第13話 春の夜、二人

 また、一人で、しちゃった。

 夜。 自分の部屋。 ベッドで、掛け布団をしっかり掛けて、絶対バレないように。 指で。

 先生の事、思い出して。

 ハスキーで、素敵な声なの。 目元は涼やかで、鼻筋が細くて、スッと通ってて、頬は、白くて。 唇には、いつも赤い口紅が乗ってる。

「先生」

 思い出すと、また触りたくなる。 私の指は、あんなに、細くてきれいじゃないけど。 声、聞きたいな…。



 結局、昨夜は、五回した。

 猿かよ。 自分でも、そう思う。

 そんな話、誰ともできないから。 何回が普通か知らないけど、きっと多いと思う。 全部、先生のせい。

 放課後、私は丸椅子に座って、書き仕事をする先生を眺める。 保健室の鍵とカーテンは、勝手に閉めた。

 ペンじゃなくて、私を触ってよ。

 指、きれい。

 好き。

 私の視線に気付いて、先生はこちらに微笑む。

「気になってしまいます、見つめられて」

 キャスター付きの椅子のまま、こちらに来る。

 ペンを胸のポケットに挿して、私の手を取る。

 指を絡めて、キスしてくれる。

「ん、んっ……」

 先生。 家じゃ、一人じゃ、キス、できなかったよ。 したかったのに。 ここでたくさん、しておかないと。



 そう思うのに、すっと、唇を離されてしまう。

「もっと」

 切なくて、おねだりする。

「だって、泣いてます。 どうしたの」

「えっ?」

 やだ、本当だ。 涙が出てる。 何だか恥ずかしくて、指でぐしぐし、拭う。

「先生のこと、嫌いになっちゃった?」

「そんなわけ、ないじゃん。 好きだから……。 一緒にいたくて、出た」

 先生は、私をぎゅっと抱き締める。 髪を、やさしく撫でてくれる。

「先生、家に帰るの、いやだよ。 家では、ぎゅっとできないし。 キスもできない。 お話も、できない」

 ばかみたい。 涙がぼろぼろ出てくる。 学校がある日は、毎日会えるのに。

 先生は、黙って髪を撫でている。 ずるい。 こういう時、黙らないで。


 

