5話目

目を開くと、視界には白い光。


(ここは、どこ…?)

起き上がると、足元に何かの感触があった。

慌てて見ると、そこには白く美しく咲き誇る花があった。

(…お花?水に引きずり込まれたのに?)

アイは疑問に思いながら、辺りを見回す。

一面の白い花畑。

(綺麗…)

アイは見とれているとハッとし

(急いでレンを探さないと…)と考えた。

上を見上げると、果てしなく白かった。

(…水の中はあんなに暗かったのに…優しい光…)

「ずっとここに居たい?」

アイがぼーっと見上げていると、声がした。

バッと勢いよく見ると相手は「わぁビックリした」と驚いた様子もなく言った。

相手を見てみると、純白の髪をした少年だった。

「大丈夫?眠っていたみたいだけど」

少年は微笑んだ。

(…眠っていただけで心配するのは不思議だけれど…)

アイが疑問に思っていると、少年は

「あ、なんで心配するんだって話だよね…」と困ったように笑った。

その笑顔は、どこかぎこちなく見える。

「多分、あなた、何かに引きずり込まれたでしょ?」

少年が言うと、アイは「なんでわかるの…」 と後退った。

「あ、えっと…僕も同じだから、かな…」

少年はぎこちなく笑った。

(なんだか…笑顔相手が慣れてたけれど、こんな状況で上手に笑えている方がおかしいか…)

「わたしは…ここからは出たい。レンを探さないと」

アイが言うと、少年はキョトンとし、そして「そっか、探してる人がいるんだ。じゃあ、見つけないとね」と微笑んだ。

(なんだか…優しい人…)

アイはそう思いながら

「…うん、だから探しに行く」と言った。

少年は「探すの、お手伝いするよ。どんな人?」と尋ねてきた。

「…髪が、すごく長い人。黒くて綺麗な髪。」

アイが答えると、少年は「なるほど…お手伝いするね」と言った。

やはり、笑顔がどこかぎこちなく見えた。

「…あなたの髪は白いね。」

「あ…あはは、うん、僕の髪は白いよ」

アイが言うと、少年はよりいっそうぎこちない笑顔を浮かべた。

(…やらかしたかもしれない…だから、喋りたくない…)

アイは黙り込んだ。

「…えっと、名前、なんていうの?」

アイは勇気を出して尋ねてみた。

「僕はコウだよ、あなたは?」

少年、コウは微笑んで尋ねた。

アイは少し黙ってから

「わたしは、アイ」と答えた。

「よろしくね、アイちゃん」

コウが微笑むと、アイの表情も和み「よろしく、コウ…」と言った。

「じゃあ、探しに行こっか」

コウは微笑んで言った。

「…うん」

そうして、アイはレンを探しに歩き出た。

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