ハリボテ

「あなたは幸せそうでいいね」


誰かが私にこう言った


「あはは」


乾いた笑いが辺りに響く


笑顔を浮かべながら、

「ああ。目の前のこの人もまた、上辺だけを見て判断するのか」と

静かに、そうジャッジを下した。


そして脳裏には

出会ってから今までの出来事が

走馬灯のように駆け巡る


ねぇ、なんでこうなっちゃったのかな


出会った時が違かったから?

勢いで先へ進んだから?

本来ならこのまま結ばれるべきではなかったから?


一番近くで支え合う存在のはずなのに

今では世界で一番遠い存在


「一緒に幸せを築いていこう」


その言葉と共に

指を彩る眩い光

そして互いの弾けんばかりの笑顔


あの言葉は

あの光は

あの笑顔は


今はどこへ行ったのだろう


テンプレの様な道筋を歩んでいるが故に

周りからは順風満帆な姿に見えるのかもしれない


でもね


その中身は今や空っぽ


いつしか互いを尊重する気持ちはなくなり

残ったものは相手への不信感と嫌悪感


愛の言葉は次第になくなり

代わりに浴びせられるのは言葉の刃と物理的な攻撃


ねぇ、聞いてもいい?


その実態を知ってもなお、

「幸せそうでいいね」と

そのセリフをもう一度私に向かって言えますか

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