4話目

「……」

何も言わずに歩く。

さっきと違うのは、アイが俯いているということだ。

「ここ全然変わんないね〜」

レンは気にせず笑顔で言った。

「……」

アイは何も言わずに進んだ。

暗い暗い水の中。

息はしていないのか、空気すらない。

「安心してよ、アイちゃん。ボクが守ってあげるから!」

レンは振り向き、笑顔で言った。


「だから__

その手を離さないでね、お嬢さん?」


「…ずっと一緒には居てくれないくせに」

アイが小声で言うと、レンはキョトンとしてから「あはは、ごめんね。アイちゃん。」と困ったように笑った。

「本当に、ここは不思議だね。ずっと居たくなっちゃうよ。」

レンは辺りを見回して言うと、前を向いた。

「でも、ダメだね。進まなくちゃ。」

アイは、何故レンがそう言うのか理解できなかった。

(…ここに居たいのなら、居ればいいのに。)

そして、何故自分がそう思うのかも、理解できなかった。

「あ!あそこ!奥に洞窟みたいなのがあるよ!」

レンが楽しそうに言うと、アイはジトっと見て「洞窟って…危ないとか思わないわけ?」

レンは「あはっ!それもそうかも!」と笑った。

「まあ、前に進まなくちゃでしょ?」

レンが笑うと、アイはため息を一つつき、「…わかった、進も」と言うと、歩き出した。


「まって…」

どこかから、声がした気がした。

「…?」

アイが振り向く。

……何も無い。

「…ねぇ、レン。何か聞こえ__」

アイの言葉を遮るように、足を掴まれた感覚がした。

「どうしたの?アイちゃ_」

レンは振り向き、言葉の途中で止まった。

「っアイちゃん!絶対手を離さないでね!」

レンが言った瞬間、下へ引きずり込まれた。

アイとレンの手は引き剥がされ、アイは沈んでいった。

「アイちゃんッ!!」


(レンの声が聞こえる。でも、もう…)







『次に待ってるのは明るい明るい、


白い白いお花畑。


ねぇ


君はこの場所を乗り越えられる?


勿論、君一人の力で_______』

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