第19話 お仕事 決まりました。

 皆、目の前で一瞬にしてきれいになった鬼兎オーガラビットの毛皮に触れて確かめる。


「こいつぁスゲーな。血のりが全く残ってねぇ。しかも手触りが最高だ。こいつ1枚で銀貨何枚になるんだ?」


 目が ($)(¥) になってます。ザッカールさん・・・。


「毛が柔らかい。ゴワゴワしていないわ! これならいい毛糸が出来るわよ。うふふふふっ。」


 うっとりしながら毛皮をなでるベルナさん。


「解体と毛皮の処理は誰にも負けんつもりだったが、これはすごいのぉ。」


 ビラルさんは、おどろいたような、くやしいような顔をして・・・三者三様につぶやく。


 しばらく沈黙が続く。


「よしっ!ソーヤの仕事は、洗い物と洗濯。それと毛皮処理だ。手があいたら、ビラル爺と一緒に狩り、解体をやってもらう。 それでいいな! ベルナ! ビラル爺も。」


「「そうね!」じゃの。」


「ビラル爺。残りの解体はどれぐらいかかる?」


「そうさの、小一時間もあれば終わるじゃろ。」


「そいつの毛皮も、今日の所はここに持ってきてくれ。まだこの事を皆に伝えるのは早いだろうからな。」


「うむ。」


 ビラルさんは返事をすると、また解体作業に戻っていった。


「さて、ソーヤ。これからこの村で守るべき大事なことを教える。」


 ベルナさんが怪訝けげんな目でザッカールさんを見る。


「一つ、自分の仕事はこと。」


「一つ、何か問題が有った時は、をしっかりすること。」


「一つ、困っている奴がいたら、こと。」


 ・・・あれ、前世で俺も似たようなこと言ってた気がする。。。


「そして最後、これが一番重要だ!  俺の事は ”” と呼  」


   ☆彡 ス パ コ ー ン ! ★ ! ☆ !


 うん。ベルナさんが気配を消しながら、ザッカールさんの後ろに回り込んでたから、なんとなくわかってたよ。

 でもそんなに叩いたら・・・そのうち、せん作ってベルナさんに渡そう。


 …………その後、ラドクリフ辺境領ではラドサ発祥のせんが大流行したのは、また別のお話。


「持ってきたぞい。」


 ビラルさんが最後の毛皮も持ってきた。


「ソーヤ。やってくれ。」


 右手を出して  "たわし召喚!”  と念じた。

 今度決めポーズでも… かん…… いきなり目の前が暗くなる。


「あれ・・? なんだ?? また死ぬの?? おれ・・・」


 気が付くと、テーブルの脇に敷かれた毛布の上で寝ていた。心配そうに、おれを見下ろす3人。ザッカールさんがおれの顔を覗き込む。


「ったく、いきなり魔力切れでぶっ倒れやがって。おぇ、自分の魔力量わかってなかったのか? スキルの使い過ぎだ。」


 だるい。チョーだるい、まだ眩暈めまいがしている。そういえばザッカールさんがナイフ見てた時に言ってたな。鍛冶師がなんとかって・・・


「寝てろ。そのうち症状が治まるから少し休んでろ。

 そのままでいいから話を聞け。」


 そう言って話を続ける。


「おぇのは、魔力切れの典型的な症状だ。

 家の中だから良かったものの、戦場いくさばとか狩り場でやらかしたら命がいくらあっても足りゃしねぇ。

 もっとも、おぇのスキルは全く戦闘向きじゃね無ぇけどな。」


 うん。知ってる。いったい "たわし”で、何と闘うっていうのさ。でも、さっきのトイレ掃除で魔力切れじゃなくてよかった。いろいろと洒落しゃれにならない状況になったかもしれない。


「じゃあ、こまめに確認しろってことですね。」


「ん? ? なんじゃそりゃ?」


「え? 念じると目の前に浮かびますよね。ステータス…違うの?」


「ステータスが何かはよくわからんが、冒険者協会ギルドや騎士団でしてもらうか、金払って ”簡易鑑定器” を借りて自分で調べて魔力消費量確認するんだけどな。」


「もしかして、おぇ!!も使えるんか!!?」


 ザッカールさんを見つめて、と念じてみる。何も出てこないな。やっぱり他人は見れないのが普通じゃないかな?


「今試しに、ザッカ…団長のを見ようとしたんですけど。駄目ダメでした。たぶん自分しか見れないようです。」


「そうか、残念だな。もうすぐバルゴの息子がなんだが、やっぱりラドの騎士団まで連れて行かなきゃダメか。」


 話をしている間に、ようやく眩暈めまいが治まってきた。


「すみません。心配させてしまって。もう大丈夫みたいです。」


「あぁ、良かった。今後は気を付けるんだな。その毛皮の処理はビラル爺にやってもらうから」

 

「今日はもういいぞ。もうじき晩飯だ。とりあえず爺と一緒に家に戻って休んでろ。ビラル爺。まかせていいな。」


 そういわれて、ビラルさんが頷く。


「じゃ、帰ろかの。立てるか? ほれ。」


 と言って、手を差し伸べてくれる。大丈夫みたいだ眩暈めまいは治まっている。ビラルさんが毛皮を持とうとしたけど


「僕が持ちます。」


と言って毛皮を抱えて、一緒に帰った。


 でも魔力量か・・・こまめにステータス確認するしかないかなぁ。

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