課外授業?

「はぁ~食った食った、何度食べてもここの料理は飽きないなぁ」


  「ねぇ~今日は魚料理尽くしで飽きるかもって思ったけど、凛ちゃんの多種多様な味付けのおかげで全部美味しく食べられた。もうあっちの料理には戻れないな」


  「でも、今日の野菜なんか形が変じゃなかったか?」


いつも完璧な料理を提供してくれる我が妹、勿論のこと今日の料理も並み大抵に作れるほどじゃないものだった。しかし、やけにいつもの野菜よりも辺鄙な形をしていた。まぁ、味は一級品だったので食べれはしたが。


  「そりゃ、自家栽培ですから、多少形が変でもおかしくはないでしょ刹兄」


相変わらずまだ植物への熱意はあるのか。けど、今日入っていた野菜の中には家で育てている野菜なんか入ってはいなかったはずだけどな。


  「へぇ~そりゃ凄いな、一体どんな育ててるんだ?」


  「主には、トマトとかきゅうりとかの一般的な野菜で、今日の料理に入れたのは私の趣味で育ててる食虫植物かな」


  「は?!」


エネルと俺が一斉に叫んだ


  「一様マレーシアの部族の郷土統料理とかで使われてるらしいから、わりとポピュラーだと思って入れてみたらこれが大成功」


なんでそういう所だけ無駄に知識あんだよ。いやいやそういうことじゃなくて。


  「お前、皆になんちゅうもん食わせてだ」


  「え~その割りに刹兄がつがつ食ってたじゃん」


  「うっ....」


否定出来ない。美味しかったのは確かだし食としてもちゃんと成り立っていたのだが、問題はそこじゃないとツッコミたくなる。俺じゃ言い返せそうにないので、エネルの方向をみてこちら側の意見を代弁してもらおう...


  「って気絶してるぅぅぅぅ」


そこには食中植物を食べたことを知ったショックで横たわっているエネルの姿があった。


  「あぁ、気にしないで刹君、あっちにいる時もこんなだったから」


いやめちゃくちや気にするけど、ていうか食中植物の毒で倒れたんじゃないだろうな。


  「ていうか、あの野菜見たことないと思ったら、食中植物だったんだ。見た目で嫌煙していたけど食べてみると中々に美味しかったね」


  「でしょでしょ、結構味付けにもこだわって作ったんだ」


何故かエメルさんと凛の方は食中植物の料理について熱く語っているが、エネルは本当に大丈夫なのだろうか。


  「大丈夫大丈夫、こうやって、ほら」


思い切りエネルの背中に自分の肘を当てた。するとエネルがむせながらも息を吹き返した。


  「もし、エネルが気絶してたらこうやって対処して」


  「エメルさん.....」


起こし方が強引すぎて、エネルには悪いが少し笑ってしまった。


  「はぁーはぁー何とか生きながらえたぜ。助かったよエメルちゃん」


  「お安い御用よ」


なんだあっちの方ではこの起こし方が主流なのか。もしそうなら俺の体は一日足りとももたないな。


  「はぁ~でも今日はお風呂が終わっちゃってるからなんか落ち着かないな」


と、テレビのリモコンをとりテレビに向かってリモコンを指した。やっていたのは二日前と同じニュース番組だった。そこに映し出されている文字は前にも見た連続失踪の四文字


  「いつになったらこの事件の真相が分かることになるやら」


画面の前で溜息をはく凛。理由を知らない人からしたらずっと犯人が捕まらずにいるのだから気持ち悪くて仕方ないだろう。まぁ、理由を知ってたとしても気持ち悪いことに変わりないんだけどな。


  「あ~やだやだ、こんなニュース見てたら気分が落ち込んできたから、ちょっくら花に水やりにいってきます」


リモコンでニュースの番組を切り替え、俺らに敬礼のポーズを取るようにしてベランダへと向かっていた。


  「凛ちゃんってほんとにこまめだよな」


  「うん、私も本当にそう思う。だからあんなに美味しい料理が作れるんだと思う」


こまめかこまめじゃないと聞かれたらこまめだと答えるが、凛曰く、「植物は一つ一つ愛情をもって育ててるの」らしいから頻繁に水やりをするという。まったくあんなに興味なかった園芸にまさかこんな熱中するとは。まぁ、熱中できることがあるのは素晴らしいとは思うが。俺なんて熱中出来るものがわりかしないから、そこら辺は凛を見習わないと。


  「凛ちゃんがあのニュースを見て嫌悪感を感じてたし、一刻も早く解決しないと...」


そう言いながら...


