第4話 戦争3

月が明るく草原を照らしている夜の白いテントの中、カルケスとそのほか数人の騎士は会議をしていた。

会議といってもほかの騎士たちは全然言葉を発せず、カルケスの一方的なスピーチだったが。

「今夜、わが部隊、100人は他の兵たちにばれないように砦への援軍へ向かう。結構は二時間後だ」

カルケスはテントの中にいた騎士たちにそう言った。騎士たちはそれぞれテントの外へと出ていく。

そして二時間後、カルケス率いる兵士百人はほかの兵たちにばれないように夜の平原へと駆け出した。時刻は夜中二時頃だった。


「陛下!大変なことになりました」

軍部大臣が蓄えた髭を揺らしながらケーベルスのいるテントへと入ってくる。その様子は慌ただしい。

「カルケス率いる部隊の兵士が軒並み姿を消しました」

その報告にケーベルスは目を見開く。

少ない軍勢がもっと少なくなったのだ。だがこれはチャンスなのではないのではないのかとも思う。

カルケスは若いながら部隊を率いるまで成長したのだ。もしカルケスが砦にまでたどり着ければ砦の攻略へはもっと時間がかかる。そうすると援軍が来るまでの時間が稼げる可能性がぐっと高くなる。

ケーベルスは驚きこそしたが平静を保つ。

「それと陛下、もう一つ連絡が」

軍部大臣が先ほどよりも雰囲気でゆっくりと伝える。

「リニアリス軍がゆっくりとこちらへ進軍してきています」

それは今、ケーベルスが最も聞きたくない報告だった。


リニアリス軍の進軍の報告を聞き、ケーベルスはすぐに陣形を組みなおすことにした。前回と同じ両端に騎馬兵を置き真ん中は歩兵の陣形だ。

陣形は早めに組み終わったがそのころにはもうリニアリス兵は目前にまで近づいていた。

そんななかケーベルスはいまだに全然決断を下せずにいた。

だがそれはケーベルスだけで他の将たちの決断はもう決まっていた。

『撤退戦』

それだけだ。

なんせ兵力差がありすぎるのだ。こちらは兵力二千に対し相手は推定八千

これだけで四倍あるのに、カルケスの部隊がいなくなったことによってこちらは約百人の兵がいなくなっている。

早く決断を出さなければこのままでは八千の軍と真っ向から戦うことになってしまう。これだけは避けたかった。

そのため他の将たちはケーベルスを見つめている。

そして、一人の将が口を開いた。

「陛下、早く撤退戦の指示を。じゃないともう間に合いませんよ」

「わかってる。わかってるんだ」

ケーベルスは机の上に手を組み、必死に頭を回転させていた。

そして決断を下す。

「軍を右半分と左半分で分けろ。早くだ」

ケーベルスがそう告げると、他の将たちは目を見開いた。

ここで後ろに下がらないということは撤退しないのと同じ、そして何よりケーベルスの決断は明らかに状況を悪化させる。

今でも少ない軍を半分に分けてしまえば、攻略されるのがただただ早くなるだけなのだ。例え相手が軍を半分に分けようとも。




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