第53話 お土産

 三日間。 先生が二年生の修学旅行に付き添いで行ってる、三日間。

 長かった。

 でも、退屈はしなかった。

 先生が貸してくれた、ふるえるタイプの、おもちゃのお陰で。

 そして、思い知った。

 これは絶対、借りちゃいけないやつ……。 少なくとも、受験が終わるまでは。



 一日目。 いつものように、先生の事、考えて。 先生に意地悪される、妄想して。 そろそろ使ってみようかな、って当ててみたら、すぐ、いってしまった……。 そして、結局、四回した。

 二日目。 ママが夜勤でいないから、ふるえるパワーを一番強くして(音うるさい)、しまくった。 お猿さんにこれ渡したら、まじで、ご飯食べずにし続けるだろうなって思った。 五回した。

 三日目。 先生は、もう旅行から帰ってきてる。 学校では会ってないから、今日まで使っていいと解釈。 ちくびなんかにも、当ててみたりして……。 てへ。 

 おもちゃの公式サイトを見たら、一八歳以上ですか?って聞かれたから、ドヤ顔で「はい」をクリック。 当てるだけじゃなくて、ちょっと中に入れてもよいという情報を得て、ちょっとだけ、いれる。 すぐ、いく。 五回した。



 そして、金曜日の夜。 ママにちゃんと断って、先生の家に、泊まりに行く。 服も下着もパジャマも、先生のマンションに置いてあるし、勉強道具はいつも、通学リュックに入ってる。 

 学校が終わったら、図書室で勉強して、先生と帰り、待ち合わせる。 水色の、フランス車で。

 学校から少し離れた郵便局の駐車場で、先生を待つ。 前は、先生達の駐車場で直接待ってたけど。 さすがに、誰が見てるか分からないし。



「お待たせ」

「ううん。 待ってないよ。 アプリで、勉強やってた」

「偉いわ。 乗って」

 助手席に、乗り込む。 乗ってすぐ、キスする。

「会いたかったよ。 先生。 大好き」

「私もよ」

 ちょっとだけ、唇をくっ付けてから。 先生のマンションに、向かう。

「お夕飯、なにかな」

「シチュー、作っておいたの。 白いシチュー。 好き?」

「大好き! 嬉しいな」



 シチューはほんとに、美味しかった。

 先生のご飯、いつも、美味しい。 シチューと、パンと、サラダ。 先生は、ワインも。 デザートには、ちっちゃい高級アイスが出てきた(うちでは、大晦日だけに食べていいやつ)。

 食べ終わって、猫脚のソファで、膝枕をしてもらう。

「お土産、買ってきたわ。 八つ橋、堅いもの。 あぶらとり紙。 リップクリーム。 それから、お守り」

「そんなに? 嬉しいなあ。 ぜーんぶ、嬉しい」 

 先生はかがんで、頬っぺたにちゅっとしてくれる。

「お守りは、縁結び。 夕陽と志望校、御縁がありますように。 私と、ずうっと一緒にいられますようにって」

「おりえちゃん。 ありがと……」

 


「ねえ、玉手箱、開けた?」

 くすくす笑いながら、先生が聞く。

「う…うん。 あの、すごく、何回も、使っちゃった」

 恥ずかしくて、もじもじ、答える。

「気持ち良かった?」

 もう。 分かってるくせに。 私はちょっと、むきになって答える。

「すっごい、良かった。 もう、借りない。 癖になっちゃいそうだから」

 唇、とんがってしまう。 

「ふふ。 可愛い。 正直ね」

 先生はまたかがんで、キスをくれる。 今度は、唇に。

「私もね。 三日間、寂しかった。 夕陽に会えなくて」

 私の顔を見つめながら、そう言ってくれる。 どきどきする。

「今日は、いっぱい、しましょうね。 あなたは三日間、楽しかったかもしれないけど。 私、ほんとのお預けだったんだから」

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