  「よいしょ、よいしょ.....」


突如何もない空間の中から簡易的な黒板と生徒用の机と椅子を出しリビングに置いた、そして何故か眼鏡を取り出しエメルさんはそれをかけ、いかにも先生のようなモードに入っていた。


  「さぁ、この崩壊問題を解決するには異形種を倒すって言ってたけど、肝心の倒し方についてまだ分かっていないよね刹君」


眼鏡をクィっと持ち上げながら、俺に問いかけてきた。


  「そうですね.....って」


さぞ当たり前のように何もない所から色々と引っ張り出してきたけど、正直驚きよりも、もう慣れてしまって苦笑していた自分に対して呆れた。


  「人間の文化でも、一様概念的には存在してるのかな....魔術って知ってる?」


  「まぁ、一様」


恐らくは、漫画やアニメとかに登場する、あの手や本から出てきたりするものだろう。エメルさんが俺の治療に使ってくれたのも、先輩がエネルを足止めするのにも使っていたものが魔術ならイメージが湧きやすい。


  「うんうん人間の男の子ってそういうの結構好きだもんね」


それは偏見ではないかとツッコんでしまいそうだった。


  「それで異形種を倒すのに一番適してるが魔術って訳。まぁ、他にも手段はあるんだけど......一番手っ取り早く倒せるのがやっぱり魔術かな。そしてさっきも言ったように、君にはそれを使うだけの才覚がある」


  「俺に..あるのかそんなものが」


  「うん、ちゃんとあるよ。でも、刹君の場合は少しそれが歪なんだけどね」


  「でも、いきなり魔術を使えますよって言われたとしても....」


本当かどうかさえ、ましてや魔術とやらが具体的に何なのかを知らなさすぎる。


  「ふっふ~ん 丁度いい機会です。今回は特別に魔術とは何ぞやって言うのを座学と実践の二つをメインに授業形式で教えてあげましょう」


そのための黒板と机と椅子だったのか。


  「エメルちゃんから魔術の話を教えてもらえるなんて、あっちの世界じゃこれとない機会だからしっかり聞いとけよ刹」


リビングのドアに手をかけるエネル。


  「エネルは聞かないのか」


  「俺は生憎魔術が使えない奴なんでね」


それじゃと言いながらエネルは二階へ上がっていった。


  「あれで、魔術も使えたら全宇宙で最強なんだけどね」


そう言い、自分の唇を嚙みしめていた。


  「まっ、気を取り直して始めましょう」


と、そのエメルさんの一言が学校のチャイムのような気がして少し憂鬱な気分になったが、やはり俺も男の子の仲間なので魔術というものには少しばかりの興味があった。やっぱりエメルさんの人間の男の子は魔術に興味がある発言は的を射ているのかもしれない。


  「では、刹君まず魔術って何だと思う」


慣れない手つきで黒板にチョークを走らせる。


  「こう、手から光を放ったり、触れただけで人を回復させたりするものですかね」


イメージがあまりにも抽象的すぎるので子供じみた表現をしてしまった。


  「うん、そうそう大体合ってる」


抽象的すぎる表現だったが伝わったみたいで良かった。


  「今日の授業ではそれについてもう少し踏み込んでいくから覚悟してね刹君」


ついていけるか不安だなぁ。


  「まず、魔術の起源について教えるね。魔術っていうのは科学者や研究者達が地道な努力の末できたものって一般的には認識されているけどそれは間違い。本当の起源は、とある五つの武器や武具からとされています」


