ある王国の軌跡
@kekumie
第1話 アルトリア王国
西洋のとある土地に、中規模の王国があった。十年ほど前までは世界的に見ても三本の指に入るほどの国であったが、大戦争に負けて以来、衰退の一歩を辿っている。
そんなアルトリア王国では、先日、国王が辞任した。理由は私ではこの国を復活させるのは無理だからという理由である。
そして、そんな国王に代わり、今日、国王に就任したのは齢23歳の王子だった。
この王子は顔も整っていて、頭もよく、人望も厚い。国民からも熱血的な支援を受けての就任だった。
そんな現国王の最初の仕事は
「陛下!東からリニアリス国からの襲撃にあい、一部隊殲滅、今防衛戦を強いられているようです」
と、軍部大臣カリアスからの最悪な知らせに対応することであった。
リトアリス国は現在、五本の指に入るほどの強国であり、軍事力、経済力どちらにおいてもアルトリア王国よりも秀でており、軍事力においては世界1ともいえるレベルだ。
「まずいなそれは...」
国王、ケーベルスは頭を悩ましていた。
この国、アルトリア王国は先の大戦で領土を半分ほど失っている。そして東側に関してはリニアリス国に上側の領土をほとんど取られてしまい、かろうじて下の部分が細長く残っている状況だった。だがその残っている部分は山脈に挟まれているのでなかなかに攻めずらい地形になっている。
なので北と東にはリニアリス国、そして南にはリニアリス国と険悪な状況が続いているマルチクス王国がいる。なので実質緩衝地になっているのだ。
リニアリス王国はこの緩衝地を落とし、直接マルチクス王国を狙いたいのだ。
アルトニア王国ではこの緩衝地を捨て、安全に兵を撤退させるのも一つの手なのだ。
だが一つ、撤退したくない理由があった。
ここ最近、リニアリス王国では敗戦が続いており、兵の士気が下がっている。
ここで兵を撤退させると兵の士気が最低レベルにまで下がる可能性がある。
兵の士気は高いに越したことはないのだ。
そしてもう一つ、この国、アルトニア王国はリニアリス国とは険悪な状況が続いているが、マルチクス王国と良好な関係なのだ。
ここで撤退戦を敷いてしまうとマルチクス王国との状況も悪くなってしまうからもしれない。マルチクス王国は数少ない良好国なのでここで失うわけにもいかないのだ。
そして、そんな状況を踏まえ、国王、ケーベルスは決断を下した。
「そこに予備の軍、一万を派遣しろ!今すぐだ。それとマルチクス王国に援軍を要請してくれ」
「しかし、一万を派遣してしまうと他のところで攻められたとしてもすぐに対処できなくなってしまいます」
「リニアリス王国の軍事力はこの国の四倍以上だ。一万は派遣しないとこの戦は必ず負ける」
「国王がそう仰るなら...」
と軍部大臣は傍にいる騎士に指示を出し、そして騎士は足早に部屋を去っていった。
ケーベルスは鉄の鎧と兜をかぶり、馬に乗り戦地に向かっていった。
「陛下、就任初めての指揮を任しました」
とケーベルスの隣を走っていた騎士は言う。
「何?俺がするのか?」
「はい、前国王も大事な戦争では前国王が指揮を執っておりましたので、将軍の中でも今回も国王が最終的な指揮を執ると思っております」
「そうなのか」
「陛下、そろそろ着きますよ」
そういわれ、ケーベルスは左側にある山を見つめる。
そこには我が国の青い国旗が何本もたっている砦がある。そして手前側と奥側の砦には
「少し遅かったか...」
ケーベルスは小さくそうつぶやく。
我が国の国旗が倒され、敵国、リニアリス王国の赤い国旗が悠々と立っていた。
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