第2話 戦争

ケーベルスが止まると、後ろにい約二千の兵もぴたりと止まった。

一万の兵をより早く動員したかったのだが、全員揃うまで待っていると手遅れだと思い、予備軍の中でも選りすぐりの兵を早く連れてきたのだ。残りの兵は全員集まり次第、来るように言っている。

「陛下!すぐにでも残っている砦への加勢に行きましょう」

ケーベルスは少し悩み、決断を下す。

「いやだめだ。残っている砦への加勢へはいけない。遅かったんだ」

「なぜですか!早く加勢に行かないと。遅くなんてないですよ」

「違う、本当に遅かったんだ。一時間...いや三十分」

「なぜ...」

隣にいる騎士は不思議そうにケーベルスを見つめながら呟く。

だがケーベルスはそんな騎士には目もくれず、真ん中の砦をじっと見つめている。

そして真ん中の砦に立っていた我が国の青い国旗がゆっくりと倒れていき、そして敵国、リニアリス国の赤い国旗に代わっていく。

残る我が国の砦は四つ、取られた砦は三つ。

「陛下!早く加勢に行くべきです!じゃないと残された砦も落ちてしまいます」

そう言った兵士にケーベルスは淡々と告げる。

「端と真ん中を取られた時点で、砦は捨てるしかないんだ」


「なぁ、オセロって知ってるか?」

「存じております」

隣にいる兵士は、口調こそは敬語で丁寧だが、その表情にはケーベルスの決断に対する怒りが混じっている。

「だけどオセロと戦場は違います。端と真ん中を取られ、挟まれたとしてもまだ勝機はあります」

「いや、同じなんだよ。オセロも戦場も挟まれてしまえばじり貧になるだけさ」

砦の兵とこちらの兵を合わせて約三千、対してリニアリス国の兵力は予測で一万三千。兵力差は歴然だ。

「兵力差があるのはわかります。ですが、こちらは砦での防衛、兵力差が一万離れていたとしても、援軍までは耐えられます」

「ケニアス、お前はそもそもが間違っている」

ケーベルスは隣にいる騎士の名を呼んで告げる。

「そもそも俺らは、砦への加勢に行けないんだよ」


「どういうことですか?だってまだ砦は落とされてない」

ケニアスが言葉を言い切る直前、地響きのようなものが山のほうから聞こえる。

そして山からは続々と歩兵が出てくる。

「援軍が来ることは予想できているはずだ。だから、援軍を山の前の平原で潰そうという作戦なんだよ」

砦を落とすための兵力が減ったとしても挟んでいるという好条件、そして援軍をここでつぶす必要はない、ただ耐えていれば、砦が落ちるまで耐えていれば相手の目的は達成なのだ。

つまり敵国、リニアリスはここの平原でアルトニア王国の援軍を抑えきり、全部の砦が落ち次第、一転攻撃に転じる作戦なのだ。

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