4日後
犯人が、妄想と現実との区別がつかなくなっていた、という意見には私は懐疑的です。
むしろ、妄想と現実との区別があまりにもよくついていたからこそ、こんな事件を起こしたのではないでしょうか。
犯人は大学生でした。授業はオンラインばかりで、友達もいない。学校行事もほとんどが中止になり、灰色の青春時代を送っていたのではないかと推察されます。
かたや、バーチャルの世界は刺激にあふれていた。このLucidaというソフトですよね。これはいわば「妄想を具現化する」ようなソフトなわけです。
犯人はそこでバラ色の日々を送っていたのでしょう。どんな妄想を具体化して遊んでいたのかはわかっていませんが、それがどのようなものであったにしろ、バーチャルな妄想の世界と現実世界のあまりの落差に、彼は絶望したのではないでしょうか。
現実の世界では、そうそうフィクションのようなことが起こるわけもありません。背後で大爆発が起こったり、空から女の子が降ってきたり。
そんな現実世界を、彼は少しでも変えようとしたのかもしれません。
もちろん自爆テロというその手段は褒められたものではありませんが、これは我々にも現実的な問題としてのしかかってきます。
すなわち、この無味乾燥な世界を、我々はどうやって生き抜いていけばよいのか。
犯人が身をもってこのことを突きつけてきたように、私には思えてなりません。
(了)
薔薇色の日々 鯵坂もっちょ @motcho
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