第52話 去年の今頃


 日曜日、先生の家で、勉強して過ごす。 

 勉強して、えっちして、ご飯食べて。 えっちして、勉強して、ちゅーして。

 帰りに、うちの最寄り駅まで車で送ってもらう。 そこから、自転車で家まで帰るから。

「明日から、三日間も会えないなんて」

 私は、車内でぶーたれる。 先生は明日から、二年生の修学旅行の付き添いだ。

「去年は、一緒だったでしょう。 具合が悪い振りをして、たくさん、二人きりになったわね」

 そう。

 去年は、「新幹線で酔うから」って、席を隣にしてもらって(先生の悪知恵)。 

 京都に着くまでの二時間、ずーっと、腿を撫でられて(悪い先生)。 

 着いたら、とろとろでもう立てなくなったから、班別行動、行けなくて。 先生と二人だけ、先に宿泊先のホテルにいって、めちゃめちゃえっちした(信じられない)。

「日本中で、あんな修学旅行の思い出、私だけだよ」

「あら。 きっと日本中探せば、他にもいますよ。 頭のおかしい、エロ教師」

 自分で言っちゃうんだ。



「これね。 明日や明後日、寂しくなったら、開けてみて」

 赤いポーチを渡される。 お化粧品の、ブランドのポーチ。

「なに? これ」

「玉手箱よ」

「ふうん? 今日もう寂しいけど、明日?」

 そうよ、可愛い子、と言って、車の中で先生は私をぎゅっとする。

「私も、あなたと会えないの、寂しい。 お土産、買ってきますからね。 リクエスト、ある?」

「えと、八つ橋。 かたいやつ」



 修学旅行、一日目。 今頃、ホテルで夕食かな。 テーブルマナー講座、とか言って、フランス料理のコースなんだよね。 私は具合が悪いふりして、先生の部屋で、先生と二人で食べたんだった。 えっちな事、たっぷりしてから。

 そういえば昨日、渡された「玉手箱」。 寂しくなったら、開けてみて、って。 何だろう。 先生の、写真かな。 高級な、お菓子かな。 えへへ。

「おぁ……」

 まさしくそれは、玉手箱だった。

 一番上に、手紙。

 手紙の下には、ケースに入った、小鳥の形のふるえるおもちゃ。 チューブの、ぬるぬるになるジェル。 おもちゃ用、除菌クリーナー。

「使ってね 使った後は、石鹸で洗えます お母様がいて洗い辛かったら、クリーナーで拭くだけでもいいですよ    織江」って、手紙。

「も……もう。 えっち」

 小さく、つぶやく。 先生、ほんと、頭おかしい。 大好き。

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