第14話 春、次の日の朝
いい匂い。 バターたっぷりの、パン屋さん? 美味しい、すてきな匂い。
「ん」
広いベッドで、目が覚める。 黒いスリップ。 先生の、ベッド。
「ああ……」
昨夜、お泊まり、したんだ。 先生のお家に。 そして、めちゃめちゃえっちした。 リビングで、このベッドで、あと、車とお風呂では、一人で。
先生は、隣にいない。 私は、昨夜はなかったパンツ、穿かされている。 クロッチのところ以外は全部、黒のレースだけのパンツ。
キッチンには、先生がいた。 先生は、白いサテンのパジャマを着てる。 下は、同じサテンのショートパンツ。 脚、長くてきれいだな。
「おはようございます」
「おはようございます。 パン、たくさん焼いてるから。 食べられそうですか」
昨夜、ご飯も食べずに、たくさん(えっちな)運動したから……。
「ペコペコだから、食べられる!」
「ふふ。 歯磨きして、顔洗ってきてください」
洗面所で、新品の、ピンクの歯ブラシを開ける。 用意してくれてたのかな。 なんて。 だったら、嬉しい。
顔洗って、スキンケアも、借りる。 全部、いい匂い。 外国のやつ。 こんなの使ってたら、先生みたいに、私もいい女になっちゃうね。
「先生、これ、全部食べていいの……?」
「どうぞ。 あなたの為に、用意したから」
焼き立ての、小さいクロワッサン、たくさん。 なんか、見たことないカラフルな彩りの、葉っぱのサラダ。 野菜のスープ。 ハムステーキみたいなやつ。
「飲み物。 牛乳でいいですか」
「お願いします」
朝ご飯、すご。 バイキングだ。
「先生、隣がいい」
「可愛いこと。 こちらへ」
向かい合わせじゃなくて、隣がいいの。
「私、いっぱい食べちゃうかも」
「昨夜は、食べられませんでしたからね。 ごめんなさい。 野菜も、食べてくださいね」
「何でも食べる!」
私は、いっぱい食べた。 先生が、びっくりするくらい。 それでも食べきれない分は、お昼にしましょうって。
「先生、全部美味しかった。 ごちそうさまです」
「いつも、お昼、少ないから。 こんなに食べられるんですね。 安心しました」
先生は、にこにこしてる。 嬉しいな。
保健室では、会えるだけで胸いっぱいだから、なぜだかあんまり食べられない。
「片付け、手伝います」
「ありがとう。 お皿、持ってきてくれればそれでいいですよ」
家では、洗う係だし。 と思ったけど、先生のマンションは、食洗機付きなんだって。
「ほかに、やることありますか」
「可愛い。 ありがとう。 良い子で、ソファに掛けていてください」
先生は、洗面所へ。 お化粧かな。
時計は、まだ六時半。 夜勤明けのママが帰るのは、お昼前。
今朝ケータイを見たら、「お泊まり、いいね。 帰ったら色々話してね」って。 言えるわけない事、たくさんしちゃったな。 私は「お昼もご馳走になっちゃうかも」って、返信しておいた。
先生が、ソファに戻って来る。 学校にいる時よりも、薄いメイクみたい。
「先生、いつもと違う。 けど、きれい。 大好き」
「ふふ、ありがとう。 私も、大好き」
抱き合って、キスをする。 舌と舌で、ぺちゃぺちゃ音を立てる、学校ではできないキスを。
キスしながら、話しかける。
「せんせ、かえりたくないよ」
「そうね。 私も、帰したくないわ」
先生は、レースのパンツの中の、私のあれを、触る。 すごく、触られたがっていた。 周りもぬるぬるになっている。
「んっ、せんせい」
何度か触れると、その指を、中に挿し入れる。 パンツを、穿いたまま。
「あっ、あっ、いいっ」
指、好き。 先生の指。 私を悪い子にした、悪い指。 成績だって、下がったよ。 毎日、勉強どころじゃなくなっちゃった。
「忘れないうちに、こっちもしましょうね」
そう言って、私をひっくり返して、胸を触る。 初めは、くすぐったい。 でもすぐに、気持ちいいのがやって来た。
「うん……。 こっちも、なんか、ヘンかも」
「変? 気持ち悪いの?」
意地悪。
「違います……。 気持ちいいの」
後ろから、私のほっぺにキスをする。 先生、私、昨夜の事、ちゃんと忘れてないよ。
「きもちい……。 先生、こっちにも、キスしてほしい……」
「勉強熱心ですね」
先生は、私を押し倒して、胸にキスをする。 ちくび、固くなってるのが分かる。 先生の舌の上で、転がされる。
息が、早くなる。 声を出すと、だめ、とか、いや、とか、思ってないくせに言ってしまうから(あれ、なんなんだろ)。 私は、人差し指を噛んで我慢する。
