閑話3 サーブロ・ローク・ドージョー
私の名前は「
気が付いたら、いきなり白いコロシアムの様な場所にいた。
ついさっき、最後の客が帰って、自分の店の片づけをしていた。回収してもらうサーバーの空きボトルと炭酸ガスボンベを店の裏に出し、ポリバケツの生ごみを事業用のシールを貼ったポリ袋に入れて運んでいたはずだ。
どこだここは?
・・・ 中略 ・・・
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気が付いたら、森の脇を通る道の真ん中に立っていた。馬のいななきと罵声が聞こえてきた。
「てめえ!いきなり街道のど真ん中に飛び出しやがって!!馬車で
これが、生涯の親友。商人【デモシナー・ローク】との出会いだった。
行き場所のない私はなんとか彼にお願いをして、ラドまで送ってもらえることになった。
道すがらの会話で、デモナシーは帝国から食材を仕入れ、ラド近郊の開拓地に戻る途中だった。
食材! そう聞いた瞬間、私の五感がざわめいた。
「デモシナーさん、その食材を見せてもらえませんか?」
彼は渋りながらも、しかし自慢するように仕入れた食材を見せ始めた。
見た瞬間に名前こそ違うが、あの神とやらが押し付けてきた鑑定と言う能力のおかげで元の世界の食材との類似点が浮かび上がる。
「こんな食材は料理人として見過ごせない!!」
私はデモシナーを拝み倒して、今夜の野営地でこの食材を使った食事を作ることになった。
野営場所に到着すると、私はさっそく下ごしらえに入った。右手を突き出して、使い込んだ愛用の和包丁を召喚する。
まず、デモシナーが仕入れてきたコーブという名前の乾物、その表面を軽く水拭きして手のひら大に切り、
その間に、キャロを指2本分の厚さで輪切りにし、皮をむいて面取りをする。もちろんこの時に出た皮や面取りした切りくずは次の使い道があるので捨てない。
別の鍋を召喚し、切ったキャロの断面にかるく十字の切り込みをして下茹でをしておく。
なじませたコーブの入った鍋を中火になっている
コーブの
その間に、キャロの皮を面取りした部分と同じような太さで切りそろえ、軽く水にさらす。
先ほど
中華鍋を召喚、強火で加熱する。薄く煙が出てきたら、マーゴの油を引いて、キャロの皮・細切りのコーブを入れさっと炒める。いろいろと凝った味付けをしたいが、今回は細かくした岩塩を中華鍋の80cmほど上から平均に掛かるようにパラパラと振り掛け、仕上げる。
キャロのコーブ
いっちょう! あがり! 召し上がれ!!
コーブ
「ふぉぉぉぉ!!! この繊細な旨味と、力強いキャロの甘味。」
今度はきんぴら炒めを一口。
「ふぉぉぉぉぉ!!! 普通なら捨ててしまうキャロの皮、そして茹でたコーブの千切りと油の完璧な相性。こんなに旨いものは人生で初めてだ!!!」
茹でたコーブじゃなくて、
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その野営地の食事の後、互いの理想を語り合った二人は新たな商会を立ち上げることにした。
ラドに戻ってくると、
登録名は
「ローク・ドージョー食品商会」
”ローク・ドージョー食品商会” 名義で、”カラーゲ”・”カーツ”・”コノーミヤーキー”・”ヤーキソーバー”・”ネポリタン”・”サンデッチ”・”サーシミー” 他、様々なレシピを登録。さらに「サーブロ・ドージョー」として多くの弟子を抱え、育て上げた。
商会長のデモシナー・ロークも新たな食材を求めて、日々西へ東へ北へ南へ・・・
そんな中でずっと探していた ”メコー” を見つけた時には商会あげてのお祝いをした。
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しかし、 ”メコー” が簡単に手に入る状況となった今、抱えている不満が日々大きくなっていくのを抑えきれなくなってきた。
ある日、久しぶりに食材の仕入れから戻ってきたデモシナーに打ち明ける。
[私は、カレーが食べたい。]
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「私は、カーリを食べたい。」
そう言い残して、サーブロ・ドージョーは姿を消したと言う。
その「カーリ」とはどんな料理なのか? 現在も調査が続けられている。
その後の彼の消息ははっきりしていない。
一説には、「帝国南部から南大陸を目指した。」
また違う一説には
「北の大地に向かい、そこで生涯を閉じた。」
と言われている。
いずれにしても、彼の晩年の消息については確定的な情報がない。
あの知識と発想は余人をもって代え難い稀有な存在であったことは万人の認めるところである。
『
食文化研究員 アーサコ・キッシー の論文より抜粋。』
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