 随分、泣いた気がした。 外は、もう暗い。 

「帰りましょう。 送っていきます」

「うん」

 校舎裏の駐車場で、車の陰に座り込んで、先生を待つ。 職員室に、挨拶してから帰るって。 

 送ってもらうの、初めて。 特別扱いかな。

「お待たせしました」

 先生。 いつもの白衣を脱いで、黒いトレンチコートを着てる。 すごく、素敵。

「どうぞ」

 助手席のドアを開けてくれる。 水色のフランス車。 おしゃれ。 先生、全部、素敵だな。

 車の中、物が全然ない。 ティッシュにガムに、エコバッグだらけのママの軽と、全然違う。

 先生も、運転席に乗り込む。 鍵をかけてすぐに、私にキスをする。 

「先生、他の先生、来ちゃうかも」

 まだ、出発してないよ。 先生達の駐車場でしょ。

「来る方が悪い」

 そんな、ばかな。 私たちは、また、キスをする。 いつもよりさらに、いけない事をしてる気分……。



 何度も何度もキスをしてから、出発する。

「ナビ、してくださいね」

「うん」

 手を繋いだまま、ドライブ。 特別扱いだ。

「お腹、空きました?」

「すいた」

「帰ったら、すぐお夕飯かな。 いいですね」

「お母さん、夜勤だから。 冷凍のパスタだよ」

「そうですか」

 うち、ママしかいないし。 先生に、言ったかな。

「お母様、いつお帰りになるのですか」

「明日のお昼前くらいかな。 看護師なの」

 少しだけ考えて、先生は、

「ねぇ。 明日は、土曜日だから。 お友達の家に泊まることにしては、どうでしょう」

「えっ。 先生のお家に、泊まっていいの?」

 先生は、前を向いたまま、にこっとする。

「お母様に、すぐ連絡できますか」

「メールする。 すぐ。 大丈夫、もう3年だから。 帰ってこいなんて、言わないよ」

 どうしよ。 どうしよ。 いいのかな。 初めて、お泊まり。 しかも先生のお家に、なんて。

 ママに、メールする。 休憩になったら、見てくれるだろう。

「にこにこして。 かわいい子」

 先生が笑って、また繋いだ指を、ぎゅっとしてくれる。 だって、こんな、超、超、特別扱い。

「先生、あの、私、着替えとか、取りに行った方がいいかな」

「私のでよかったら、着てください。 少し大きいかもしれないけれど」

 先生は、私より結構、背が高い。 私も161あるから、小さい方ではないんだけど。

「うん」

 少女マンガで見る、彼シャツみたい。 やばい。

「先生のお家、遠いの?」

「駅の近くなので、ここからだと、あと20分くらい」

 あと20分くらいかぁ。 ドキドキするし、緊張する。 顔が、にやけてきちゃう。

「期待してますか?」

 えっ! そ、そんなににやけてたかなぁ。

「き、期待なんて、別に…」

 いや、してますけど。 してるに決まってますけど。 素直に認めるのも、恥ずかしいから、私はカーディガンからリップを出して、塗った。



 先生は前を向いて運転しながら、聞く。

「ねぇ、昨夜は、一人で何回したんですか」

「えっ」

 何て?

