第27話 毒の謎

 家に戻ってくると、あれだけ泣いていたカーラちゃんもとりあえずは落ち着いたみたいだ。


「カーラちゃん。ピカちゃんは殺さないよ。

 それとね、ピカちゃんも寂しいだろうから仲間を連れてくることになったよ。」


 そういうと、カーラちゃん顔を上げて


「ほんと! ピカちゃんは大丈夫なの? ピカちゃんの仲間が増えるの?」


 おれはカーラちゃんに笑顔でにっこりしながらうなずいた。


「そ~や~!! だいすき~~!! ありがと~~!!」


 と言って、抱きついてくる。

 おれからは、NOタッチだから、セフセフですよね。


「これからピカちゃんの仲間連れてくるからね。」


 カーラちゃんは満面の笑みで頷いて、帰っていった。



 まだ日が高い。これなら大丈夫そうだな。


「ビラ爺、早速罠を使ってみるよ。

 これから境界森林ボーダーフォレストまで行って捕まえてくる。」


「気を付けるんじゃぞ。あそこら一帯はビックビーに気を付ければ問題無かろぅ。

 罠用の縄は一番細い奴、治具は小さい奴の2番目の穴じゃ。」


「ありがとう、ビラ爺行ってくる。」


 ナイフを腰に付け、縄と治具、麻袋をマジックバックに入れて早速向かう。この前の道のりを軽く走りながら行く。かなり早く到着した。

 早速、教えてもらった罠を組み上げる。


「輪の大きさはこれぐらいだったよな。」


 ビラ爺が仕掛けていた時を思い出しながら調整していく。都合4つほど作り終えたら、早速目印のを探して慎重に探索する。


「あったあった、確かこんな感じで・・・・」


 ささっと、2つ仕掛けたら、その場所から移動する。


 だいぶ離れた別のを探して、こっちも2つ仕掛けて移動。


 待っている間に、有毒と無毒の原因を考える。


「おそらく、食べている草か何かの違いなんだろうな。ここら辺の植物に毒が有るのが・・・」


 そう思いながら、あたりを見る。

 あれ? なんか見たことのある花が咲いてる。

 足下には薄紫色をした小さな花が咲いていた。その花の下の葉っぱ、茎、根本をじっくりと観察する。


「これもしかして、じゃがいも・・・か?」


 根元の土を少し掘ってみる。あった。拾って観察。土の中にあったのに、色がかなりきつい緑色。


「まさかこれが有毒になる原因か? っと、そろそろいいかな。」


 最初に仕掛けた罠に向かう。

 よし! 二つの罠の両方に掛かっている。2匹だ。


 目を確認する。パターン青! なんて冗談が浮かぶ。大丈夫だ。

 罠から外して取り出した袋に入れたら口を閉じる。もう一匹。こっちも青目。別の袋を出して入れる。

 袋をその場において、別の罠の確認に向かう。



 よし、こっちもだ。残念ながらかかっているのは1匹。


 目を確認する、パターン赤!! サクッとめてこちらはマジックバックに入れる。


 残った罠を回収して・・・時間はまだある。

 赤目のかかった周囲をたんねんに確認してみる。

 あった! じゃがいも。根本がほじられて、芋を食べた後がある。結構な数を食い散らかした後がある。中身は黄色がかった白色、でも皮の部分のどぎつい緑色がなぁ…


「これが原因かもしれない。」


 そう思い、かじられていない緑色のジャガイモもどきを数個拾い上げてマジックバックに入れる。


 最初の罠の場所に放置してた、もぞもぞ動く二つの袋を担いで帰る。



 家に着くと、カーラちゃんが待っていた。


「おともだち連れて来たよ」


 そう言うと、ぴょんぴょん跳ねながら喜んでいた。


 木の柵の小屋に捕獲した2匹を入れる。


「あなたの、おなまえはねぇ~~…」


 そんな事を言いながらカーラちゃんは柵の間から覗いている。


 名前がついていたとして、おれにはバラーピカの区別が出来そうにないけどね。



 家に入ると、ビラ爺の寝室に。


「ビラ爺、ちょっといい?」


「帰ったか。なんじゃ?」


「上手く捕獲できたよ。3匹。

 1匹だけ赤目だったから、その場でめてきた。」


「上手くできたようじゃの。春になって腰の調子が良くなったら、一緒に”グリンデア”でも狩りに行こうかの。」


 で本題。


「ビラ爺、赤目を捕ったそばで、こんなもの見つけたんだけど。」


 マジックバックから、緑色のじゃがいももどきを取り出す。


「テポートじゃな。・・・・そうか! この毒が原因かじゃったか!」


 元々毒あるのか。喰えるかと思ってたんだけど。残念。


「むかし狩りに行って、食料が足りなくなった狩人が見つけて喰ったら激しい腹痛と下痢で酷い目に遭ったそうじゃ。」


「ビラ爺の言う通り、たぶんこれが原因だと思う。周囲に食べ散らかした跡が残ってた。」


「普通の草とかなんかで育てれば、無毒のままのバラーピカが育てられると思うんだけど。」


「うむ。そうじゃの、試してみる価値はありそうじゃの。」


「この件、団長に報告してくるよ」


 そう言うとおれは、団長のもとに向かった。



 団長を探すと、周囲の柵を点検しながら見回ってた。おれの姿を見つけると。


「おぅ! ソーヤ! おぇまた面白い事始めるんだってな。」


 だから、その顔じゃ怒ってるのか? 怒ってないのか? 判りません。


「いいんじゃねぇか? 新しい事始めねぇと、開拓団ここは大きくならんからな。」


「ありがとうございます。で、さっき追加でバラーピカ捕獲してきたんですけど、毒の原因らしきものが解りました。」


「 ! なんだって? それは本当か?」


 そこで、今日の捕獲の顛末を団長に話す。ビラ爺にも話してあり、おおむね同意してたことを話す。


「ですから、普通の草とかで育てれば、たぶん毒無になるんじゃないかと。」


「じゃぁ、小屋作らんとな! コッケルの小屋の隣でいいか。」


 そう言いながら、おれの背中をバンバンと叩く、叩く。

 痛い! 痛いですよ。 団長!!




 --------------


 ※コッケル 開拓団で育てているにわとりみたいな家禽。数が少なく現在繁殖させて増やしている最中。

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