第17話 大自然が!おれを呼ぶ!

 今のおれにとって、一番説明しずらい話だ。 何しろ、おれ自身がこの力の事をほとんど理解していない。現時点でこのスキルの能力でわかっているのは・・・


 ① 水をつけて擦れば、ほぼどんな汚れも落とせる。

 ② 水をつけないで擦ると、対象物を乾かすことができる。


 ①は、服・毛皮・食器、河原の砂や石も全部問題はなかった。

 ②は試したのが今着ている服、”出来たらいいな”と思って試したら出来ちゃっただけ。その再現の確認もまだしていない。


 昨日の宴会・今朝の朝食、ザッカールさんの家で何杯もおかわりしたお茶…、おおぅ。

 がかかった。


「ザッカールさん、すみません。トイレはどこでしょうか・・・」


 そろそろ限界。


「共同トイレなら、その右の家の裏にあるぞ。」


 と、指で指し示す。


「すみません、ちょっと・・・いっ…て…き…ます!!!」


 指し示された家の方向に…下腹が力まないように、かつ、お尻を”キュッ”と引き締めて。早歩きで向かう。


 板張りの簡素な小屋が見えてきた。左右から通り抜けできるになっており、が4つ…扉の上下は30cmほど切り欠かれて、使っている人が居れば足が見え、臭気もこもらないようになっている。音はまるっと聞こえちゃうけどね。

 扉の正面は外から見えないように全面板張りの壁、上の方に小さな明り取りの開口が開いている。


 幸いなことに、一番手前の個室に人はいない。扉を引き中に入る。


 的に、桶をまたぐのかと思ったら、桶自体は見えずに木板の枠で囲われ、上にはいびつな楕円形の穴が開いた便座らしき板。


 ゆっくり観察なんかしている余裕はもうない。扉を閉めてズボン・パンツを下ろし座る。


「ふぃ~。間に合った。。ちょっと待て、紙持ってきていない。どうすんだこれ?」


 きょろきょろ見回すと、左側にビラルさんの家にあったものより一回り大きな水瓶とその上に柄杓ひしゃくらしきもの。


「水で洗えってか・・・。 葉っぱより全然マシだけどさ。。。」


 事後のことに安心して、改めてトイレの中を見回す。


「うわぁぁ・・・結構汚れているなぁ。

 この壁の黒い塊・・・うん。こ・れは考えちゃダメな奴っぽい。」


 スッキリした後、柄杓ひしゃくに水を取り、手を水で濡らし…意を決して。。。残った水でその手を洗う。


 パンツとズボンを引上げ、しばし考える。


「手でか・・だいぶ向うと衛生環境が違うよな。

 さすがに、ウォ〇ュ〇ット的なものは無いよね。これじゃ伝染性の病気が発生したらすぐ蔓延しちゃいそうだぞ。こまめに掃除するしかないのか?

 ぅむ~~。 "たわし召喚!” して掃除してもいいけど・・・そのたわしは再使用するのが躊躇ためらわれるな。」



 『…召…喚し……たわ…し…は常に…き…れ……だよ…』


 ん?? なんだ? 今の声?? 直接頭の中に・・・


 『…たわしは…召喚…する…たび…にきれ…にな…よ…』


 なんだ? 意識を集中する。。。


 『召喚する…たわしは…きれい…だよ……

   わたしは…清浄たわし…の女…神…だよ』


 このタイミングで、なのかぁ~ぃ!! 一応、感謝をしておきますか。


「ありがとうございます、清浄たわしの女神様。」


 『…料理の神…とく…ら…べたか…ら…

  もう…ぷんぷん…なんだ…から…ね…

  つかれ…た…から……また…ね…』


 今の神託を簡単に言うと  "たわし召喚!”  するたびに現れる たわし は常に清潔ってことだよね。召喚したまま使い続けなければ問題無いってことだよな。



「やるかぁ!!  我が手に顕現けんげんせよ!!!

  その清浄せいじょうなる力 でよ!!

  "たわし召喚!!”」


 意味はないが、他人に聞かれたらな掛け声で召喚 した、たわしを右手に持ち

  ・・・水瓶と柄杓ひしゃくをゴシゴシ!

  ・・・扉と取っ手をゴシゴシ!

  ・・・便座と周囲をゴシゴシ!

  ・・・トイレの壁をゴシゴシ!


 指さし確認!


「水瓶ヨシ!柄杓ひしゃくヨシ!扉ヨシ!

 取っ手ヨシ!便座ヨシ!壁ヨシ!  "たわし送還!” ヨ~シ!!」


 終了。次だ!!隣の個室に突撃!!!


 指さし確認!


「使用者不在ヨシ!! "たわし召喚!”ヨシ! 作業開始!」


 ・・・

 ・・・

 

なんだかんだで、最後の


 "たわし召喚!”ヨシ! よっしぁ!やりますか!!


「で、おぇさんは何をやるつもりなんだ??」


 後ろから、ザッカールさんの声。恐る恐る振り返る。 いや、その顔じゃ怒ってるのか? 怒ってないのか? そもそも判りません。


「うそぉ・・・なんでこんなにきれいなの?」


 ザッカールさんの後ろから来たベルナさん。目を丸くして絶句している。


「少し汚れてたんで、ました。 てへっ。」


「「!」!」


 二人が叫び声がトイレの中いっぱいに・・・。よかったよ。匂いじゃなくて。


 説明するよりも、見てもらった方が早いだろう。と、おれは黙々もくもくとトイレの掃除をするのだった。

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