第3話 知多のハイボール

石原は自分のアパートに戻り、早速ファンタジー作品の執筆に取り掛かろうとしたがふと、

(桃太郎って子供の時に、絵本で読んだきりだしなあ。一応見直すか、けど読むの面倒臭いからなあ。そうだ、YouTubeで探してみるか。)


するとアニメ版『桃太郎』が何個か上がっていたので適当に10分程度の動画を選び見てみた。


大人になって改まって見てみると、桃太郎のイメージが大きく覆った。この動画では

大きくなった桃太郎がある日トンビから『鬼が島に鬼退治に行くのじゃ。』とお告げを受ける。


鬼の悪行→田んぼを荒らした。村人から食べ物を奪う。

それに対して、桃太郎一行は鬼が島で宴会中の鬼たちを襲い、命乞いする鬼のボスから、お米・お金・財宝を返還する申し入れを受け、桃太郎は持ち帰った。


石原は違和感を覚えた。

(鬼の悪行に対しても、代償が大きすぎないか?ちがう見方をすると桃太郎は強盗殺人未遂じゃない?鬼は人じゃないけど。)


疑問が浮かんだのでもう1本、動画を見ることにした。すると日本昔ばなしの『桃太郎』があったのでそちらを見ることにした。


日本昔バージョンは、トンビのお告げは無く犬・キジ・サルはそれぞれ別の森に住んでいたが鬼に直接いじめられていた被害者だった。おばあさんが作ってくれたきびだんごを桃太郎から与えてもらうと元気になり、鬼退治に同行する流れだった。鬼の悪行については人々を襲い、蔵からお金やお米を盗み、火を放った映像だったので、これなら納得できた。多分小さいときに見たアニメはこっちだろうなあと確信はした。

ただ、すごく気になったのが最後は鬼のボスキャラと桃太郎は戦うのだがやられてしまう。フラフラになった桃太郎はきびだんごを食べてパワーが復活し結果鬼のボスキャラを倒すのだが現代だと、ドーピング?興奮剤の成分がが入っている?おばあさんがきびだんごを作るシーンを見ると何か緑の粉を混ぜているような。。。。。

石原は桃太郎が何となく嫌いになっていった。


数日後、東京都杉並区高円寺 某居酒屋


店の奥の座敷に座り石原はメーカーズマークより更に100円高い知多のハイボールを飲みながら、カドカワbooksの角田が来るのを待っていた。


しばらくすると、角田が到着した。


「遅れてすいません、石原先生。お待ちになりましたか。」

「いえいえ、全然大丈夫ですよ。」と石原はご機嫌だった。


「早速なんですが、まず女スナイパーの続編については何か情報ありますか。」

「まあ、時期とコンセプトは掴んでるよ。」


「えっ、すごいですね。いつ頃なんですか撮影は。」


「早くて来春くらいかなあ。次回作は少し職業を替えるみたいだよ。まだ決まってないけどね。」

(ゴルファーの件は黙っておこう。この辺は小出しにしていった方が後々に得するだろう。)


「ところで肝心のファンタジー作品ですがコージ先生は何て言ってましたか。」


「実はその件なんですけど、、、、、なかなか聞き出せなくて、結局僕が次回作でファンタジー書きたいって言ったら、アイツが色々アイデア出してくれたんですよ。。。。。。。それでなんですけどね、僕がファンタジー作品を書くっていういうことにできませんか。」


「いや、いや石原先生、今回はコージ先生のコンセプトやアイデアが欲しいんですよ。我々サイドも何人か作家さん抱えているのでそちらで執筆する予定なっているので困りますよ‼」


「そうですかあ、そうなると今回の件は難しいですねえ。でも、角田さんサイドはコージと絡みたいじゃないんですか」


「ええ、まあそうなんですけど。」

(なんて図々しいヤローだ!でもコージ先生と繋がらないとなあ。社長命令だからな。)

「ちょっと待って下さいね。上司と相談しますので。」と告げると角田は店の外に出って行った。


角田は上司の西藤に電話し、経緯を説明した。


「で、その石原って奴は書けるのか。」


「うーん、monogataryのサイトで読んだ感じだと中学生レベルですね。」


「じゃ、ダメじゃん。ん!ちょっと待てよ。法務に確認するから、その場待っとけ。一回切るからな。」


しばらく、すると西藤からの着信があった。


「よし、その石原に書かせろ。だだし条件がある。その作品はマンガの原作として書かせろ。それと、コージ先生に監修してもらえ。もちろん契約してな。監修ならソニーとの契約には含まれないってうちの法務部がいってたから大丈夫みたいだ。」


「あっ、なるほど。マンガの原作だったら文章関係ないですもんね。大体の概要が分かればなんとかなりますしね。了解です。これから話してみますね。」


座敷に戻った、角田は西藤からの指示通りに

石原に条件を説明した。


「マンガの原作かあ。。。。。。」と渋る石原に、


「石原先生、まあ、迷われるのは分かります。ただ、ぶっちゃけて言いますと最近ではマンガ原作の方がコレがいいんですよね。まあ、どうしても小説でってことになると、今回はちょっとご縁が無かったのかなあと。。。。」


「マスター、メーカーズマークのハイボールね。」と知多からランクを落としたハイボールを頼んだ。

(ギャラがいいのかあ、本当は小説家デビューしたかったのになあ。でも、一応作家デビューになるからまあいいか。)


「角田さん、本来なら断るところなんですがあなたの熱意に負けました。マンガ原作でいきましょう!。」


「石原先生、ありがとうございます。イヤー助かりました。」

(強欲ヤローめ、やっと決めたか、まあお前に選択の余地は無いよなあ。)


二人はお互いひきつった笑顔で握手した。

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