  「武器って剣とか槍とか?」


  「そう!そしてその武器達は人工的に作られた武器ではなく、大昔前に自然に発生したと詳しくは分かんないんだけど、今はそう言われている。そしてその武器を見た大昔の人達はその武器達を戦争に使おうとしたんだけど武器自体の力が強すぎて誰にも扱うことは出来なかったんだって。それで昔の人達は考えた。「この溢れ出る力を何処かに分散してやることは出来ないかと」そう言いあらゆる手法を用いて何とかその武器達の力を弱めることに成功した。そしてこの空気中に分散させられたこの力を”魔力”と名付けた。そしてその弱まった武器を使い戦争に望んだらその武器の一振りで戦争を終わらしたとか、その後直ぐにその武器達は危険だと見なされ神様達に回収されちゃったんだけどね。でも空気中に分散した魔力だけは回収は出来なかった。そしてここから色々とあり、魔術という学問が生まれ、その武器達についた名前が”起源種”戦争を終焉に導き、魔術という武器を作り出した自然界の中の汚点それが”起源種”です」


  「魔力だけでも、こんなに長い歴史が」


  「手短に話したつもりですが、伝わったならよかったです」


これでも手短なのか、正直聞いてて現実離れして過ぎてよく分からなかった。

  

「では、続いては魔術の起源の話、この起源種五つから生まれた魔力、この魔力をどうにかして実用化できないかと当時のお偉いさんは考えました。そしてあらゆる研究をしていくうちに特定の人達だけに、魔力が体に流れている管があるという事が分かったんです。正式にはストロークというんですが。それに目を付けたお偉いさんが、「何とかして見えない魔力を具現化して見せよ」って言ったらしいです、それから魔力が体に流れている人達を監禁し死なない程度に解析しようとしました、所が解析しようとすると中から初めて具現化した魔力が出てき、自らが通っているストロークの損傷を防ごうと、解析しようとしている人達を自らの意思関係なく傷を負わせたそうです。これが魔力の一つの性質である”保全”まぁ、本人が死を感じた時にのみ発動する性質ですが、どっちにしろ魔力が具現化したのです、後はこれを本人の意思で具現化させる事が出来れば実用化が可能だと、さらに踏み切った研究をしたそうです。そして研究の末、ストロークに魔力を具現化させる基盤を植え付け、これの事を”魔術基盤ストローク”と言うのですが。そして魔力を具現化させ、更に発展させたものを”魔術”と言います。魔術にも色々と種類があるのですが、それはまた後で。この地球では魔術は実用化されていないみたいだけど、他の惑星ではこの魔術が合ったから発展していったといっても過言ではないんですよ」


   「でも、それはあまりにも.....]


倫理観がなさすぎると思った。


   「私も最初にこの話を聞いた時、刹君のような感情を抱いた。でも、それと同時にそうしないと他の惑星は発展しなかったという、諦めの感情も入り交じって、少し歯がゆい気持ちになったわ」

 

確かに、地球ではあまり関係がないが、他の惑星にしてみれば生命の神秘と呼ばれるぐらいに大事なものとして扱われたんだから仕方ないのかもしれない。あぁ、多くの発展はこうした犠牲の上に成り立っているのだとそう思わされた。


 

「ひとまず、魔術の起源についてはこれぐらいかな。さっきの魔術の起源について、ストロークがあると言ったと思うんだけど。さっきも刹君の部屋で言った通りにそのストロークが刹君の右腕だけに存在しているんです」


「俺の右腕に...」


「うん、昨日の私が右腕を治癒した時に、微弱な魔力の流れを感知したと思ったら、すっごい歪な形をしたストロークを発見したの。本来ストロークがある生命体は毛細血管のように全身に張り巡らされているはずなんだけど、それが刹君には当てはまらないの。だから正直私が再構築をしなかった理由は、刹君にならもしかして....っていう可能性を持ったからなの」


もしかしてだが、長年右腕が痛かった理由は火傷ではなくこれがあったからか.....いやそれともあの火事で俺に何らかの変化があってこれが......   


