レディの告白
ヴィンセントはドア前、ドクターは窓際に移動した。
「今のところ、全員掃けている状態だな」
「足音や気配はないですね」
「こちらもテラスや下の部屋、庭など目視内では確認できませんね」
「聞き耳を立てられなければいい。俺は寛いでいるフリをしておくから、2人で話せ」
フリ? いや、買って知りたる我が家並に寛いでるようにしか見えないが?
「……聞かれてもいいですわ。お知りになりたいことをお聞き下さい、カナリアさま。わたくしは貴女を待っておりましたから」
「ボクを待っていた? 」
「はい、2回目の貴女の機転で。会話、亡くなられた方への表情など終始おなじ行動を取られた。監視に気がつかれていた証拠ですわ」
「どうして……」
「説明すると長くなるのですが、貴女はお父様の名前を出さなかった。普通ならばお父様を気にかけますわ。公爵令嬢ですもの」
「いや、そこは。一回目で公爵に内緒でいらしているだろうと思ったので。まあ、手紙があったからですけどね。意図を考えたかったもので。でも、確信に変わりましたよ。あの手紙を書いたのは貴女ですね? 」
「な、ぜ……」
「誰よりもボクは……ロバートという男を知っているからですよ。婚約者でしたから」
「───?! ああ、なんてこと! ごめんなさい! 助けられなくて! カナリアさまの大事な方だったなんで……」
対面のソファから崩れ落ちる。
咄嗟にテーブルに足を乗せ、レディの方を掴んで支えた。
止めどなく流れる涙を拭いもせず、ガタガタと震えながらボクを見上げている。
ボクはハッとした。
……精神状態はよくない。自制心を持ち合わせているだけだと気がついた。
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