「ゆうべは、ひとりで、何回、したの?」

 先生は一言一言、はっきり、言い直す。心臓が、止まりそうになる。 俯く。

「し…してません」

「嘘吐き」

 なんで、急にそんな事。 ウソツキ、なんて。

「先生、こわいよ」

「私、嘘吐きは嫌いです」

「そんな事、言わないでよ」

 何で。 さっきまで、浮かれてたのに。 何でそんな、意地悪言うの。 下唇を噛んで、何かを我慢する。

「何回したんですか。 教えて」

「い…一回しか、してないよ」

「嘘」

 何で。 何でわかるの。 繋いでる手、指先が、冷たくなってきた。

「ほんとは…五回。 眠れなくて、しちゃったの。 ごめんなさい」

 なんか、涙出てきた。 恥ずかしい。 消えたい。

 先生は、繋いでる手を外す。

「まあ。 五回も。 私の事、考えました?」

 先生の事しか、考えてない。 先生の唇、先生の舌、先生の指を。 思い出して、したの。

 何回も、首を縦に振る。 言葉が出せなくて。 何か喋ったら、泣きそうだから。

「一人でできる、お利口さん。 今、ここで、してみせて」

「今…? 無理だよ…」

 先生、むちゃくちゃだよ。

「出来るでしょ。 お猿さんみたいに、一晩に五回もしたのだから」

「なんでそんな…意地悪言うの」

 私の問いかけには、答えてくれない。

 さっきまで、ルンルン気分だったのに。 地獄になっちゃった。 涙が落ちる。

「先生、何か…ひざ掛けとか、貸してください」



 コンビニで、先生はコーヒーを買う。 そして、黒いコートを脱いで、私の膝に掛ける。 少しだけ、シートを倒す。

「遠回りしましょうね。 お利口さんが、いけるまで」

 ひどい。 恥ずかしくて、顔を上げられない。

 ドアの鍵を掛けて、先生は、私の顎をつかんで、キスをする。

「先生、駐車場では、だめ…」

「どうして? キス、嫌いになりましたか」

「見えちゃうよ。 私、制服だし…」

「大変。 私、きっと逮捕されますね」

「そんなの、やだよ…」

 もう、訳がわからない。 先生は、私をどうしたいの。

「さぁ、出発しましょう」



「ねぇ、お利口さん。 私の指、美味しいですか」

 先生が私の口に、人差し指と、中指を入れてくるから。 私はそれを一生懸命、舐める。

「かわいい。 犬みたい」

 先生、たのしそう。 私はちっとも、たのしくない。

 たのしくないけど、濡れている。

 先生のコートに隠れてるけど、スカートの中に手を突っ込んでる。 何回も何回も、あれを擦ってる。 下着は、ぐしょぐしょだ。

 先生。 意地悪な、先生。 何でこんな事するの。 私の事、きらいなの。

 私は、先生の事、先生だけを、大好きなのに…。

「あ」

 もう、指、動かせない。 気持ちいいのが、きちゃったから。

 先生も、私の口から、指を抜く。 その濡れた指を、自分の口に持っていく。

「美味しい。 お利口さんの、味がします」



 先生のお家は、駅前の大きなマンションだった。

 ママと、宝くじが当たったら、住みたいねって言ったところ。

 セーラーの襟が見えないように先生のコートを羽織って、エントランスへ。

「大きい…」

「みんなの玄関ですからね」

 暗証番号を入力して、中に入る。

「後で、番号、教えてあげます」



 エレベーターで、上から二番目の階へ。

「すごい。 すっごく高い」

「一番上の階は、もっと高いですよ」

「そりゃ、そうだけど」

 市内でも、この高さの建物って、そうはない。

「ベランダでいやらしい事しても、誰にも見られません」

 先生、まだここ、共用スペースだよ…。 そういう事言ったら、ダメ。

 今日、何となく気付いた。 先生は、ちょっと、常識がない。



 明らかに他より広い、角部屋。

 先生のお城は、そこだった。

 鍵を開ける。 センサーで、電気が点く。

 玄関には、先生のハイヒール。 少しずつ形が違っているけど、どれも黒で、つやつやだ。 爪先が、かっこよく尖ってる。

 私はローファーを脱いで、先生のハイヒールの隣に揃えて、置く。

「手洗い、うがいです」

「はい」

 洗面所も、広い。 きれい。 いい匂い。 おしゃれなお店の、アロマみたいな匂いがする。

 見たことない、英語の茶色いボトルのハンドソープで手を洗う。 すっごく、いい香り。 先生も、いつも、いい香り。 私も、大人になったらこういうの、使いたいな。



 コートを先生に返して、私は、制服のまま、ソファに座る。 ヨーロッパの貴族みたいな、光沢のある布の、猫足の、なんかすごい、ソファ。

「映画のセットみたい」

「かわいいでしょう」

 かわいいっていうか、なんか、すごい。 保健室の先生って、そんなにお金持ちなの?

 先生も、私の隣に腰掛ける。

「車の中では、意地悪して、ごめんなさい。 あなたが、あんまり…かわいいから。 苛めたくなってしまって」

「ぜんぜん、へいき…」

 では、ない。 結構、つらかった。 唇が、とんがる。

 そこに、先生の唇が、重なる。 私たちは、誰にも遠慮せず、舌を絡ませ合う。 先生の首に、腕を回す。 先生の腕は、私の腰に。 静かな部屋の中で、キスの音と、私の喉から出る声が、響く。



 何分、キスしたか分からない。 車の中でもしてたから、下着はもう、スカートに染みちゃうんじゃないかというほど、汚れてる。

「先生、もう、さわって」

 唇を離して、お願いする。

「どんなふうに?」

 意地悪。

「指、先生の指を、中にいれて…」

 指が入ってくる。

「んっ」

 先生の、細くて、長い指。 自分でするより奥に届く、魔法の指。

「あっ、あぁ」

 ほんとに、発情期の猫みたい。 変な声が出る。 先生に出会うまで、自分からこんな声が出るなんて、知らなかった。

「うちはね。 防音、しっかりしているんです」

 耳元で、そんなこと。

「あなたのかわいい鳴き声、たくさん聞かせて」

 私は、こくこく頷く。

 先生は、指でやさしく、意地悪をする。 縦に動かしたり、掻き回してみたり。

「ん、あっ、ああっ、せんせい…」

「素直ないい子。 大好き」

「せんせい、わたしも…わたしも、だいすき」

 背中から抱かれて、じゅぶ、と、耳に舌を挿れられる。 音、いやらしい。

「せんせ、みみ、えっちだよ…」

「嬉しいでしょ。 えっちなの、好きでしょう」

「すき、えっちなの、すき」

 脳みそが、しびれる。 気持ちいい。 もっとして。 ずっと、して。

「せんせい、わたし、もう」

 先生は指を抜いて、固くなった私のあれに触れる。 ぬるぬるの指先で、強く擦ってくれる。

「あっ、ああっ、いい」

 腿で、先生の手を挟んでしまう。 右脚だけ、ぴんと伸びる。 

 そのまま、動けなくなる。 頭もぼーっとして、何も、考えたくない。 先生の事しか。



 目を覚ますと、まだ真っ暗で、夜だ。

「ねてた…」

「寝てましたよ」

「うわっ」

 先生は、起きてた。 猫足のソファで、私を膝枕してくれてたんだ。

「今、何時?」

「23時。 もう、眠い?」

「寝たから、眠くない!」

「元気なこと」

 先生が、ふふっと笑う。 先生が笑うと、うれしいな。

「先生、いい匂い」

「先に、シャワーしてしまいました。 お湯、張ってあるから。 お風呂、使って下さい」



 お風呂も、広かった。 そして、いい匂いだった。 多分その辺では売ってない、外国のシャンプーとトリートメント、それにボディソープ。 全部、いい香り。 高級ホテルみたい(行ったことないけど)。

