第3話 戦争2
続々と降りてきた敵兵は時間をかけ、陣形を組んでいく。それにつられるようにこちらも陣形を組む。左右の端っこに騎馬兵を置き、真ん中に歩兵を配置する陣形だ。
見た感じ敵兵の数はざっと八千ほどだ。
ケーベルス達率いるアルトリア王国の軍勢とリニアリス国の軍勢が右側にしか障害物のない平原でどちらも動かない。
陣形の後方に立てた真っ白のテントではケーベルスを含んだ各部隊の隊長が会議をしていた。
「百でも二百でも兵を砦への援軍に行かせるべきです!じゃないと追加の援軍が来る前に残っている四つの砦はすべて落とされてしまいます!」
そう熱烈に言葉を発したのは髪を狩り上げている二十代に見えるまだ若い男性だった。
「例え二百の兵を援軍を出したとしても助ける前にリニアリスの兵に潰されるのがオチでしょう。ここは追加の援軍が来るまで待つべきです」
そう冷静に言葉を発したのは頭のすべてが白髪で、顔にはしわが多い老将だった。
アルトニアの作戦会議は難航していた。
なんせ絶望的な状況なのだ。攻めなければいけない。だが攻めると終わる。
今できるのは砦の兵たちが絶えてくれるのを願うだけなのだ。
「どうしますか!?陛下!」
そして決断は、ケーベルスに任された。
「うーん」
ケーベルスは頭を掻き悩み、そして答えた。
「まだ攻める時ではない。まだ待つんだ。」
そしてケーベルスは援軍を待つことにした
白いテントの中、一人の若い将と騎士は話していた。
話しているといっても若い将が一方的に話しているだけなのだが。
「戦場に行ったこともないただずっと城に引き籠ってたやつに判断を任せるなんて間違えてる」
そう言葉を発したのはさっき他の将軍と陛下と一緒に会議を交わしていた若い将だ。
「すくなくともあと二日はかかる。多くて五日はかかる。それまで砦のやつらが耐えれるというのか」
若い将は眼光を鋭く光らせ、そして怒気をはらませた声で言った。
同じテントにいるもう一人の騎士はその怒気によって腰を引かせていた。
翌日、もう一度先日と同じテントで会議が行われていた。
そしてそこでは、先日と同じ若い将が熱弁を振るっていた。
「陛下!やはり攻めるか砦への援護に行きましょう!そうじゃないと」
そんな若い将の熱弁を遮って入り口から一人の騎士が慌てた様子で入ってきた。
「報告があります。右側の砦の一つが、攻略されました」
そんな負の報告だった。そしてその報告を受けて若い将はもう一度声に熱を含ませる。
「やはり行くべきです!このまま鳥の兵士たちを見捨てるつもりですか?それでも本当に国王ですか!?」
「カルケス、今のは言い過ぎだ」
カルケスと呼ばれた若い将は隣に座っていた老将を上から見下ろす。
「ですが...」
カルケスは納得のいかなさそうに顔をしかめる。
「まぁよい、カルケスの言葉にも一理あるしな」
ケーベルスは胸の前で腕を組んで言う。
「でも、まだだ。援軍を待つんだ」
カルケスの熱弁はケーベルスの答えを揺らさなかった。
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