ちょちょぷりあん

椎茸仮面

ちょちょぷりあん

 東京で平凡な会社で平凡な業績を残し、平凡な業務時間働いている田舎の両親から私にある物が届いた。


 ちょちょぷりあんという生き物らしい。

 ダンボールの中に夏祭りの金魚を入れる袋に小さな紺色の10円ガムの様だ。

 基本的に流行に疎い私なのだが両親はもっと疎いと思っていた。


 しかし、調べてみると最新の流行トレンドとして老若男女問わず大人気だと言う。

 食えるのか?と思ったが愛玩用の生き物らしく、ちょっとびっくりした。

 ダンボールにはちょちょぷりあんの他にも、色々と飼うためのセットがある程度揃っていた。

 かなり赤字の私にとってはありがたい。

 そして遠足のしおりの様なちょちょぷりあんの飼い方もあった。

 この字を見るにお父さんが書いたらしい。

 中々強い筆跡だな。

 私はとりあえず同梱されていた水槽に同じダンボールに同梱されていたミネラルウォーターを注ぎ込み、そこに水槽の浄化装置を設置した。


 なんでミネラルウォーターなんだと疑問に思ったが、意外にもデリケートらしく、水道水だと成長が良くないらしい。


 そもそもこいつはどうやって成長するんだ?

 よく分からんが餌は野菜で良ければなんでも良いらしい。

 試しにキャベツを食べさせてみた。

 食べる、と言うよりかは取り込むの方が近い食べ方をしていた。

 なんだこいつキャベツウニか?

 まぁ排泄もそんなにしないと言うし、このまま育ててみるか。


 そんなことで2週間が経った。


 ちょちょぷりあんは少し大きくなり、マリモほどの大きさになった。

 こいつ食えるかな?と考えたが、調べてみたら食えないらしい。

 まぁこんな紺色の玉食おうと思わないよな。

 色んな野菜を与えて見たが、なんやかんやでキャベツが一番食べてくれている。

 毎日3枚、キャベツの葉を与えるのが日課となっていた。


 そして1ヶ月後。


 ちょちょぷりあんに変化があった。

 毛が生えてきたのだ。

 下に垂れているのでなんか変だが、それもまた可愛さのひとつなのだろうか。

 その毛を使うこと無く、キャベツをまた取り込んだ。

 なんか最近、ちょちょぷりあんばっか見てるな、私。

 仕事でもちょちょぷりあんの話を同僚としている。

 少しだけ、私の人生に色が着いたように思った。


 こうして、3ヶ月の月日が経った。

 ちょちょぷりあんは私の生活の支えとなっていた。

 仕事で失敗しても、ちょちょぷりあんがいれば明日がんばろうと思える。

 キャベツを取り込むちょちょぷりあんの姿はもう一生見ていられる。

 ああ、ちょちょぷりあん。

 あなたは何故そこまで愛おしいのだろうか。

 ビールを片手にちょちょぷりあんを愛でていた。


 翌日。

 いつも通りの朝で朝日を浴びて、朝食を済まし、部屋を出ようとした時、何かが足に引っかかるのを感じた。

 なんだろうと軽く足を振るが、なかなか解けない。

 足を見ると、足首に触手が絡みついていた。

 それを辿ると、それは。

 ちょちょぷりあんの水槽に繋がっていた。

 伸ばしていたのだ、ちょちょぷりあんが。


 どうしたのだろう?

 私はちょちょぷりあんの水槽に近づいた。

 すると、ちょちょぷりあんは数本の触手を私の方に伸ばしてきた。

 甘えているのかな?

 なんて可愛いんだろうか。


 すると、ちょちょぷりあんは私の顔を触手でペタペタと触り始めた。

 そんなに私が好きなのね。

 良いよ、愛は十分伝わった。

 そして触手は鼻や耳、口などに侵入を始める。

 不思議な事にそれにそこまで抵抗感は無かった。

 むしろ、

 ああ、気持ちいい、愛するちょちょぷりあんが、私の中へ、中へ……中へ……nか……na……



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