第23話 狩りの準備
次の仕事は、ビラ爺が下処理した毛皮を再処理することになった。
保管倉庫へ水を汲んだ桶を持っていく。倉庫を開けると独特の
「慣れんうちは、この匂いはちときついかもしれんの。」
棚に積まれた
"たわし召喚!”
早速水を付けて擦る。
ゴシゴシ!ゴシゴシ!ゴシゴシ!
毛がつやつやと光沢を放ち始める。
「本当にとんでもない
「わし一人でやっておったら、一冬まるまる掛かるのがあっという間じゃな。」
「しかも洗いで駄目になる物も出てくるんじゃが全くダメになっておらん。それどころか、このまますぐに仕立てができそうじゃ。」
「では外に干すかの。」
「あの、ちょっと試したいことがあるんですけど。いいですか?」
たわしの水気を切り、乾燥。と念じながら少しづつ。乾燥しすぎて硬くならないように。ゆっくりと・・・
ゴシ! ゴシ! ゴシ! ゴシ!
だんだん乾いてくる。匂いも少し減ったような。
「わしの仕事が無くなりそうじゃ・・・」
ぽつりとビラ爺がこぼした。
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家に戻り、ビラ爺とお茶を飲み休憩する。
「まったくとんでもないの。本当にわしの仕事が無くなってしまうわい。」
「今日は腰の調子もええし、狩りの準備でもするかの。休憩が終わったら
罠用の餌を取りに行くことになった。囮の
ビラ爺は、腰にポーチを付けて弓と矢筒を背負い、縄束と縄で作った括り罠を大きな袋2つに詰め始めた。
「じゃぁ出かけるぞい」
そういうと、片方の袋を担ごうとする。
「ちょっと待って、ビラ爺。」
と言いながら、おれは肩から掛けた
ビラ爺とおれは、一度、西の街道に出てから北に向かう。
バナソ川に行きつくと下流へと川に沿って移動。ここら辺は
「あそこの岩が並んでいる所があるじゃろ。あの先じゃ、丸太橋が架かっとるからそこから対岸に渡るぞい。」
指を指示した方向を見ると大小の岩が並んでいる。近づいてみると川の水深は浅く場所を選べばそのまま渡れそうだ。なんかきれいな色の小石があるな。
「浅いからと言って渡っちゃいかんぞ。水流が速い場所があるから、足下掬われたら簡単に流されてしまうぞい。」
そんな話をしていたら丸太橋。
丸太橋っていうから、てっきり丸太を倒して渡してあるだけかと思ったけど。ちゃんと杭打ってあるし、路面になる部分は丸太を3本まとめてある。普通に橋。立派な橋だよこれ。
丸太橋を渡り1時間くらい、前方に黒々とした森が見えてきた。
「森に入る前に休憩じゃ。慌てて入って怪我したら困るからの。」
そういうと、ポーチからふきんに包まれた何かを2つ取り出し、片方をおれに差し出す。なんだろ? 包みを開ける。パンにケルルとカーツが挟まれている。
「あ・・・カツサンドだ。」
「ん? サンデッチじゃ。」
軽く腹ごしらえをして、森に近づく。
”ブブブ~~ン” ”ブ~~ン” と音が聞こえてきた。なんだ?
「ビックビーじゃ! 頭を低くするんじゃ!」
頭上を何かが通り過ぎる。うわぁ、でけぇ。確かにビックだよ。
かるく30cmはありそうだ。それが森の方に飛んでいく。
「追いかけるぞぃ、巣の場所を見つけておくぞぃ。」
姿勢を低くして二人で見失わないように追いかける。速いよ。ビラ爺追いかけるのがやっとだよ。
「そこ、足下に気を付けるんじゃ。」
言われて気づく、足下に草に隠れるようにして50cmほどの大きさの穴が開いている。深そう。こんなのに落ちたら。間違いなく怪我をする。
「ほれ、あそこじゃ。」
指し示す方向を見ると、太さ3mはありそうな、朽ちた古木の
「あそこじゃな。春になったら皆で蜜を採りに来るぞぃ。縄を出してくれ。」
おれは
ビラ爺は縄を切って近くの木に巻き結ぶ。
「戻るぞい!」
そういうと森の外に向かっていく。戻る時は慎重に足元を確認しながら移動する。無事に森の外にたどり着く。ここでも、縄を切って近くの木に巻き結ぶ。
「ここら辺は、ビッグビーがおるから、バラ-ピカはいない様じゃな。移動するぞい。」
バラ-ピカ? どんな獣だ? そう思いながらビラ爺の
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「おっ。ここらへんじゃ。」
ビラ爺は足元を指さすと、そこには丸っこい糞が
「罠仕掛けるぞい。罠の袋出しとくれ。」
「この縄をこうして、治具に通してじゃな・・・・」
絶対一度じゃ覚えられない自信がある。
(自分、
と心の中でつぶやく。
「まぁ何度も練習することじゃ。帰ったらまた教えてやるわい。」
うん、完全に見透かされています。
そうこうしているうちに2か所。
少し離れたところにあった別の糞山の近くも2か所罠を仕掛けて、しばし離れた場所に移動する。
バラ-ピカ・・・どんな姿なんだろう。。
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ここでの”下処理”は ”単純に血の汚れ・皮の脂肪層(獣脂層)を落とすこと” をするだけです。最終加工は売却後に別の場所でされる想定です。
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