第18話 春の連休 二日目

「朝ご飯も、美味しかったね」

「そうね。 あなたがたくさん食べるから、びっくりしました」

 私たち、旅館の中を、指を繋いで歩く。 

 昨夜は早く寝て、変な時間に起きて、また寝て。

 ……先生が、泣いてるところ、見ちゃったけど。 それは、見ないふり。 忘れた、ふり。 大人は、先生は、泣かない。 きっと、酔っていただけ。



 エレベーターで、部屋へ向かう。 そんなちょっとの間もくっ付きたいから、エレベーターの扉が閉まったらすぐに、先生をぎゅっと抱き締める。

「せっかちね」

「大好きなんだもん」

 その間に、エレベーターは着いてしまう。 狭いところで二人きりって、好きなのに。



 少しドライブでもしましょうか、って先生は言ってくれたけど。 私は、この旅館がとってもとっても素敵だから、お部屋で勉強したい、って言った。 先生はすごく喜んで、分からないところ、何でも教えますからね、って。

 だから午前中は、意外と真面目に勉強した。 

 ご褒美がないと辛くなっちゃうから、一時間ごとにキス八分ってご褒美にして。



「なんかね、お腹空いてないよ。 朝ご飯、たくさんおかわりしちゃったから……」

 お茶飲んで、勉強して、お茶飲んで。 お腹は全然空いてない。

「私も、あなたと一緒が楽しくて、いつもより食べてしまって。 お夕飯も早いし、お昼は、いらないかしら。 大丈夫?」

 外に出るのが億劫だなっていうのも、ある。 私は作務衣みたいな館内着のままで、先生は持ってきたいつものパジャマに着替えてしまった(私だけ、ダサい……先生の裏切り者!)。

「お昼食べないで、温泉行く!」

 時計は、十一時。 今からなら、昼間の最後のお風呂に間に合うかも。

 先生も渋々、つんつるてんの作務衣に着替えて、指を繋いで温泉へ。 あとで、大きいやつに替えてもらおうね。



「誰もいないから、お膝に来る?」

 露天風呂も、中のお風呂も、貸切。 チェックアウトの前だから、空いてるよね。

 私たちは、気持ちいい露天風呂で、二人きり。

「誰か来たら、どうしよう」

「来ませんよ。 来ないように、呪いをかけたから」

 時々出る、先生ジョーク。 色付きの飲み物には毒が入ってるとか、チョコに毒を入れてみたり、人に呪いをかけたりする、物騒な冗談が好きみたい。

 私は、先生の腿の上に、背中を向けて座る。 お風呂だと裸でも変じゃないけど、これはとってもえっちです。

 先生の指が、私の胸を触る。 先生の唇が、私の耳にくっ付く。

「かわいい、かわいい。 頑張り屋さん」

 胸の先、やさしく摘む。 声が、脳の近くで響く。 心拍数が、急に上がる。

「先生……だめだよ」

「だめじゃないでしょう。 ここ、良くなってますよ」

 左手はそのままに、右手だけ、私のそこに移動させる。 当たり前みたいに、指を挿れる。

 背中から、先生の鼓動が伝わる。 昨日、今日で気付いたことは、先生も私みたいに、心臓がとってもどきどきするんだっていうこと。 

「きもちい……」

「そうね」

 指を、動かしてくれる。 温泉、ごめん。 人いないから、許して。

 露天風呂、外だし。 えっちだよ。 誰もいない、静かなお昼。 最高……。

「うわっ」

 頭がぐらっとする。

「き、きもちい……ちがうな……きもちわるい」

「大変」

 のぼせた。

 私は先生に抱っこされて、ぐでぐでのまま着替えさせられ、部屋に担がれていった。



 部屋で、先生の膝枕。

 時々、冷たい水を、口移しで飲ませてくれる。

 膝枕をしながら、先生は団扇で顔を扇いでくれる。

「先生、ごめんなさい……」

「なぜ、謝るの。 私が良くなかったの。 ごめんなさいね」

 のぼせるほどお湯に浸かるの、初めて。 いい経験です、なんて。

「先生、お水、もう大丈夫。 普通のキス、して」

「まあ。 でも、キスだけにしましょうね」

 そう言って、先生はキスをくれた。 キスだけ?って思ったけど、やさしく、長くしてくれたから、気持ちが良くて、私はそのまま眠ってしまった。




 夢かな?

