秋の日のブルース

ヒカリン

秋の日のブルース

 ある、秋の日の図書館、高校2年の斎藤深春さいとうみはるはクラスメートの菅野芳樹すがのよしきと出会う。

 菅野はクラスの中でもかなりやんちゃな方で深春自身あまり得意なタイプでは無かった。

 深春は、菅野に気付かれ無いうちにこの場から離れようとしたが見つかってしまう。


「おー、斎藤じゃねーか」

 菅野が話しかけてくる。

「あっどうも」

「何してるんだ?」

 何って本を借りに来てるんじゃねーかと、心の中でツッコむ。

 菅野が続ける。

「あっそうか本借りに来てるのかw」

「そうだけど、ここが図書館って分かっているなら少し静かに出来ないかな?」

 そう言って周りを見ると視線が痛い。

「そうだな。そしたらチャチャっと本借りて外で話すか」

「え!?」

 思わず声を上げてしまう。

「おいおいココ図書館だぞ」

「分かってるよ」

 今度は声を落として言う。

「じゃあ行くぞ」

 菅野がそう言いながら、歩き出す。

 明日クラスで揶揄われるのも嫌だし菅野に従う事にした。




 本を借り外へ出ると、

「そこのベンチに座るか」

 と、菅野が言う。

「そうだね」

 ベンチに座る。

 爽やかな秋風が気持ちいい。

「斎藤はどんな本を読むんだ?」

 菅野が聞く。

「私は、恋愛小説かな」

「マジか俺もおんなじだ!」

 意外だった。あの菅野芳樹が恋愛小説を読むなんて。

「そうなんだ。例えばどんな本を読むの?」

「そーだなー、〇〇の〇〇かなー」

「えっそれ私今読んでる」

 そう言いながらバックから本を出す。

「ほら!」

「そうそうコレコレ!感動するよなーそれ」

「だよねー私も読みながら涙止まらなかったもん!」

 そのあと、恋愛小説についてめちゃくちゃ盛り上がった。


「そろそろこんな時間だし今日は帰るかー」

 と、時計を見ながら菅野が言う。

「そうだね」

「また、恋愛小説について語りあいたいしLINE交換するか」

「うん、良いよ!」


 それから、たまに図書館で待ち合わせして恋愛小説について語り合う日々が続いた。



 数ヶ月経ったある日、菅野は学校を休むようになった。図書館で待ち合わせする事も無くなった。LINEでどうしたのか聞いてみた。帰ってきた返信は、



 ⬜︎⬜︎病院へ来てくれ

 受付で俺の名前を言ったら部屋まで案内してくれる



 急いで病院へ向かった。

 受付で菅野の名前を言い部屋まで案内してもらった。

 病室の扉を開けるとそこには最後に会った時より

 すっかり痩せてしまった菅野が居た。

 その光景に驚き何も考えれなくなった。

「まあ座れ、深春」

「う、うん」

 丸い椅子に座る。

「ごめんな、自分が病気だって言わなくて」

 一気に感情が溢れ出る。

「なんで言ってくれなかったの!?言ってくれたら毎日お見舞いに行ったのに!!」

 思わず声を上げてしまった。

「おいおいココ病院だぞ」

「分かってるよ」

 そう言うと、目から涙が溢れてきた。

「泣くなって、深春」

 しかし、涙は止まってくれない。

「もう俺、余命あと少しだって言われた。それを深春に言えなかった俺は本当に駄目な奴だな。俺は、図書館で、会う前からお前のことが気になってた。いつも教室で一人で本読んでたし。だから、図書館でお前を見つけて話しかけようと思った。その頃から病気だってことは分かってたし、いつかバレるだろうなって分かってた」

「そんなのズルいよ」

「でもお前に出会って一か八かだけど手術を受けようと思えた。その手術が一週間後なんだ。成功すれば生き残れる確率があがる。だから、これから毎日深春にお見舞いに来て欲しい」

「分かった」

 そう答える事しか出来なかった。


 それから毎日お見舞いへ行った。

 たくさん小説について語り合った。

 そして手術当日。

「頑張ってね芳樹」

「頑張るよ」



 一年後


 私は、芳樹と出会った場所にいる。

 あの手術は成功したが体力がもたず芳樹は亡くなった。大学が決まり私は、司書の仕事を目指す事にした。芳樹に出会う事が出来たのは本のおかげだからだ。本の力は偉大だ。人と人とを繋いでくれる。だから、私は司書になって人と人が繋がる手助けをしたいと思った。芳樹の事はとても辛い。しかし、ずっと悲しんでいても前には進めない。私は、天国で見ている芳樹の為にも前を向いて進まなければならないのだ。


                    fin.

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秋の日のブルース ヒカリン @kamabokomix

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