第20話 それを聞きたかった。

 ビラルさんの家に帰ってくると、二人でテーブルに座る。

 色々と話を聞いた。この世界の事とか、開拓団の事とか・・・

 そのおかげでようやく・・・


 まずは時間。一日は24分割。それを4つの括りでまとめている。

 簡単に言うともとの世界の【午前と午後】をそれぞれに分けている。

 ただし、季節によって二つに分けている時間は、を基準にで分割しているので、季節ごとに違ってしまう。

 トータルの一日の長さはほぼ同じ。・・・ちなみに食事は日の出後の朝飯と日の入り後の晩飯の二回が普通、日の長い季節だけ昼飯というかおやつを食べる。


 で、一年は364~365日で30日ごとに12分割+α。

 年の初めが元の世界でいう冬至、光が一番弱くなってもその後は光の勢いが増していくかららしい。

 冬至は一日別カウント、翌日から30日ごとにカウント。

 3か月ごとに特別な一日が設けられる。いわゆる春分・夏至・秋分に一日だけいて、+αの4~5日を消化していく。365日の時は、夏至の後に一日追加する。


 おれが来たのは、10月の後半で、奴ら鬼兎オーガラビットが繁殖に向けて荒食いしまくる季節の始まり。


 次に、スキル贈物ギフト加護かごの話。


 スキルは多かれ少なかれ、この世界の住民ならそれなりにすることができるがある能力。


 対して贈物ギフトは、この世界に生まれた時にられるな能力。

 基本的には【 スキル < 贈物ギフト 】 スキルの上位互換が贈物ギフトらしい。


 そして、加護かご。実はこれが一番な能力みたいだ。

 これを持つことで、元々あったスキル贈物ギフトが ”” 。

 あえて ”らしい” というのには訳がある、ビラルさんが知っている中では一例しかないそうだ・・・

 それが『』の立役者【】だという。


 ちなみにビラルさんのスキルは、[隠密][狙撃][拘束]三つだって。

 その話の流れで、ビラルさんの昔話を聞いた。なんと、元騎士団の斥候隊隊長だったんだって、もうびっくりだよ。

 例の〔7年前の魔獣討伐作戦〕で妹のアリーシアさん(副隊長)と先行偵察していたんだって。その時に、妙な魔獣の痕跡を見つけた、だけどその奥を偵察するのを優先した。結果、バルゴさんの率いる分隊ではが死亡、が騎士としては働けない体になった。他の分隊にも大きな被害が出たそうだ。

 責任を感じたビラルさんと妹のアリーシアさんは後進に道をゆずり引退。引退した後に団長の話を聞いて即、開拓団への参加を決めたんだって。


 そういえば、おれが寝てた部屋は、元々アリーシアさんの部屋だったという。


 いろいろ聞いているうちに、だいぶ時間が過ぎた。でもこの世界にきてまだ一日とちょっと。


「ビ~ラ~ぃ~! ソーヤ~! ドア~あ~け~て~!!」


 ドアの外から元気な声が響く。ドアを開けると、ガルゴとカーラが居た。


「あのね「ねー」、とーさんとおかーさんが、晩御飯一緒に食べよーって言っ「てるー!」」


 相変わらずの微妙なハーモーニーにほっこりする。

 そういえば団長がガルゴ君を騎士団に連れていくとか言ってたな。ガルゴ君は10才だったっけ、向こうでは小学校4年生か、リトルリーグとかにそろそろ入れる年齢か・・・れたあちらの子供とは・・・いかん、いかん。比較して何になる。


 でも、そのうちに野球とか教えてみようかな? 三角ベースがいいかな?


 人数的にキャッチボールくらいしか出来ないかもしれないけれど。鬼兎オーガラビットの毛皮の端切れでボールとグローブ造ってみるか。


 ・・・ 後年、ラドサ発祥の””あるいは””と呼ばれる世界で初めての球技が王国と帝国で定着。

 外交の一環としてが行われ、観戦に来た者たちを魅了する……ことになるとは、この時のソーヤは想像もしていなかった。・・・


 あたりが暗くなるころ、今度はガルゴ君だけが呼びに来た。

 カーラちゃんは高級な言い方をすると「カトラリーのテーブルセッティング」、まぁ、実質はお皿とかの食器の準備のお手伝いだってさ。


 ガルゴ君の案内でバルゴ家の食卓にお邪魔する。


 

 ものすごく豪華だ!!! おぉぉ。。メインはに千切りのケルルの上に鎮座する、鬼兎オーガラビットのとんかつ? うさぎかつ?

 付け合わせは樽型にして茹でてあるキャロと、これはオニオンリング!!(ニオラの輪切りを揚げたやつ)。

 間違いなくうまいに決まってる!!!


 テーブルの上の料理に目を取られている間に、バルゴさんが大事そうに抱えた壺から、バルゴさんとおれの目の前の少し小さめのコップに注がれる酒。


 なんだか黄金色? 琥珀色? で昨日のエールとは明らかに違う。


「おおぉ!のミードか!!」


 と、嬉しそうにビラルさんが声を上げる。


 ミードって、確か最古の酒なんて言われてた気がする。

 でも、ビックビー? やばそうな名前だな。


 皆が席について、お祈りを始める。この世界にも食事に感謝する文化があるんだね。と思いながら、おれも形だけ真似をした。

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