第80話 バレンタインデー
今日は、バレンタインデー。
だけど再来週、二次試験。 大学受験の、大切な日。 楽しみは、来年に持ち越し……。
「先生、こんにちは」
「こんにちは。 どうぞ」
いつもの、保健室。 放課後。
いつも、冬は暖かくて、加湿器もついていて、快適。 なんだけど……。
「な、なんか、今日の保健室、寒くない? もっと、あっためたらいいのに」
先生は、座っていた背もたれ付きの椅子を、私に譲ってくれる。 やさしい。 好き。
椅子には、先生の温もり。 大きな膝掛けも、貸してくれる。
先生は、キャスター付きの小さな丸椅子に掛け直す。
「今日もチョコレートをいくつか、貰ってしまって。 あんまり暖かい部屋だと、良くないかなって」
低い棚の上を、指差す。 高級チョコやかわいいお菓子、おしゃれな紅茶なんかの紙袋が並んでいる。
チョコに、やさしいじゃん。 私はあげてないのに。 いつの間にかとんがる、私の唇。
「何個もらったの。 先生」
「去年より、少なくてよ」
ごまかそうとしてる。 先生、くるっと向こうを向いちゃって。 私は、椅子ごと先生の方に回り込み、顔を覗き込む。
「な、ん、こ?」
先生は、目を逸らしながら答える。
「二十八個……? かしら?」
にじゅっ……。 そ、そんなに、校内にライバルがいるの……? クラッとする。
「皆、私で練習してるのよ。 本命さんにあげる時に、緊張しないようにって。 きっとね」
そうかなぁ。 少なくとも一粒いくらで売ってる高級チョコは、本命だと思うけど。
「私だって、もらったもん。 ふたつ」
「まあ。 素敵ね。 じゃあ、私がもう一つあげるから、みっつね」
まあ、ひとつは、ママだけど……(もうひとつは、ケイ)。
先生は、外国のチョコがいくつか入った、きれいな袋を握らせてくれる。
「かわいい。 でもこれ、みんなに配る用のやつでしょ」
嬉しいけど。 おしゃれだし、嬉しいけどさ。
「あら、鋭いわね」
先生は、私用のカップに紅茶を淹れてくれる。 蒸らしている間に、かちゃんと鍵を掛けてしまう。
「ほんとは、やりたかったわね。 バレンタインのチョコレート交換」
キャスター付きの椅子をくっ付ける。 先生は私のスカートを少しだけまくって、腿に手を置く。
「手、冷たいね」
「あなたは、暖かいわね」
ちゅ、と唇をくっ付け合う。
「あのね、私も、バレンタイン、あげたかったな…」
先生は、首をふりふりする。
今年は受験生だから、ほんとに直前だからって、私たちはバレンタイン、やらない事にしたんだ。
去年はガトーショコラを焼いて、持ってった。 先生はとっても喜んでくれて、ホワイトデーに、かわいい缶に入ったクッキーをくれた。 缶はもちろん捨てられなくて、先生がくれたハンカチとか、一緒に買ったちっちゃいマスコットとか、リップとか、そういう物を入れている。
「私だって、おいしいの、作れるのに。 先生にバレンタイン、おいしいやつ、あげたいのに」
プレゼントをあげた子達が、羨ましい。 私も、先生にありがとうって言われたかった……。
「もう。 やきもち焼きね。 あなたがお菓子作りも上手なの、知ってますよ」
とんがった唇、むにゅっとつままれる。 どうせ、やきもち焼きだもん。
「むむ。 むむむむ。 む」
「ふふ。 かわいい」
つままれたまま、今度はほっぺたにキスをもらう。 耳のそばで、先生は、やさしくささやく。
「バレンタインじゃなくたって、おいしいの、いつもくれるでしょう。 夕陽は、全部美味しいんだから。 手の指も、唇も、足も、あそこも、全部」
そうやって、私が喜ぶ事を言う。 ほんと、好き。 大好き。
「そんな事言われたら…… 食べて欲しくなっちゃうじゃん」
私は、ベッドに座り直す。
「ちょっとだけ。 学校だから、ちょっとだけ、ほしい……」
「もう。 先生を何だと思ってるの」
先生、隣に来て、スカートの中、探ってくれる。
「えへへ……。 私のことが大好きな、私だけの先生。 私だけえこひいきする、悪い先生って思ってるよ」
先生はおでこにキスをして私を押し倒し、パンツの中、人差し指を差し込んでくれた。 こわい顔を作って、えこひいきする、悪い先生よ……って言いながら。
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