3話目

「まほう、つかい…」

ニュースで見たことがあった。

『人知を超えた生命体だ』と。

それが今、目の前に居る。

そう考えると…

(嬉しすぎて気がどうにかしそう!)

アイは、魔法使いという存在に強い執着心を抱いていた。

人知を超えた能力、力、魔術や呪術、その全て。

アイはずっとずっと追い求め続けた。

そして、人々はそんな彼女を『変わった子』だと言ったのだ。

「本当に、魔法使いなの…っ!?」

アイの表情が明るくなった。

「お、お?随分と元気になったねそうだよ、そうだとも!!ボクは魔法使いさ!!」

レンは両手をパッと広げて言った。

「わた、し…ずっと魔法使いを探してたの…!」

アイはグイッとレンに近寄った。

レンは軽く後退ると「そうなの?」と尋ねた。

「うん…!ずっと会いたかった…!

ああ、こんなことが起きるなんて…夢みたい…!」

アイは夢見心地で言うと、レンの両手を掴んだ。

「ねぇ、レン。これからもずっとずっと一緒に居てくれる?」

レンは困ったように笑い「ずっとは無理さ、お嬢さん。」と言い、手を引き抜こうとした。

だが、アイは離さなかった。

「嫌、ずっと一緒に居るって約束して」

アイはさっきよりもずっと冷静な声色で、だが、落ち着きの無く言った。

「無理だってば、ボクは魔法使いだから…だから…」

レンの声は段々と小さくなっていき、俯いた。

「まあ、ずっと一緒は無理なんだよ、アイちゃん。さ、前へ進もう。」

レンは、どこか寂しそうな笑顔を浮かべると、アイの手を引いて歩き出した。


随分長く歩いた。

だけれど、まだまだ暗い暗い水の中。

透明な地面の上。

変化という概念すらも存在しなかった。


「ねぇ、レン」

「なに?アイちゃん!」

アイが呼びかけると、レンは笑顔で尋ねた。

「レンって、すごく明るいよね。」

「言うほどかな?」

レンが笑って言うと、アイはレンの腕を引っ張って「言うほどだよ」と言った。

「ねぇ、レン」

「なに?アイちゃん」

「わたし…もしかしたら、レンのこと知って__」

言葉が止まった。

レンは笑っていた。初めに会った時と同じ笑顔で、アイの方を向いていた。

「どうしたの?お嬢さん」

「なんでも、ない…」

アイは俯いた。

レンは笑顔でこう言った。


「じゃあ、先へ進もうか。お嬢さん。」

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