「ねぇ、声を出して。 つまらない」
気付いた先生に、指を外される。
「私、気持ちいいと、うそつきに、なっちゃうから。 先生、うそつき、きらいでしょ」
上がった息のまま、答える。
「まあ。 可愛い。 では、私の指を舐めて」
先生はそう言って私の口に、人差し指と中指を挿し入れる。
「ん、んっ」
指が、口の中を、動く。 意地悪に。 私も、指に舌を絡ませる。
「上手」
ほめてくれるの? 先生。 私、上手に感じられてるかな。
先生が、そこに、歯を当てる。
「んっ!」
噛まれたのは胸なのに、おへその下に、電流が走る。 両腿を擦り寄せる。 先生は、私の左の胸の先を口に入れながら、右手で、私の口の中をいじめる。 先生の指は、私のよだれでべとべとだ。
そして、その指をまた、わたしの中に挿れる。
私は、息を吐く。 先生の指が、動く。 舌が、歯が、せめたてる。
「きもちい……。 先生、どっちも、きもちいい」
先生は、胸から唇を外して、また、私の唇にくっ付ける。 私はさっき先生の指にしたみたいに、舌を絡ませにいく。 先生も、そうしてくれる。 舌、気持ち良い。 先生の唾液には、きっと、気持ち良くなる毒が入っている。
ん、ん、と私の喉が鳴る。 先生の指は、わたしの奥の方の、自分じゃできないところを、行ったり来たりして、おりこうね、と何度も撫でてくれる。
そして、それはやって来る。
「せんせい……、わたし、いく……。 あ、い、いま、いってます……」
「お利口さん。 言えましたね」
えっちした後も、ソファで先生と抱き合う。 向かい合わせで、私はソファに座る先生の膝に乗っかっている。 もう本当、幸せ。
「先生、好き」
「ありがとう。 私も、あなたがとっても可愛い」
うれしいな。
先生の顔を、すぐ近くで見る。 睫毛、長い。 きれい。
「私も、先生みたいにきれいになりたいな…」
「子猫ちゃん。 私みたいにならなくても、あなたはとっても美しいですよ」
先生、海外ドラマか映画に出てくる人みたい。 あなたはとっても美しい、だって。 恥ずかしいよ。
「う、美しくなんて、ないよ。 かわいくないし。 胸、ちっちゃいしさ。 バカだし」
照れ隠しに、言ってしまう。
「美しいし、可愛いし、胸は小さくて、お利口ですよ。 私の恋人は」
「先生」
なんか、泣けてしまう。 そんな風に言ってくれるの。 私は、先生にぎゅっとする。 先生は、私の髪を撫でてくれる。
先生は、こんなにきれいで、優しくて、お金持ちで、みんなの先生なのに、どうして私と一緒にいてくれるんだろう。
他にも、先生のこと好きな子、絶対いると思う。 時々、そんな事を考えて、眠れなくなる(眠れなくなったら、一人でする。 そして、最終的には寝るんだけど)。
聞いちゃおうかな。
「先生、あのね。 先生は、どうして私と付き合ってくれてるの……」
「可愛いから」
即答。 そんなに、かわいい、のかな……。
「じゃあ、かわいくなかったら……? 顔がもっと、ぺちゃっとしてて、むにーっとしてて、かわいくなかったら、付き合ってくれなかった?」
先生は、頭を撫でながら、くっくっ、と笑う。
「そうですね。 あなたも、私がおばあさんで、ぺちゃっとしてて、むにーっとしてたら、恋人になってくれましたか?」
「うーん……」
「おんなじです。 今のあなたが、とっても可愛くて、抱き締めたいな、キスしたいな、と思ってしまったの。 だから、一緒にいるんです」
先生。 私も。 私もだよ。 去年、初めて体育館で、着任式で先生を見て、こんなにきれいな人がいるんだ、って思ったの。 とってもきれいで、仲良くなりたいな、って。 用もないのに保健室、行っちゃおうかな、って思ったの。
先生の首に、腕を回す。 私は先生と同じ気持ちなのが嬉しくて、また、キスをする。
午前中はそうやって、ソファでくっついて過ごした。 お喋りして、紅茶を淹れてもらって、先生はお家でも白湯を飲んで。 時々キスをして、何度も頭を撫でてくれた。
はぁ。 帰りたくないなぁ。
先生を、連れて帰りたいな。
一瞬、思ったけど、それはだめだ。 うち、狭すぎる。 汚いし。 無理無理。
「どうしました。 首、取れそう」
無理無理、って思ったら、首をぶんぶん振ってたらしい。 先生が、顔を押さえて、キスしてくれる。
「ねぇ、可愛い子猫ちゃん。 少しだけ、お化粧してみませんか」
えっ。 先生が、してくれるの?