   「本来そんな珍しい人物がいたらエルサレムが黙っていない。あっ、ちなみにエルサレムってのは正式名称魔術学院エルサレムの事で、普通はこの学校やこの学校の仲間の学校に行って魔術の勉強、探求、研究、色々なことをするの。まぁ、そのことは今はよくて」


魔術を習う学校まであるのか。なんか現実離れしてるな。


   「だから私たちはそんな君を保護兼監視するために協力関係をあの夜結んだの。君の安全を思って、エネルは自分達の情報が知られたから~なんて言っているけどそんなのはぶっちゃけどうでもいいの。一番大事なのは、刹君 あなたのような人間の男の子がこれ以上変なことに巻き込まれないようにすることが一番大事なの、もしエルサレムのIX階級以上の人達に見つかったりでもしたら.....」


すると涙ぐみながら俺にそっと抱きついてきた。


   「エメルさん!!」


   「ごめんね急にびっくりしたよね」


そう言うと、俺から離れ直ぐに先生モードに切り替わった。


   「エメルさんの気持ちには、本当にありがとうという言葉しか出てこない。でも、普通のとは違って俺のストロークは歪なんだろ、それなら魔術を使えるかどうかすらも分からないんじゃないのか。そんな男が再構築よりかも優先されるべきなのか。まぁ、俺がそれを言うなっていう話にはなるんですけど...」



   「まぁ、再構築の件に関してはまさかエネルがあんな事言い出すなんて思いもしなかったけど、でも、いい加減再構築に頼らず他のやり方とかないかなって二人とも模索してた所だったから、エネルはあなたのことをわがままと言ったかもしれないけど、それが普通の人間の感情、だから刹君は全然気負わなくていいんだよ」


その言葉のおかげで少しは気が楽になった。

   

   「それと魔術が使えるか使えないかの件ね~私も右腕を軽く見ただけだから正直あんまり分からない、でもね刹君。いつだって世界を変えるには普通とは少し違った人達なの。刹君のそのストロークでは魔術すらも使えないかもしれない。でも逆にそれはストロークではなく別の何かなのかもしれない。でもいいの、何もなかったらなかったで私達が異形種をやっつければいい話だし、もし何かその右腕が魔術基盤ストロークだとしたら刹君にも手伝ってもらうし。あなたの右腕は救済にもなるかもしれないし凶器にもなりえるかもしれない。まぁ、私達がいる限りその右腕を凶器にさせるなんて事は絶対にしないけど」

   

   「そうやってエメルさんが言ってくれるなら頼もしい」


   「うん、じゃあ次に実践なんだけど......」


   「水やり終わり~と」


眼鏡を外し、黒板と机と椅子を片づけ始めた時に、ベランダから軽快なステップで飛び出してきた。


   「また後でね....」


そう言うと、凛に”水やりご苦労様~”と労いの言葉をかけに言った。家の庭には、正直ガーデンでもやっているってぐらい植物で埋め尽くされている。出来れば量より質にしてほしいんだがなと毎回水やりから帰ってくる度思う。


   「はは、まあまあな量あるからね。あれ、そういえばエネルさんは?」

 

水やりに行った時にはいたはずなのに、帰ってきた時にはいなかったのだから疑問に思ったのだろう。


   「あぁ、疲れたなぁ~って言って刹君の部屋に行ったよ」


エメルさんは、何故か凛に対しはぐらかすような言いぐさで言った。


   「流石に強いとは言っても、まだこの環境に慣れてないから疲れちゃったのかなぁ」


申し訳なさそうに考える凛。


   「大丈夫だよ、ただ考え事してるだけだと思うから」


   「そうなのかなぁ...ってかもうこんな時間」


時刻は9時半を回っており、この茨木家では、比較的就寝の時間が早いのでこの時間帯になると二階へ上がり、後の時間は各自の部屋で調節するといった感じにしている。やはりエネル達が来てからというものこの家にはあの頃のような賑わいがあり、時間があっという間に過ぎていくのだろう。


   「私は、後歯磨きとかするだけど刹兄とエメルさんはどうするの?」


   「私も凛ちゃんと一緒に歯磨きして二階へ行こっかな」

   

俺はというと、歯磨きはとっくに済ませており、今日は学校から課題を出されていないので、後は部屋でゴロゴロするだけだ。


   「俺はもう二階に行くよ」


   「そっか、もうこんな時間だしね。おやすみ刹兄」


   「おやすみなさい刹君、って言っても私は同じ部屋なんだけどね」


そっか完全に忘れていたが、今日から俺の部屋では三人で勝手に寝ることになっているのを忘れていた。余っている部屋でいいじゃないかと異議を申し立てたが、亡き両親の荷物がありすぎているため片づけるのが面倒くさいとの事だ。


   「おやすみ」


そう別れを告げ、エネルがいるであろう俺の部屋へと足を運んだ。

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