 髪を洗って、体を念入りに、洗う。

「うわ…」

 あそこ、めちゃめちゃ、ぬるぬるしてる。 そりゃそうだ。 あんなに、して、そして、してもらったんだから。

 指、すぐ入っちゃうな。 入れてみる。 人差し指を、中で動かしてみる。 先生みたいに、長くない指。 それでも、余韻で、気持ちいい。

 少しだけ。 もう少しだけ、動かす。 声を出さないように。

「お風呂でオナニー、してるでしょ」

「ぎゃっ!」

 すりガラスの向こうに、いる! 扉が開く。

「絶対、してると思った。 かわいいお猿さん」

 笑ってる。

 さっきは、素直ないい子って言われたのに…。 また、猿に退化してしまった。

「洗ってただけだもん。 どうせまたするから、きれいにしてたんです」

「それは失礼。 中は、石鹸、つけない方がいいですよ」



 お風呂から出ると、ふわふわのタオルと、黒い下着が用意してあった。

「初めて見た」

 映画とかでしか見た事ない、女優が着るやつじゃん。 キャミソールの、長いやつ。 スリップっていうの? 膝上、10センチくらいの。 つやつやで、胸元と裾に、レースが付いている。 えっちだ。

「…ぱんつ、ない」

 多分、わざとだ。



「かわいい」

 リビングに戻ると、先生が、お酒を飲んでいる。

「色が付いた飲み物、好きじゃないんじゃないの」

「アルコールは、別です」

 そういえば、コンビニのコーヒーも、飲んでなかった。

 先生、頬っぺたと目元が少し赤くなって、すっごくきれい。 先生も、私と同じような黒いスリップに、同じつやつや素材の、短いキュロットみたいなやつを穿いている。

「座らないんですか。 隣」

「だって…」

 ぱんつ、なかったよ。 ソファには座れない。

「ああ。 穿いたって、どうせ汚してしまうでしょ」

 先生は私を手招きして、膝の上に乗せる。 耳たぶを、噛みながら言う。

「よく似合ってます。 きれい」

 きれいは、先生。 私はどきどきしてしまう。

 先生の長い指は、私の身体をまさぐる。 下着の中にも入ってきて、薄い、胸を触る。

「あっ」

 いやだ。 そこは、恥ずかしいの。 ぺたんこだから。 私は、先生の指を移動させようとする。

「どうして? くすぐったい?」

「ううん…。 そこ、気持ちよくないから。 触ってくれるなら、下がいい」

「そう。 じゃあ、今夜はここがよくなるように、頑張りましょう」

 ええー。 がんばるの、嫌い。 でも、先生が言うなら。

「頑張ります」

「ふふ。 その意気です」



 私たちは、ベッドに移動する。 私、お姫様抱っこをされて。 いい匂い、先生のにおいのする、毎日寝てるベッドへ。

「ベッド、でか」

「寝るの、好きなので」

 そういう問題かな…。 私だって、寝るの好きだよ。 普通のシングルベッドだけど。

 明かりを、常夜灯だけにする。 どきどきする。 私はベッドの真ん中に座らされて、向かい合って、指を絡めて、先生に、キスされる。

 ちゅ、ちゅっ、と、頭の中で音が響く。 もう、気持ちいい。 いい匂い、心地良いベッド、それに、大好きな先生。 夢みたい。

「先生、好き」

「ありがとう」

 ずっと、指を絡めていたい。 でも、それじゃ、他のところ、触ってもらえないから。

「横になりましょう」

 先生が、横たわる。 すごいスタイル。 手も脚も長くて、頭が小さい。 腰が細い。

「先生…すてき」

「あなたの方が、すてきです」

 そんなわけない。 だけど、嬉しい。 私も寝転がって、先生に抱きつく。 いい香り。 いつもの香りが、先生の身体の匂いと混じって、もっといい香りに感じる。

「よいしょ」

 くるっと、回転させられる。 私は先生に背中を向ける形になる。

「さぁ、頑張りましょうね」

 そういうこと? 先生は、下着の下、私の胸に触れる。

「うっ…く、くすぐったい、えへへ」

「ちっとも、気持ち良くない?」

「くすぐったさしか、ない」

 これ、だめだよ。 くすぐったくて、笑っちゃうもん。 私、小さいし、才能ない。

「じゃあ、お手伝いしてもらいましょう。 すぐに気持ち良くなる、良いところに」