 夢だ。

 夢の中だから、私、少し大人。 先生は、先生。

 夢の中でも、指を繋いで。 二人とも、指輪をしてる。 すてき。 

 夢の中の私も、同じ事考えてるみたい。 夢の中の先生に、ぎゅっとして、言う。

「先生、好き。 大好き……」




 目、覚めちゃった。 気持ちいい夢。 とっても、最高……。

「ん……」

 気持ちいい夢、夢…? だけじゃない。

「せ、先生……」

「あら、起きちゃった。 素敵な寝言、聞いてしまいました。 せんせい、すき、すきって。 ふふ」

 去年も、そんな事言ってましたね。 と言いながら、先生は私の内腿を舐める。

「先生……。 ずっとしてたんでしょ……」

 あそこが、むずむずするもん。 寝てる間に、ずっといたずらしてたんだ。

「だって、のぼせた子、起こせないでしょう。 これなら、いいかなと」

 よくないよ。 いや、いいよ…。 んん? よくないか…。

 見ると、内腿にたくさん、キスマークが付いている。 吸いまくった証拠だ。 それを見るだけで、ますます感じてしまう。

「先生…なか、触ってよ」

「起きたばかりでしょう。 まだ、寝惚けているのよ。 寝ていていいですよ」

 殺生な。

 先生は、そのまま蛇みたいに、舌を移動させる。

「うわっ! くすぐったいよ」

 足の指! そ、そりゃあ、温泉から担いでこられて、きたなくないかも、だけど。

「きれいじゃない! よくないって!」

「きれいよ。 お風呂の後、どこも踏んでないでしょ」

 毎日靴履いてるから、きれいじゃないってば…。

 先生は、足の指を一本ずつ、ぺちゃぺちゃ舐める。 親指から、一本ずつ。 これ、だんだん…。

「う、うぁ…」

 足の指が、一本ずつべとべとになる度に。 変なため息が出てしまう。 先生の唇、舌が、普段は他の人が絶対触らないところを食べる。 これ、すごく、気持ち良いかも…。

「先生…もう、気持ちいい。 もう、こっちがいい。 触って…」

「自分でしたら? 先生、忙しいから」

「ひどい」

 恐ろしいことに、先生の前で自分でするの、だんだん平気になってきてる。 何回も、させられてるから。

「いいもん…自分で、しちゃうから」

 私は、膝を立てて、パンツの中に手を入れる。 寝てる間にいたずらされていたせいで、ぐしょぐしょだ。

 人差し指で、あれを触る。 自分でしても、気持ちいい。 ほんと、意味わかんない。 なんでこんなもの、ついてるんだろ。 気持ちいいだけの、あれ…。

 先生が、いつの間にか脚の間に。 私、知ってる。 期待している、自分がいる。

「あっ」

 あれに、キスしてくれる。 柔らかい唇で、触れてくれる。 私は、先生がそうしやすいように、脚を広げる。

「先生、もっと…」

 いや、とか、だめ、なんて、もう言わない。 もっと。 もっと、してほしいの。

 ちゅ、ちゅ、と、先生はやさしくキスしてくれる。 強くないのに、すごくいやらしい。 

「先生、好き。 好き。 えっちで、大好き」

 先生は私の方をちらと見てから、あれに、とってもやさしく歯を当てる。

「んっ! せ、せんせい」

「痛い?」

「へいき……。 好き。 い、いたくして…」

「まぁ……。 欲しがりの、いい子」

 さっきより、少しだけ、強く。 すごく、気持ちいい。 漏れ出る私の声を聞いて、もっと、少しだけ、強く。

 繰り返されて、私はもうたまらなくて、犬みたいに息を切らす。

「せ、せんせい、もう、いく……」

「いいわよ。 いって」


 体には、全然力が入らない。 力が入らない体を、先生はぎゅっと抱きしめてくれる。

「体、辛くない? 大丈夫?」

 そう、お風呂でのぼせたんだった。

「もう、大丈夫。 気持ちいいだけ」

「まあ。 良かった」

 髪を、撫でてくれる。 先生から借りたヘアオイルの香りがする、髪を。

「お泊まり、好き。 ずっと一緒にいられるから」

「そうね」

「先生、私が大学生になったら、ほんとに先生の家に住んじゃうからね。 約束だよ」

「もちろん。 約束、したものね」

「そしたら、毎日えっちだよ。 毎日。 約束ね」

「ふふ。 約束、しましょうね。 寝不足にならないように、お家に帰ったら、すぐしましょう。 それから、お風呂でするのは、やめておきましょうね」

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