第25話 罠づくりを学ぶ

 背中からビラ爺が落ちた。すぐに動けないみたいだ。

 まずい。とにかく鬼兎オーガラビットを仕留めなければビラ爺が危ない。

 ナイフを構え一気に近寄る。自分の出した瞬発力に驚きつつも立ち上がろうとしている鬼兎オーガラビットの喉に突き刺す、大きく痙攣して動かなくなる。


「ビラ爺! 大丈夫??」


「ぬかった。また腰を痛めたようじゃ。」


「他の鬼兎オーガラビット嗅ぎつけてやってくる。この場をすぐに離れるぞぃ、急げ。」


 そう言うと顔をしかめながらなんとか立ち上がる。


 あっ獲物。そう思い2匹の鬼兎オーガラビットマジックバックに収納する。


「ビラ爺、荷物頂戴! マジックバックに入れちゃうから。」


 弓と矢筒を受け取り収納。ビラ爺に肩を貸してその場所を急いで離れる。

 街道までくると・・・


「ここならもう大丈夫じゃ。助かったわい・・・情けないのう。」


 ビラ爺が悲しそうな顔をしている。


「少し休んでいきましょう。まだ日も高いですし。」


 あ・・バラーピカ置き去りだ。ふと、カーラちゃんの悲しそうな顔が浮かんだ。



 --------------


 時間はかかったけど、ビラ爺に肩を貸して歩き、ラドサに帰り着く。


 ビラ爺にはゆっくり休んでもらって、おれは団長に今日の報告をしに行く。


「で、ビラル爺は大丈夫なんだな!」


「えぇ。腰をまたやっちゃったようですが。」


「そうか、狩りはしばらくお預けだな。今年はこれ以上無理することはしなくていいだろう。5日後に行商人が来た時に毛皮とか売却して、保存食や塩なんかの調達だな。」



 夕食、先日作ってた燻製と野菜たっぷりのスープ。ビラ爺の部屋に顔を出して


「ビラ爺、ご飯食べれそう?」


「あぁ、大丈夫じゃ。すまんがちょっと手を貸してくれ。」


 夕食後、やっぱり痛むのかビラ爺は早めに部屋に戻って就寝。


 明日は解体を教えてもらうつもりだったけど無理そうだな。そんなことを思いながら、おれも早めの就寝となった。



 --------------


 今朝も水瓶を持って井戸に向かう。おや? 団長だ。


「ビラル爺の様子はどうだ? 昨日の獲物解体できそうか?」


昨夜ゆうべの感じだと、今日・明日は無理じゃないかと思います。」


「そうだ、痛みに効く薬草とかってありませんか? 教えてもらえれば取りに行ってきますけど。」


「駄目だ。おぇみたいなが、採りに行って怪我なんかしてみろ。ベル…ビラル爺に何言われっか…考えただけで恐ろしくなる。」


 いま、ベルナって言おうとしましたよね。やっぱり影の団長おそるべし。



 家に戻る。ビラ爺が起きている気配がする。


「おはよう、ビラ爺。腰の具合どう?」


「まだ駄目じゃの。昨日よりましにはなっとるんじゃが…」


「朝ごはんどうする? ここに運んでこようか?」


「すまんの。そうしてもらえると助かるわぃ…」


「じゃあご飯届いたら、ここに運ぶね。そうだ、お水のむ?」


「お願いするかの…」


 ビラ爺にコップに入った水を渡して、テーブルに戻る。

 今日の予定どうするかなぁ? そんなことを考えていると、いつもの元気な声。

 はいは~い! 今開けますよ。



「食事終わったら声かけてね。食器取りに来るから。」


 おれは、ベット脇のサイドチェストにトレーを置いてそう言う。


 テーブルに戻ると、おれも食事を始める。

 今朝のメニューは、パンに間に燻製肉とケルル・ニオラを一緒にあえたものが入った ”サンデッチ” と キャロとソルイの入った塩味のスープ だよ。


 食べながら今日の仕事は何をするか考える。


「洗い物終わったら何しようかな?

 洗濯をして、そのあとトイレの掃除、そのあとは…、思いつかないなぁ。

 みんなの所に行って、何か手伝いが必要か聞いて廻ってみるか?」


 ビラ爺から声がかかる、食器を取りに行くと…


「すまんの。今日は解体教えるつもりじゃったが… そうじゃ! 罠の作り方を教えるぞぃ、あれなら部屋の中でも教えられるしのぅ。

 置いてある罠の袋と縄持って後で来るんじゃ。」


 そうだよ! 罠の仕掛けの勉強があるじゃないか。


「洗い物と洗濯とトイレ掃除が終わったら持ってくるね。」


 おれはそう言って、食器を運んで井戸に向かう。



 今日の当番は、サリダさん。一昨日の洗濯の時におれをいじった熟女ひとだ。「おばちゃん」という呼び方がしっくりくる人だ。


「サリダさん、始めちゃいますね。洗い物すぐ終わると思うので、洗濯ものも持ってきてもらえれば一緒に終わらせちゃいますから。」


「洗濯物ねぇ…」


 ニヤニヤしている。さてはまた、おれをいじるつもりだな!

 そうはさせん! これで黙らせる!


 "たわし召喚!”


 やっぱり目の前に出すとびっくりだよね。とっとと終わらせちゃって、トイレ掃除しよう。



 --------------


「ビラ爺!帰ったよ。そっちに持っていくねぇ!」


 そう声をかけるを、奥からビラ爺の返事が聞こえる。


 袋…袋…3つあるな、これは?この前使ったのより大きいな。こっちはもっと大きい、これがこの前使った大きさだな。

 縄は…壁に掛かっているのが5種類、左からだんだん太くなってく、どれ持ってけばいいんだ? 聞いてみるか。


「ビラ爺、大きさ違うのが3つあるけど、どれ持ってくればいいの?」


「この前使ったのは小さくてわかりづらいじゃろ。中くらいの奴じゃな、あと縄も真ん中のやつで良いぞい」


 言われた大きさの部品と三番目の縄をもっていって、ビラ爺のベット脇の椅子に座る。

 さて! お勉強タイム。

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