カナリアとロバート

「盗まれないようにすることが大前提。しかし、まだ回避策もない。……本音は個人的だ。ロバートを渡すわけにはいかないから」

「警部愛されてるなぁ、イイなぁ。俺も……」

だからな」


空間が一瞬にして凍りついた。


「え? 待ってよ、俺初めて聞いた」

「そのようなご関係があったとは……。大変申し訳ありません」

「なんで謝るんだ? 」


……たまに常人の機微がわからなくなる。


親友パートナー相棒パートナーで、婚約者パートナーだっただけだ」

「だけって何よ? 」

「お互いが都合がよくて、お互い傍にいることが当たり前な存在、と言えばわかるだろうか? 」

「……理論、でしょうか。元々はアダムとエバ説から来たとされていますが、極稀な症例のため、あまり知られてはいません」


ヴィンセントはイマイチ理解できないのか、首を傾げている。


「アダムとエバ説ってなんだ? 」

「『エバはアダムの骨から作られた』という一節があります。エバはアダムの一部とされるお話ですね。翻訳によっては、アダムとイブですが」

「それだと子どもみたいな話だな。最初の男女の仲だったわけだろ? 」

「ああ、アダムのパートナーとしてエバを作ったと記されている。聖書というものはそもそも教典、教訓みたいなものとして捉えることが多く、そのままの文章で捉えることは難しい」

「今の時代で枠に填めて捉えるならば、奇異的な、不思議な症例が多く記されていますからね。受け入れ難い表現や事例ばかりです」

「理解するには身近なものと照らし合わせる必要があるってことだ。元来感覚的な受け入れをするものではあるけれど」


ほら、脱線した。

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