第6話 戦争5

「陛下!一つよろしいでしょうか?」

白いテントの中でそう聞いてきたのは髪が黒く、短髪の三十代後半ほどの将だ。

「なんだ?」

「この局面、どうするつもりでしょうか?この絶望的な状況を覆すような何かがあるからこそ、軍を二つに分けたのでありましょう?たとえ左側の軍に六千もの敵兵が行ったとしても」

「そうだ、あるにはあるんだが今はまだできない」

ケーゲルスは将の質問に少し言葉を濁して答える。

そうするとテントの入り口から見覚えのある顔の騎士がやってきた。

「陛下!援軍を呼んでまいりました。もうじき着きそうです」

そう言ってきたのはこの草原に来たとき、ケーゲルスの隣で一緒に馬を走らせていた騎士であった。

「そうか、ご苦労であった」

ケーゲルスは騎士に礼を言うと、先ほど質問してきた将に今度は言葉を濁さず答える。

「俺は一昨日、ここに来たときからあの騎士に千でもいいから早く援軍を呼んでくるように言っていたんだ。そして今、その援軍がきたとなれば、こっちの兵力は二千となり、相手の千五百に勝る。そして反撃を開始し速攻でけりをつけて左側の軍の援軍に行くんだ」

「なるほど、陛下のご考え十分わかりました。ですが、ここで援軍の軍を分けた分早く来たわけですから来た兵士たちは疲労が溜まっているはずです。一時的に敵は騙せたとしてもこれでは結局五分五分がいいところです」

「そうだ。五分五分もいいところだが一時的に敵を騙せる。これを利用するんだ」

そう言うとケーベルスは立ち上がり、横に居た騎士に耳打ちをし、作戦を伝える。

そしてケーベルスはそのままテントの外へと歩き出し鎧を着て、兜を被った。


ケーベルスは川を渡った時とあまり変わらないような陣形にまま、もう一度川を渡り、対岸に行くことにした。

「陛下、これは一体どのような作戦なのでしょうか」

この草原に来た時も隣にいた騎士で、ケーベルスに質問をする。そして今もケーベルスの横にいるする。

「挟み撃ちだ」

「この草原に来た時から行っていたオセロと同じということでしょうか?」

「まぁそんなもんだ」

騎士へ質問の答えを言うと、ケーベルスは後ろにいる兵士たちに合図を送る。

そしてその合図を皮切りに一斉に兵たちが川を渡り始めた。


「将軍!やばいことになっております」

「いったいどうしたんだ?」

一方そのころ、東側の軍では混乱が生じていた。

それはこちら側に推測で約六千ほどの敵兵がこちらに来たからだ。

「流石にワシたちだけでこちらに来た敵兵をさばくのは無理じゃ」

左側の指揮を任されたヒューロスは頭を掻き、小声で「どうしようかのぉ」と呟いてる。そんなヒューロスに小声で隣にいた騎士が言う。

「将軍、ここは降参でもいいんではないでしょうか?」

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