第18話 わたしとたわしのおはなし

 死んだ鬼兎オーガラビットの様な目をしたザッカールさんと、対照的におれの右手にあるたわしをキッラッキラした目で見ているベルナさん。これ送還してないから、なってるやつです。触らないようにね。


 たわしを送還して手から消すと、ベルナさんがめるような目つきでおれをにらむ。


「あの、戻ってから話しますから・・・」


「あ・・・・あぁ、そうだな。戻ってから落ち着いて話そう。」


 まだこちらに戻りきっていないね、ザッカールさんは。


 ザッカールさんの家に戻り、揃ってテーブルに座る。二人の視線が・・・ちがうな、実質一人の鋭い視線・・・が刺さる。


「ねぇ、ソーヤさん。?」


 言葉に威圧いあつ混じってます、ベルナさん。


「じゃぁ、このスキルについて、でお話します。正直、まだ何が出来て、何が出来ないかよく解っていないんですけど。」


 そう切り出して話し始めた。


「ザッカールさん・ベルナさん。神様と会ったことはお話ししましたよね。その時に頂いたんです。このスキルは・・・」


 TFPっぽいあれとかの話ははぶいて話を進める。


「で、送り出された時に、只 ”たわし” というだけで全く説明もなく使い方も全然わからなかったんです。」


「昨日、鬼兎オーガラビットと闘った時に、返り血で汚れて泥だらけになってしまって、バナソ川に入って汚れを落とそうと・・・・」


 そこから、川で汚れを落とそうとしてた時に思い付きで念じたら ”たわし” が召喚されたこと。


 その ”たわし” で汚れをこすったらみにもならず、きれいになったこと。


 冗談で乾かそうと思って服をこすったら、本当に乾いてしまったこと。

 血まみれの鬼兎オーガラビットの毛皮もきれいになったこと。

 砂や石に付いた血も消えたこと。

 "たわし”は常に清潔な状態で召喚されること。すべて話した。


「さっきのアレ見てなきゃ信じられん話ばかりだな。」


「で、今朝はルーミアの洗い物の手伝いをその  ”たわし”  でしたのね。」


「えぇ、かなり驚かせちゃったみたいですけど・・・。」


「ねぇ、ねぇ! 明日も洗い物手伝ってくれない?

 私が当番なの。うふふふっ。」


「ベルナ! おぇそれが言いたかったのか!」


「やーねーぇ。私が楽するだけの為に言ったわけじゃないわ。これからどんどん寒くなって水も冷たくなるのよ。

 食器の汚れも落ちにくくなるし、手はあかぎれができるし、ほんと大変なんだらぁ。」


「食事作る時もお野菜洗うのに冷たい水使うのよ!!」


「お洗濯だって使うのはなんだから!!!」


「いいわよね!! 洗い物しない、は!!!!!」


「明日から、あなた達がやってくれるの?

 それならいいわよ別に。・・・クドクド・・・・・・ 」


 うわぁ。なんか途中から日頃の鬱憤うっぷんが噴出している。。


「わかった!わかった!俺が悪かった!! ベルナにはいつも感謝してんだ。」


「ほんと? い~っつも、そうやって誤魔化して。」


「そんな事は無い、こんな俺に20年もついてきてくれてるんだ。感謝してないわけがないだろ。」


「ほんと? ほんとうに?」


「俺はおぇと、一緒になる時に誓った言葉を、今でも一言一句、間違わずに言える! 愛してるよ ベルナ (キリッ) 」


「私もよ、愛してるわ ザック」


 ここは砂糖工場か! 目と耳から砂糖が入り込んで、口と鼻からシロップを垂れ流しそうだぁぁぁ・・・。すみません退室許可いただけませんか?


 おれの目が黒目だけになって眺めていたのに気が付いたのか、ベルナさんが口を開く。


「じゃあ、ソーヤに手伝って貰うのは決定でいいわね。ザック。」


「あぁ。わかった。ソーヤには、洗い物と洗濯を手伝って貰う。 でいいんだな。」


 なんでそこでベルナさんに同意求めるの? あなた”団長”でしょ。この時点でおれの中でベルナさんがに決定した。


「で、さっき鬼兎オーガラビットの毛皮がきれいになったって言ってたな。

 ちょっと待ってろ。」


 そういうと、家の裏で解体をしているビラルさんに声をかける。


「ビラル爺! 解体終わった鬼兎オーガラビットの毛皮持ってきてくれるか?」


「おぅ! わかったぞぃ!」


 返事があって、ビラルさんが解体したばかりで血の跡が残る毛皮を持ってきた。


「ビラル爺、これから見ることは他言無用にな。」


「うむ。」


「ソーヤ。やってくれ。」


 おれは右手を突き出して "たわし召喚!” と念じた。目の前で堂々と召喚したのは初だな。


「すいません、桶に入れたお水お願いします。たわしが浸かる程度でいいですから。」


 ベルナさんが台所から持ってくる。


 たわしに水を含ませると、血のりが付いた毛皮の表面を軽くこすった。


「「「 !!! 」」」


 3人の目の前で一瞬にして、血で汚れた毛皮がきれいになった。

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