第6話 鬼才・安野監督再び!

《店長のナオトは、待ち合わせをしている恵比寿駅西口に向かっていた。まさか組織の自分がスナイパーのみかんと付き合うことになるとはなあと、感慨深げに歩いていると、30メートル先にみかんが待ち合わせ場所に立ってるが見えた。午前中雨が降っていたので傘を手にしているのがわかった。するとみかんは傘をホウキのよう動かしだした。何しているのかなと思ったがよく見るとゴルフのアプローチスウィングだった。傘のを見ると右手の小指と左手の人差し指を絡ませたインターロッキングというゴルフのグリップだった。ゴルフ経験があるのが意外だったので後で聞くことにしようと思いみかんと合流した。



イタリアンレストランで食事していると、店長はふと先程のゴルフの件が気になったのでみかんに尋ねた。

「みかんって、ゴルフやってたの?」

「えっ、何で知ってるの?」「いや、さっき待ち合わせ場所でアプローチのスウィングしてたから、やってたのかなあと。。。」


「そうなの、うちの中学珍しくゴルフ部があって友達の付き合いで何となく入ったんだけど、意外に才能があってねえ、高校まで続けてたんだよ。」


「へえー、意外だなあ。だけど、どうしてやめたの。」


「実はさあ、アイアンショットはメチャクチャ自信があって特に150ヤード(約137メートル)以内はだいたいピンそばにつけれたんだけど。。。。。」「パターがめっちゃ苦手で、折角近くに寄せても3パット平気でしちゃうからダメなのよ。結局、ゴルフってパターできまるから。」


「まあ、確かにそうだね。」


「そうなの、特にグリーンの芝を読むっていうのがよくわかんないんだよね。そうそう、今のスナイプと同じだよ。」


「シー、大きい声でスナイプとか言うな!それより適当に狙ってんのか。まあいい、じゃあこの後ゴルフバーに行こうよ。本当かどうかみてやるよ。」


「別にいいけど、引かないでよね、上手すぎるからって。」


二人は、イタリアンレストランから近くにあるシュミレーションゴルフが出来るバーに入った。


みかんは、次々とスーパーショットを決めていった。ピンそばのピタッととまるショットやドローやフェードといった曲げるなど多彩で、極めつけは予告通りバックスピンでカップインさせたショットだった。これを見た店長(ナオト)は席を外しある所に電話した。


「牧村、俺だ。実はお前が探していた、遮蔽物対策の件だ。いい方法がある。そう、それで。。。。。。。。」


電話を終えて、席に戻った店長は

「みかん、今週の土曜日ドライブ行かないか?」


「えっ、店長って結構情熱的ねえ。いいけど、どこに行くの?」


「実は、厚木にあるラボだ。」


「えっ、いきなり!それは情熱的すぎるでしょ。」


「違う、ラボだよ。研究所のことだ‼」


「研究所?何で?」


「今まで言ってなかったが、俺たちの組織は政府直下の活動部隊で、警察や公安が法律上出来ないことを秘密裏に行う組織なんだ。範囲は結構広くて、俺たちが今まで対応していた反社会的組織への駆除やテロリスト対応や政府要人の護衛何かもあるんだ。それらを対応する為の兵器を開発したり、オペレーションの立案やシュミレーションなどを行っているところだ。」


「えっ、仕事じゃん。デートじゃないの?」


「大丈夫、終わったら帰りに横浜によろうよ、そこでディナーをごちそうするから。」


「わかった。それならOKだね。」。。。。。。。。。。。》


コージは不本意ながらも何とか『女スナイパーはプロゴルファー!』を完成させた。

(何か、無理くりだなあ。スナイパーの組織が政府直轄なんてなあ。。。。。でも時間がないし後は鬼才の安野監督が何とかしてくれるでしょう。)と無責任につぶやきながら、担当の高橋ユウトに原稿データを送付した。



映画はストーリーはイマイチながら、前回の実績と今回タイアップとなったJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)経由で多くの協賛企業得た結果、潤沢な予算が捻出でき、綾瀬はるかと長澤まさみをW出演させることができた。また、ソニーグループのマーケティング部門にも多くの制作費をと投入でき盤石なものとなった。


そして、あの男、鬼才安野シンジ監督が制作発表記者会見でまた、やってくれた。


出演者への質疑応答が一通り終わった後、一人の記者が安野監督に尋ねた。


記者:安野監督にお尋ねします。今回の作品は前回ショコラ役で出演したネコちゃんは登場しますか?


会場は、うわーっと盛り上がった。もともと女スナイパーシリーズがまだ、連続ドラマの時ににYouTubeで世界一見られているネコの『ももまる』にそっくりな子猫が登場したことによりカワイイと評判になり低視聴率だったドラマがV時回復した。また第1弾映画にも出演し大きなインパクトを残した。


監督は、元からあがり症だったのと、この質問によりテンバッてしまった。


安野監督:ネ、ネ、ネコちゃんですよね。え、え、え、えーと。。。。。。。ネコあります!!


監督はまるで『冷やし中華あります。』の様に返答したが、その瞬間会場はこの日一番盛り上がりをみせた。がその時会場にいたスタッフの高橋ユウトとその先輩のシローは顔を見合わせた。今回の映画ではネコのショコラの登場しーんは無かったからだ。翌日ネット記事では、前回の映画の時と同様に写真は主役ヒロセカンナちゃんが使われ、タイトルは『ネコあります。』の文字が多くの媒体で見られた。当然、ネットのネコ派住民は歓喜に沸いた。


困ったのは制作サイドだったが、結局急遽、ゴルフ場のバンカーでショコラ役のネコ(第1弾映画時は子猫だったが大人になった状態)がウ〇チをするシーンをストーリーに影響が無い所で追加した。それはそれで、ファンからは

「前作のオマージュだ!」

「バンカーは海を表現していて私たちの未来や核廃棄物の処理についての問題提起を意味している。」等深読み過ぎる意見もあったがネコが出演しただけで評判は上がった。最終的には前作を上回る動員数を稼ぎ、その年の日本映画部門最大のヒット作となった。

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