第8話 堅石さんのお出迎え
そうして昼休みが終わり、午後の授業も終わって放課後となった。
「楓は今日、バイトはないのか?」
「うん、バイトはないけど、少し家ですることがあるけどね」
「ほう、そうなのか。俺はこれから部活の練習だな」
「頑張ってね」
「おう、じゃあまた明日な」
「うん、じゃあね」
僕はそう言って真也と別れて、教室を出る。
すでに教室には堅石さんはいないから、ホームルームが終わった瞬間に帰ったのだろう。
今日は前に約束した、あの日だ……気合いを入れて帰らないといけないな。
僕も学校を出てまっすぐ帰り、マンションに着いて自分の部屋ではなく、いつも通りに堅石さんの部屋のチャイムを鳴らす。
合鍵を持っているけど、一応毎回チャイムを鳴らしている。
今日は特に中でなにもしていなかったようで、すぐに鍵が開く音が聞こえたので、ドアを開ける。
「堅石さん、お待たせ……んっ!?」
ドアを開けて堅石さんの姿を見た僕は、思わず大きな声を上げてしまった。
「おかえりなさいませ、空野さん」
「う、うん、堅石さん、その……前もその格好を見た気がするけど、それは?」
「乙女の勝負服、裸エプロンなるものです」
「だからなんで!?」
エプロン姿をしているとは思ったけど、やっぱりその下は何も着てないんだね!?
「空野さん、お風呂にしますか、ご飯にしますか、それとも私にしますか」
「それ、意味わかってないで言ってるでしょ!?」
「はい、申し訳ありません。勉強不足でした。特に最後の『私にしますか』という選択肢がよくわかりませんので、空野さんに教えていただきたいと思いまして」
「永遠に知らないままでいいと思うよ!」
なんでこの人は学校ではあんなにお堅い雰囲気なのに、家に帰ったらこうなるんだ!?
「……あまり喜んでいただけなかったでしょうか?」
「いや、その、ね……僕が喜ぶ喜ばないとかじゃなくて、堅石さんは恥ずかしくないの?」
「恥ずかしい……? しっかり女性として見せてはいけないところは隠しておりますので、大丈夫かと思います」
「確かにそうだけど、本当にギリギリね……!」
エプロンが何かの拍子にズレたりしたら、すぐに見えちゃうと思うけど。
「空野さんはこの格好、お嫌いですか?」
「えっ!? ぼ、僕が嫌いとかはそんな関係ないと思うけど……」
「いえ、私は空野さんが先日、『似合っている』と言ってくださり、嫌いではないと思いましたので本日も着用しました」
「そ、そうだったんだ……」
「空野さんは、お嫌いですか?」
なんて答えづらい質問をするんだ、堅石さんは……!
そ、そりゃ僕だって男の子だし、堅石さんは美人でスタイルも抜群な女の子だから、そんなこの裸エプロンが嫌いなわけがない。
だけどここで「大好きだ!」と答えるのは、変態すぎないか?
いやだけど「嫌い」と答えるのは嘘になるし、堅石さんを傷つけてしまう可能性が高い。
なんだこの八方塞がりの状況は……。
「空野さん、どうなのでしょうか?」
「あ、あの……嫌いじゃ、ないです。好きでは、あります」
「っ、そうですか。それはよかったです」
「だけど僕が好きなのと、その格好をしていいのは訳が違いますからね!?」
とりあえず玄関で話しているので、まずは部屋に上がってリビングに入る。
廊下を歩く時、堅石さんが僕の前を歩こうと後ろを向こうとしたけど、それはすぐに止めた。
ギリギリ僕が彼女の前に立ち、歩くことが出来たので彼女の背面を見ることはなかった。
……側面を軽く見ちゃって、すごい横乳が見えてしまったけど。
わ、忘れよう!
リビングに入って、まず堅石さんに普通に服を着てもらって、裸エプロンについて話し合うことになった。
「堅石さん、今後は裸エプロンはしないように」
「なぜでしょうか? 納得出来る理由を求めます」
「まず女の子がみだらに……違う間違えた、みだりに他の人に、特に男性に肌を見せてはいけません」
「私がみだりに見せていると思われるのは少し不服です。私も相手は選びます」
「うん、それはよかった」
そうじゃないと学校でもこんな感じでいきなり肌を見せるとかありえそうだから、本当にそれはよかった。
そしたらなんで、堅石さんが肌を見せてもいいと思っている相手に、僕は選ばれているんだろうか。
「私は空野さんが喜ぶと思い、勝負服での出迎えをいたしました」
「その、僕が喜ぶとかは一旦置いておいて、僕にもあそこまで肌を見せてはいけません」
「では空野さんはどのように出迎えれば、喜んでいただけるのでしょうか?」
「えっ? いや……」
なんか論点がズレている気がするけど……。
「ふ、普通に……」
「普通にとはどういった感じでしょうか。具体的な案を教えてください」
「あの、その……堅石さんが普通に、玄関まで出迎えてくれて、『おかえりなさい』って言ってくれたら……僕はとても喜びます」
何この羞恥プレイ……すごい恥ずかしいんだけど。
「……それでいいのですか?」
「はい、それがいいんです……」
「……わかりました。裸エプロンは嫌なのですか?」
「い、嫌じゃないけど、刺激が強すぎるし……と、とにかくダメです」
「わかりました。では明日からはそのようにいたします」
とりあえずこれで裸エプロンの件はいいのかな?
本当にしっかり伝わったのかはわからないけど……。
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