第2章 旅の始まり。 たわしと共に・・・

第5話 現状確認は大事だよね。

 取り合えず、現状確認。見渡す限り一面の草原。

 周囲には膝ぐらいの草が茂り、5mほど先に踏み固められた道がある。

 特に脅威になりそうな生き物はいないみたいだ。草原の向こうには山が見える。


 幸いなことに全裸ではない。

 転生の間で人型に戻った時には、麻? の様なちょっと硬めの繊維でできた服を着用していた。

 シャツとズボン、ボタンやベルトはなく、ひもで縛って止めるようだ。綿の様な素材のステテコっぽい下着も同じく縛るタイプ。


 靴は革製の編み上げブーツの様なタイプ。

 足にぴったりとフィットしていて、ブーツのソール部分は厚めの革を重ね張りしてあるしっかりとした造り。


 足元を見ると、昔の中学生が使っていた様な肩掛け鞄が落ちている。

 中身は・・・革のカバー付きのナイフ。

 カバーは縛って吊り下げるのだろうか? 腰に巻いても縛れるくらいの長い紐が2本付いていた。


 ナイフを引き抜いて眺める。材質は鉄っぽいけど。

 おぉ! なかなかしっかりした造りだ、片刃で刃渡り20cmぐらい。刃こぼれもないかな?

 握って振り回してみる。


 しゅぱ!しゅぱ!  右に左に刃を立てて振ってみる。

 意外と握り込んだまま、刃の向きを変えるのは難しいな。

 でもなんか楽しいぞ! 思わず口をついて出る。


「オラオラオラァ~~~!! かかってこーい!!」


 顔がにやける、にやけてしまう。誰か見ていたら、こう思ったかもしれない。


「ニヤついて奇声あげながら、ナイフを振り回している ”危ない奴” がいる。」


 ナイフをカバーに納めて、その革カバーを腰に結びつける。

 他に何か入っていないかと鞄の中をあさる・・・

 取り出してみると、手ぬぐいっぽい布と小さな革袋。

 革袋を持った感じは・・・ もしかして! 急いで中身を確認。


「銀貨だ! えっと、6枚。」


 お金まで用意してくれていた。


「転生の神様。ありがとうございます!!」


 100円玉より一回り大きい銀貨、貨幣価値がわからない。人里についたら早急に調べないとな。あと、脅されて巻き上げられたり、盗まれたりするかもしれないから、1枚だけは靴の中に隠しておこう。


 武器とお金。これだけでかなり不安な気持ちが取り除かれた。


 さて、人里を目指すか。


 転生の神様の言葉通りに、太陽を背にして歩き始める。

 道には馬車のわだちらしき跡がある。運が良ければ誰かと出会うこともあるかもしれないな。ちゃんと言葉が通じるかな?


 1時間ほど歩いたが、地面がむき出しで舗装された道じゃない。なのでさすがに疲れてきた、しかもちょっとした上り坂。

 左側は山とその裾野にかけて森になっている。

 ここまで休憩なしで歩いてきたので喉が乾いてきた。何処か休める場所がないかと思いながら歩く。


 上り坂も終わり、少し見晴らしの良い場所に出た。道の先を見ると遠くにぽつぽつと家らしきものがある。下りきる少し手前にきらりと光る何かが・・・

 川だ! 水がある! もう少しだ・・・


 しかし、この時忘れていたことがあった。

 水場には生物も近寄ってくる。ということは、この世界の他の生き物に遭遇する可能性が高い、当然その中には危険な生物もいると言う事に。

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