私は、こくこく頷く。
「待っていてくださいね」
はい。 まってます。
ドキドキする。 先生が、お化粧してくれるって。 どうしよ。
黒いメイクボックスを持って、戻ってくる。
「朝、お顔、洗ったと思うけれど。 頬っぺにもたくさんキスしてしまったから、拭き取りましょうね」
ソファで隣に座って、先生は、コットンに化粧水をたっぷり付けて、私の顔中、拭き取ってくれる。
「とってもきれいな肌だから、少しだけ、塗りましょう」
「ふつうだよ」
「きれいですよ。 一番きれい」
どきどきする。 学校には、かわいい子、きれいな子、たくさんいるのに。
先生は、日焼け止めの白いクリームを塗ってくれる。 手のひらでやさしくぎゅっ、と押さえたら、次は薄い紫の下地を、頬っぺたと、おでこと、鼻筋に。 きれいな指で、塗ってくれる。
それから、大きな陶器の入れ物のフェイスパウダーを、大きな白いブラシで、薄く付ける。 ブラシ、気持ちいい。
あとは、少しずつ、色を付けてくれる。
眉毛に茶色を、少し。 私がメイク動画を見ても理解できないアイシャドウは、付いてるのか付いてないのか分からないくらい薄いピンクをまぶたに付けて、下まぶたにはちょっとキラキラを。 アイライナーは、赤っぽい茶色のものを。 マスカラは、透明のやつ。
「睫毛がしっかりしてるから、これくらいで大丈夫」
そうなんだ。 よく、分からないけど。
頬っぺたには、ばら色のチークを、薄く付けてくれる。
最後に、口紅。
「先生……私、先生がいつも付けてるやつ、付けてみたい」
違う、もう少しかわいい感じの赤を付けてくれようとしてたけど。 お揃い、してみたい……。
「なんて、可愛い。 待っていて」
バッグから、お化粧ポーチを出す。 そして、いつもの口紅を。 紺色のパッケージの、素敵なやつ。 リップブラシに取ってくれる。
「お口、少しだけ、開けてくださいね」
目を閉じて、顎を軽く掴まれて、上唇から塗ってくれる。 なんか、これ、すごく……。
「まあ。 気持ち良くなっちゃったの?」
はい。 ごめんなさい。 実は、下地を薬指で塗ってくれたあたりから。 リップでとうとう我慢ができなくなって、ちょっとだけ、パンツの上から、触りました。
「下唇まで、塗りますよ。 もう少しだけ我慢です」
唇に塗り終わったら、ティッシュで口紅を押さえて、色を少し取ってくれる。
「ほら、可愛い」
先生が、手鏡で見せてくれる。 こ、これは、自然だけど、キラキラしてて、なんか、いつもよりカワイイぞ。
「手鏡、持って」
「?はい。」
鏡を私に持たせて、先生は私を膝に乗せて、背中から抱いてくれる。
「お待たせしたから、してあげます。 手鏡、持っていてくださいね」
「えっ、い、いや! 恥ずかしいよ!」
後ろから、先生の指がパンツの中に入ってくる。 私は手鏡で、キラキラしてる自分の顔を見ながら、また気持ちよくなって、春の猫みたいに、鳴いた。
「お猿さん。 もう、着替えましょうか」
また退化した。 もう、猿でいいです。 すぐ触る、猿。
お昼を食べて、歯磨きして、またソファで、先生にくっ付いていた。 帰りたくない。 帰りたくないよ。
「着替えたくない……」
「お母様、心配なさるでしょう。 元気なお顔を見せてあげて」
心配なんて、しないってば。 帰っても、先生の事しか考えられないよ。
「明日は、一日ゆっくり休んで」
「ゆっくりなんて。 先生の事思い出して、一日中、ひとりでするもん」
「お勉強も、しないと」
勉強……。 嫌い。 えっちな事覚えたら、勉強のやり方、忘れた。 成績は去年より、だいぶ落ちている。
「進路は? 決めてるんですか」
私の耳を触りながら、先生が聞く。
「まだ……。 ママは、看護師がいいんじゃないって。 専門学校の、高くないとこで」
「そう。 素晴らしい、お仕事ね。 あなたも、なりたいの?」
「わかんない。 やりたい事とか、ないし。 先生とずっと、一緒にいたいぐらいしか」
先生は、黙る。 黙って、私の耳をふにふに触る。
「じゃあ……。 お勉強して、近くの国立大学に行きましょうよ」
「今からじゃ、無理だよ」
「あそこに受かったら、ここから通えます。 教育学部に行って、先生になって、一緒にここに住んで、一緒に働きましょ」
「何それ……。 夢じゃん」
涙が出てきた。 そんなの、夢じゃん。 でも、そんな事、言ってくれるの。 先生。
やばい。 涙が止まらなくなってきた。 先生も気付いて、ハンカチを貸してくれる。 髪を、撫でてくれる。
「先生。 好き。 本当に、がんばったら、一緒にいてくれる……?」
「頑張らなくても、一緒にいますよ。 でも、頑張れたら、それはとても素晴らしいことです」
私は先生に抱きついて、泣いた。 せっかくしてもらったお化粧が取れてしまうかも、なんて、ほんの少しだけ思いながら、わんわん泣いてしまった。
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