見ていて思ったんだけど。あなた頭いいわよね。」


 久しぶりに褒められた気がする。昨日は団長とビラ爺に怒られ、今日の小屋作りからは戦力外通告。なんか涙が出て来ちゃう。。。


「それでお願いなんだけど。

 これから寒くなると、農作業や野草採取をしていた子供たちの手が空いてくるのよ。

 だからね、勉強を教えてあげてほしいの。特に算術とか。数字も読めないし、数えれない子もいるからねぇ。

 もし時間があるなら、今日からでもお願いできるかしら?」


「是非やらせていただきます!!任せてください!」


「あ、そうそう・・・ 一般常識は教えなくていいわよ。子供たちの方が知ってそうだから。」


 最後の一言が無ければ・・・ おれ泣いていいですか?


 ともあれさっそく、勉強を教えることにしよう、楽しくね。

 でも場所も道具もないぞ、困った。


「ビラ爺、ちょっといい?」


「ん? なんじゃ?」


 子供たちとのお勉強会の会場に、この家の居間を貸してほしいとお願いをする。


「なんじゃそんな事か、かまわんぞい。」


 よし、場所確保。で、次は教材か。算数を教えるんだよな、まずは数の数え方から始まって、足し算と引き算だな3桁の計算まで出来るようにしたいな。

 あれを使ってみるか・・・ まずは小石を河原で拾ってこよう。


「ちょっと出かけてきま~す。」


 ビラ爺に声をかけて、境界森林ボーダーフォレストに行く途中で見かけたあの浅瀬を目指す。確か色のついた小石がたくさん落ちてたはず。


 あるある。2cmぐらいの大きさで赤黒いの、白っぽいの、緑っぽいのをそれぞれ50個ぐらいでいいかな?

 河原から戻ってきたら、小屋を作っているベルデさんの所へ行きあるものを用意する。

 小石がちょうど10個並ぶくらいの大きさの箱を10個、小石入れ用の箱を3個作ってもらう。サクッと作ってくれた。さすが工作スキル。


 よしこれで準備ができた。子供たちを呼んでこよう。

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