想いの色

井上 幸

【短編】想いの色

 絵画のような一瞬だった。

 蝙蝠こうもり天井の下、慎ましい祭壇の前にひざまずく少女が一人。

 天窓から降り注ぐ柔らかな光が、赤や金を帯びて彼女の横顔を優しく撫ぜる。固く結ばれた両の手に押し当てられている口もとが、想いの強さを表しているようで息を呑む。


 時が止まったような静寂の中忍び寄る冷たい風に、ほんのわずか白く吐息が漏れた。伏せられていた彼女のまぶたがゆるりと持ち上がり、振り向いた瞳が僕を捉えて夢から覚めていく。

 やがておっとりと微笑みを浮かべた彼女に、何に祈りを捧げていたのかと開きかけた無粋な口をぎゅっと結んだ。


 今この胸に宿った鼓動に色があるならば、彼女を彩る柔らかな光とはまるで違う、闇夜に揺らぐ炎のあかが似合いだろうか。

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想いの色 井上 幸 @m-inoue

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