密室 男と女 回るベッド

kayako

身体中、散々弄ばれた後に……その地獄はやってきた。




 その白い液体を吐き出してしまった私に、上から目線で男は言った。


「初めてってわけじゃないんだろ?

 ちゃんと飲みな。ためらっちゃ駄目だ、一気にゴクンとね?」


 ベッドの上で、男と女、二人きり。

 厳重に施錠されたこの部屋は完全に密室。私に逃げ場はない。


 涙目になって、白い液体をもう一度なんとか飲み干す。

 べとべとになった口を拭いながら、私は必死にベッドにしがみついた。

 彼がスイッチを入れると、無防備になった身体が回りだす。

 回転するベッドの上で――

 私の身体はいいように弄ばれる。

 でも、決して抵抗は出来ない。出来るはずがない。


 締め切られた部屋に、無機質に響くカメラの音。

 ベッドでなすがままにされる私が、撮影されている。

 男の乱暴な声が轟く。


「ほら、次は右……左! 力を抜いて、息を吸って……

 よし、いい感じだ……そのまま止まって、息吐いて。

 次、左。もうちょっと左!」


 胃からせりあがるものを必死でこらえながら、私は男のなすがままになるしかない。

 何をされようが、この場ではわずかな抵抗すら許されない。


 回る。

 回される。

 また回る。

 また回される。

 しまいにはどこからか伸びてきた固い腕に、思いきり腹を抉られた。

 こみあげるものを強引にこらえ、私は涙と共に歯ぎしりしてベッドにしがみつく。

 何故。一体どうして、私がこんな目に。

 あまりの理不尽に、怒りがつきあがってくる――!







「はい、検査終了。

 すぐにたくさん水を飲んでくださいよ。下剤渡しとくからね」


 畜生が。

 ゲップと一緒に暴言を吐きそうになりながら、私は担当の検査技師を恨みがましく見上げる。

 ねぇ、このバリウム検査ってマジ理不尽なんだけど。

 バリウムと一緒にあんだけ炭酸飲まされて、ゲップを我慢しろだなんて、出来るわけないじゃない。一度飲むタイミングミスって、口の中で炭酸が膨れて吐き出しちゃったし。

 その上ゲップ我慢しながらベッドが回転して、技師の指示で自分も回れだなんて。

 撮影中も右だの左だの、うるさく指示しやがって。

 あと、最後あたりで私の腹思いきり押してきたアレ、何? ゲップを出せって言われてるようなもんじゃん。腹あれだけ押されてまだゲップ我慢しなきゃなんないの?

 あー、うざい。早くスキャン一回で健診全部終わるような技術が開発されないものか。


 せめて、バリウム検査の担当者は男か女か選ばせろってんだ。あんな上から目線で圧かけてくる奴はもう嫌。



Fin

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