閑話1 世界と神々と・・・・

『ほっほっほっ、今回のあれはかなり危ない状態だったの。

 長らくあちらの輪廻りんねから零れ落ちてくる者たちを送り出してきたが、やはり擦り減った者たちが増えておる様だのぅ。』


『まぁ、これも約定の範囲内じゃし、あちらに干渉することも叶わんから致し方ない事ではあるがの。』


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 古来より、地球のある世界とそれ以外の世界では「あることわり」に大きな違いがあった。

 

 他と比べ、地球のある世界は魔法や魔力というリソースを極限まで減らし、代わりに、生命発生に多くを費やした。そのおかげで次々に生命が誕生してくる。

 そして生命が多く生まれてくることによって、他の世界よりも多くのこころ研磨しんかが起こる。

 そんな中、増えすぎた生命の弊害として輪廻りんねに戻れず、虚空を漂い消滅するものが出てきた。


 一方、魔法や魔力にもリソースを割いた世界は生命が生まれにくくなり、結果としてこころ研磨しんかが起こりにくくなっていた。

 命が生まれにくい他の世界にとっては、たとえ研磨しんか途中のこころであったとしても、それは大事に育むものであって無為に消滅させてしまうことなど見逃せるはずがなかった。


 そこで、地球のある世界とそれ以外の世界において互いに約定を結んだ。

・地球のある世界からは、輪廻りんねに戻れなくなったこころの譲渡。

こころの譲渡された世界からは、わずかばかりのリソースの提供。


 結果、リソースの提供を受けた地球のある世界ではさらに多くの生命が誕生して溢れ、ますます輪廻りんねに戻れないこころが増える結果となった。


 どちらの世界が、良いか悪いなどという事ではなく。

 ただ、そういった状況があるだけ。


--------------


『さて、次の世界の神々にこの場を譲るとするかの。

 長く居座っておったら文句を言われてしまいそうじゃ。

 皆の衆! もどるぞい!!』


 がやがやと神々が転生の間を後にして出ていく。


『100年ぶりなれど、さすがに多く渡しすぎたかの。

 衣服やマジックバックに使いすぎたわい。

 そのことも伝えるのも忘れてしまったが、まぁ良いじゃろ。

 次に呼ぶことができるのは、200年後ぐらいかの?』


 最後まで残っていた小さな女神に呼びかけた。


『そうじゃ、清浄たわしの女神よ。再生して間もない今の状態だったが、おぬしの使徒が出来て良かったの。

 おぬしがまた力をつければ、200年より前に呼べるかもしれんの。』


 にっこり笑って、コクコクと頷く小さな女神であった。


 そして2柱は虚空に開いた穴に入り消えた。

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