 そう言って先生は、私のそこを、触る。 ベッドでもたくさん、えっちなキスをしたから。 とっくに、濡れている。

「良い子ですね」

「先生… すぐ、いっちゃうよ」

「まだ日付も変わっていませんよ。 何回でも、いけばいいでしょう」

 そうだった。 ここは、学校じゃない。 他の子も、他の先生もいないし、チャイムだって鳴らない。 大きな声だって、出していい。

 先生は、そこに指を押し付けるように、ゆっくり撫でる。

「あっ、あっ、気持ちいい。 先生、指、いれて」

 初めから、指を深く挿し込んでくれる。 大好き。 気持ちいい。 

 空いてる左手で、私の左の胸に触れる。 先生の手のひらで、心臓の音を、確かめるみたいに。

「これなら、くすぐったくない?」

「へいき…」

 先生の手が動くのが分かるくらい、心臓、どきどきしている。 私は上を向いて、先生を見る。 先生の顔が近づいて、また、キスをする。

「ん、ん、んぅ…」

 喉が鳴る。 先生の指は私の中をかき回し、左手は、いつの間にか固くなった、胸の先をやさしく撫でる。

 唇が、離れる。

「ねぇ、おっぱい、気持ちいいんじゃないですか」

 そう。 くすぐったさは、もうない。 

「あそこが…すごく、いいから。 胸は、わかんない」

「そう? 反対側も、してあげましょうね」

 根元まで入ってる指を、抜く。 先生の指、私のせいで、濡れて、光ってる。

 その指で、今度は右の胸に、触れる。

「あっ、あん」

 にゅるにゅるの指、気持ちいい。 発情期の、猫の声になる。

「かわいい。 最高」

 右手をまた、あそこに入れて。 濡らしてから、胸へ。

「あっ、あっ、先生、胸、だめ」

「だめじゃないでしょ。 嘘吐きは、きらいよ」

「ごめんなさい、きもちいの」

 嘘じゃないよ。 気持ち良くて、だめなの。

「気持ちいいの? 猫ちゃん」

 私は、何度も頷く。 そして、お願いする。

「せんせい、さわって。 また、にゅるにゅるにして、むね、さわって」

「お利口さん」

 先生は、また私と向き合って、今度は胸を、ぺろりと舐めた。

 何度も何度も、固くなった先を、長い舌で、舐める。 私はもう、動悸がすごくて、息も、苦しい。

「んっ。 あっ。 ベロ、えっち…」

 今度は、そこを、やさしく噛む。 これ、完全に、好き。

「せんせい、せんせい、気持ちいい。 かむの、すき。 ああっ」

「わかりますよ。 とっても、気持ち良さそうだもの」

 先生は、いつも冷静。だけどそれさえも、すっごく興奮する。 

 今度は左手の指を、私の中に入れてくれる。 簡単に、奥まで飲み込んでしまう。

「いい。 もう、いきたいよ」

「もう、いってるでしょう。 いってる、って言いなさい」

「あっ、ああっ、んっ」

 先生、言う事聞けなくて、ごめんなさい。



 髪を、撫でてくれる。 やさしい先生。

 髪を撫でて、私のうなじに、キスを。

「お利口さん。 でも、ちゃんと、いってるって、聞かせてほしかった」

「次は、言います…」

 気持ち良くて、ぐったりする。 ちゃんとベッドの上でするのって、体力いるんだね。 知らなかった。

「先生。 気持ちいいの、ありがとう…」

「どういたしまして」

「シーツは、汚しちゃったかも。 ごめんなさい」

 先生は、私を座らせて、おでこにキスをする。

「折角だから、洗わないでおきましょうか。 記念に」

「だ、だめ! くさくなっちゃうでしょ。 明日、洗って」

 大好きな、先生。 先生が笑うと、幸せ。 意地悪な時も、後から考えたら、幸せなのかも。 私は、正面から先生に抱き付く。

「お腹、空いたでしょう」

 忘れてた。 えっちな事ばっかりで。

「もう、ぺこぺこの山、越えたかも。 そんなに、空いてない」

「そう。 じゃあ、明日の朝にたっぷり食べましょう。 今夜は、このまま休みましょうか」

 そう言って、先生はまたキスをする。 今度はおでこじゃなく、唇に。

「先生、口でキスすると、また…」

「したくなっちゃうの? お猿さんね」

「猿じゃなくて、猫にして。 猿は、なんか、いや」

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