異常な空間
部屋に通すということはやはり、正気のときがあるようだ。
安心して聞くのを放棄できる。
……兄さんは話が長いからな。
嘘がつけないから少しヒヤヒヤするが。
ボクの目にも柱に隠れきれていない使用人や、廊下で立ち話しているフリをしている使用人、不自然に廊下の角にいる使用人は目視できる。
兄さんは他にも知覚していることになる。
確かに異常だな。
これだけ監視されているならば、外出時もそこかしこに使用人が紛れていておかしくない。
事務所にいても気が気じゃなかったろう。
果たして彼女はこの状況を把握できる精神状態であったか、気になるところだ。
それにボクはレディに他にも確認したいことがあった。
嗚呼、あとは明らかに何かを隠している。
……憶測が独り歩きするじゃないか。
恰もレディが正気になる瞬間を見逃すまいとしているような。
───コンコン
『はい』
レディの声が中からした。
「お、王太子殿下がおまえに会いに来て下さった。お相手するように」
『?! わかりましたわ』
───ガチャリ
顔を出したのは、無表情のレディだった。
「やあ、君がレディイザベラか。俺はシャルロット・ボーデンブルグだ。安心せよ、ひとりではない。
「お初にお目にかかります、殿下。……いもうと? 」
綺麗にお辞儀したあと、
「……! カナリアさま! 」
ボクを見て、感情ある表情が零れた。
「し、失礼致しました。まさかカナリアさまが殿下の妹君でらしたとは知りませんでしたわ」
声を荒らげたことを詫び、ボクだけを縋るように見つめている。
ボクの見解は間違っていなかったようだ。
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